虎丸/伊勢(三重)

伊勢市駅から北東へ10分強、勢田川沿いにある蔵の街「河崎」。カフェやショップなどに素敵に改装されかなり映える街並みなのですが、観光客はそう多くはありません。その河崎でも1・2の人気を誇る居酒屋がココ「虎丸」。ミシュラン3ツ星鮨店「こま田」のすぐ近くです。
こちらも古い蔵を改装した店舗であり天井が高く雰囲気抜群。カウンター10席ほどにテーブル席がいくつかとそれなりに収容人数は多いのですが、17時の開店と同時に予約客で殆どの席が埋まります。必ず予約をしていきましょう。
日本酒は1合千円前後とまあ、居酒屋としてはこんなもんでしょうか。グループであれば四合瓶で注文してしまったほうが良いかもしれません。地元のお酒が多く観光客にとっては嬉しいラインナップです。
お通しのきんぴら。お通しと侮るなかれ、ゴボウそのものの味が強くアクセントに用いられた肉(?)のコクと相まって魅力的なきんぴらごぼうでした。
「今朝獲れたばかりのアナゴがある」とのことで、天ぷらにしてもらいました。オーダーは紙に記載して店員に手渡す方式であり、順不同で配膳されるのはご愛敬。肉厚のアナゴはフンワリむっちりした食感であり、カレー塩をたっぷりつけて地ビールが進みます。
お造りの10種盛り合わせ。店主の魚に対する思い入れは尋常でなく、伊勢湾を中心とした天然の近海物に仕入れを絞っています。冷凍モノ養殖モノは一切用いず、良い魚が入らない場合は営業を取りやめるという徹底ぶり(その場合は電話連絡アリ)。なるほど魚はどれをとっても一級品であり、ムキムキマッチョでフレッシュなものばかり。やはりお造りとは新鮮さであると、昨今の熟成魚ブームに一石を投じるクオリティでした。
こちらも獲れたばかりのサザエをバター焼きにしてもらいました。ただし調味は控えめであり、サザエそのものの貝の味わいがいつまでも口に残る逸品。
あら炊き。この日の魚はカンパチです。こちらの味付けはコッテリと濃く、カンパチの強い脂にピッタリ。うっかり白米を注文しそうになる美味しさです。
たこぶつ。やはりマッチョで猛々しい味わい。
15種類以上の魚介類を用いた海鮮コロッケ。コロッケというよりは魚介類のミンチカツであり、超高級タコ焼きといった風情です。複雑で奥行きのある味わいであり、本日のアイデア賞でした。
さばの塩辛。美味しいのですが、想像以上に塩気が強く日本酒だけではややキツい。やはり白米が欲しくなる味わいです。
せっかくだから肉料理もと、伊勢赤鶏もも肉をタレ焼きで。雑味がなくあっさりとした味わいです。
〆の食事に私は伊勢志摩名物の「手こね寿司」を注文。「手こね寿司」とは鰹や鮪などの赤身の魚をタレに漬け込み、シャリと合わせて食べるもの。当店は鰹や鮪に限らずその日のイケてる魚すべてがブチ込まれます。シソやガリが混ぜ込まれており万人受けする味わい。
連れは鯛茶漬け。やはり今朝揚がったばかりの鯛がゴロゴロと入っており、茶漬けというよりも魚を食わせる1杯です。

日本酒を中心に結構飲んで、ひとりあたり9千円弱と大変リーズナブル。雰囲気としては居酒屋ですが魚のクオリティでは高級割烹顔負けであり、都心の気取った店で似たような料理を食べれば3倍は請求されるレベルの料理です。この店を悪くいう人は恐らくいない。お伊勢さんへのお参りの帰りに是非どうぞ。

食べログ グルメブログランキング

関連ランキング:居酒屋 | 伊勢市駅、宇治山田駅

人気の記事

「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。

カウンター焼肉 ふかみ/恵比寿

恵比寿駅から明治通り方面へ数分。恵比寿横丁の裏手にある雑居ビル8階にあるカウンター焼肉「ふかみ」。ちなみにこのビル、焼肉やら焼鳥やら肉系レストランが詰まっているのですが、何故か1階がドクターシーラボなのが可笑しい。
深見耕平シェフはゴルフコースメンテナンスの仕事をされていたのですが、大の焼肉好きが高じてヤキニストに転身。ついには東京カレンダーに取り上げられるまでとなりました。常連さんには妙にゴルフ関連の方が多いとのことです。
生ビールは650円、サワー類は500円~と親しみやすい価格設定。これぞ大衆焼肉の醍醐味である。

