姚姚中華廣場(ヤオヤオ)/松山(沖縄)

沖縄で一番の中華料理屋へ。数十年も続く老舗の高級店であり、富麗華のような佇まいを期待してお邪魔したのですが、バーミヤンに毛が生えた程度のギンギラギンなエクステリアです。
店内も至ってカジュアルな雰囲気。四畳半ほどの個室に通されリラックスして生ビールを味わう。酒は1杯500円程度〜で、食べ物に比べるとアルコールが安い。料理はコースが5種類にアラカルトでも注文可能で選択肢は非常に広い。今回は7品で9,500円の「桃」コースを注文しました。
前菜盛り合わせ。12時から時計回りにキクラゲ、腸詰め、豆腐、ネギドリ。豆腐が沖縄的にしっかりとした食感で中華風の揚げ出し豆腐といった味覚で凄く美味しい。腸詰めもちょっと日本人には出せない複雑な風味がグッドです。
蒸し物には海老餃子に小籠包。美味しいですがベーシックでもあり、香港あたりのカジュアルな飲茶と大差ない味覚です。
スペシャリテのフォアグラ。中華でフォアグラを食べることは少ないですが、当店のそれは一旦素揚げした後にマンゴーを用いたソースを流し込みます。なにそれ?おいしいの?という疑問が当然に生じるのですが、全然美味しくありません。 「これはダメね。今はお腹が空いているから食べるけど、巡航時にはパスしたい」と、彼女。総じてコテンパンな一皿でした。
「四川風麻婆豆腐」と案内があったのですが、唐辛子の辛味は殆ど無く、ネギの風味と塩気が強い不思議な麻婆豆腐でした。それなりに美味しいのですが牛角のネギタン塩の調味に酷似しており、ブラインドで食べれば麻婆豆腐とは答えられないかもしれません。
神経質な老犬を思わせる給仕長が我々の個室に挨拶に来てくださいました。「お料理はいかがですか?特にフォアグラ。あのマンゴーのソースは夏季限定の特別なものなんです」残念ながら、あれは不味かった。しかし世界が成り立つためには他人とうまくやっていくしかないのも事実。わざわざ事を荒立てる必要もないため沈黙を貫こうとしたその時、彼女が「美味しかったですぅ〜♡」と身体をクネらせながら答える。ダウト。お前さっき「今はお腹が空いているから食べるけど、巡航時にはパスしたい」って言ってたやろ。

彼女の発言に満足そうに頷いた給仕長は「それでは最後にフカヒレごはんをお持ちします」という言葉を残して部屋を去る。「え?もう最後?まだ4品しか来てなくない?全然お腹空いているんだけど」。
件の「フカヒレごはん」。悪くはないのですが想定の範囲内といった味わいです。そもそもフカヒレという食材はそれ単体でどうのこうのというモノでもないので仕方ありません。
デザートは杏仁豆腐に今流行りのタピオカ。杏仁豆腐ならびにタピオカは普通(タピオカはただのデンプンにすぎない) ですが、奥に隠れたコーヒー風味のアイスがパピコみたいで美味しかった。
彼の国のウーロン茶でごちそうさまでした。あり?ひいふうみいよお、、、1品足りません。店員を呼び止め1品足りない旨を伝えると、満を持して給仕長が登場。微妙な空気が流れる中、彼女は目を泳がせながら「先程のデザートは口直しであり、最後にアワビが出てきます」と宣います。ダウト。この給仕長は嘘をついている。「口直し」という表現に開き直った意思を感じました。
出てきたアワビは割に美味しい。天下一品的濃厚な味覚にグニグニとしたアワビの食感。ごくごく小さなポーションではありますが味わいは確かでした。「ふーん、そお?あたしはもうダメ。味覚が店に対して反発してる。ねえちょっとあんた、お店の人にきちんと言ってくれない?あたしモヤモヤしたまま帰りたくない」イノシシ並に勝ち気な彼女はときどき人を担ぐ。

もちろん誠実を信条とする私にとって給仕長の対応は正義に悖るので望むところ。店の奥までスタスタと歩いて行き、ちょっと手の空いた時に我々のテーブルまでお越しいただけますか?と給仕長に呼び出しをかけます。

刺客として給仕長が送り込んできたのは全然関係ない店員でした。いや、君じゃない、給仕長だ。店員も「そりゃあそうですよね」と言わんばかりに頷き秒で我々の個室を去っていく。

数分後、給仕長が再登板。要件は既に理解しているのか、表情に陰りが見えます。

最初に質問したのは6品6,000円のコース料理の内容。我々は7品9,500円のコースを注文していたのですが、最後に取って付けたような1品でプラス3,500円とされては堪らないという意図からの質問です。6品6,000円のコース料理を最初から順に1品づつ言ってください。

「前菜はキクラゲにネギドリ、その次にギョウザ、続いて麻婆豆腐、エビチリ…」なるほど確かに我々のコース内容とは少し内容が異なるようです。「6,000円のコースと9,500円のコースは食材が全然違いますから!」聞いてないことには答えないでよろしい。私は6品6,000円のコース料理を最初から順に1品づつ聞いているだけだ。約束を破る者ほど饒舌なのは世の常である。

口角泡を飛ばす給仕長の発言を遮り、まだ4品しか言っていませんよ、と続きを促す。「それから、和牛の料理に、麺料理…」ちょっと待て、我々のコースよりも旨そうじゃないか。品数も多い。デザートは無いのですか?と重ねて聞くと「あります」との回答。であれば7品になる。

品数の計算が合わない旨を指摘すると、「さっき言った料理の中からどれが出るかは私にもわからない」と爆弾発言。何が出るかわからない?どういうこと?「食材が無くなれば代わりの料理を出していく仕組みであり、私も各テーブルに何が出ているか全てを把握できているわけではない」と苦しい言い訳。

それでは質問を変えて、さっきのアワビは本当にコースの最後に出すべき料理ですか?単に忘れていただけじゃありませんか?あのデザートは口直しにしては重すぎませんか?

眉根を少し寄せた給仕長からは「あ、あの子は日本語がヘタなんです!」と、驚きの回答が返ってきました。あの子とは、私が1品足りない旨を伝えたサーバント然とした店員のことを指すのでしょう。「あのアワビは調理に時間がかかるもので、今日は忙しくてタイミング良く出せなくて、でもあの子はまだ日本語がヘタで、正しく説明できなかったんです」と墓穴を掘り続ける給仕長。日本語の巧拙はこの際どうでも良く、それを知ってアサインしたのは給仕長、あんただ。

「当日になって急にコース料理を注文するから間に合わないんです!コース料理は予約時に言ってもらうものだから…」と、まさに恥の上塗りの給仕長。そんな話は予約時に聞いていない。できもしない料理をメニューに載せ、受け付けることに根本的な問題があるとは考えないのか。

「そのへんでOK」と目配せをしタオルを投げ込む連れ。もちろんこういった不誠実で職業意識に欠けた店には何を言っても無駄であり、「ごちゃごちゃうるさい客の相手して疲れた」程度にしか響かなかったでしょう。しかし個人的には「口直し」という安直な方便のメカニズムが解明されたことに幾許かの満足感を得ることができました。

ニューオータニ嘘つきソムリエ事件もしかり、私には「こいつは何とか言いくるめられるだろう」という唯々諾々とした雰囲気があるのかもしれません。身なりは良く、姿勢は正しく、目線は高くしなければならないと痛感した夜でした。


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それほど中華料理に詳しくありません。ある一定レベルを超えると味のレベルが頭打ちになって、差別化要因が高級食材ぐらいしか残らないような気がしているんです。そんな私が「おっ」と思った印象深いお店が下記の通り。
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