「もう誰も本なんて読まないでしょ?小説なんてオワコンなワケ」女流作家は顔をしかめる。「やっぱ儲かるのはゲームのシナリオだなあ。一時期は3日徹夜すれば3~4百万は稼げてた」日給100万円じゃないか!思わず身を乗り出す私。
お通し(?)としてアルミの平皿に千切りのキャベツが盛られます。胡麻油のきいた塩ダレ的なドレッシングで後を引く美味しさ。平間の「焼肉北京」を思い出しました。

「スマホゲームのバブルの時の話だけどね。あの頃はスマホゲームは出せば売れるってカンジだったから。内容はさておき、とにかく新作を出し続けることが重要だったワケ」
タン3種盛り合わせ。厚切りタン、タンスライス、タンさがりの3種であり、これだけ入って1,350円というのは立地を考えれば安いほうか。

「あたしの場合、育てゲーみたいなのが多くって、キャラ設定して選択肢ごとにセリフ考えて、とにかく書きまくる。だいたい1作につき3~4百万円貰えるのが相場かな?こんな適当に書いてんのにこんなに貰っていいの!?って最初は罪悪感があったけど、ゲーム会社も死ぬほど儲けてたから、ま、いっか、ってなってきた」
ちなみに当店の推しは「生ダレ」という、韓国味噌風味のフルーティーなタレなのですが(写真撮り忘れた)、タンに関してはたっぷりのネギと塩ダレと共に頂きます。ネギが気前の良い量で嬉しくなる。
赤身4種盛り合わせ。イチボにトモサンカクにシンシンに、、、何だっけな。赤身といいつつ思っていたよりも脂がのっていました。が、先のタンに比べるとこの1皿2,600円は割高に感じました。
ハラミは1皿900円。ハラミについては中々にうるさい私なので、いまひとつピンと来ません。量も少ない。

「ひとつ、ものすごくヒットしたのがあったんだよね。通常のギャラに加えて成果報酬もある契約だったから、ちょろっと書いただけで千数百万円も貰っちゃった。ゲームの名前なんだっけなあ?たぶん聞いたら知ってると思う」そんなに荒稼ぎした作品に思い入れはないんかい、私は小さな嫉妬を込めて彼女をからかう。
ミノは1皿800円。味は悪くないのですが、やはり量が少なく感じます。

「スピード命でとにかく書きまくるからいちいち覚えてらんないんだよね。でも、これまで書いたキャラにかぶったりしないように気を付けないといけないし、一度決めたキャラがブレないように用心しなきゃいけない。会社のほうで既にキャラ設定してくれてる仕事はすごくラクなんだけど」こんなところに鉱脈があったか、と目が覚める思いです。タケマシュランも課金制にしようかしらん(しない)。
お会計は軽く飲み食いしてお会計はひとりあたり8千円弱。うーん、ちょっと高いなあ。先にも述べた通り、1品ごとの価格設定は控えめなのですが量が少ない。酒についてもジョッキが小さかったり妙に氷が多かったりと可処分アルコールが少ない印象です。ランチもやっているようなので、であれば少し印象が異なるかもしれません。

食べログ グルメブログランキング


関連記事
それほど焼肉は好きなジャンルではないのですが、行く機会は多いです。有名店で、良かった順に並べてみました。
そうそう、肉と言えばこの本に焼肉担当として私のコメントが載っています。私はコンテンポラリーフレンチやイノベーティブあたりが得意分野のつもりだったのですが、まあ、自分の評価よりも他人の評価が全てです。お時間のある方はご覧になってみて下さい。

リナシメント(RINASCIMENTO)/目黒

目黒駅から歩いて15分ほど。「りんだ」や「焼肉BABY」など実力派のお店が集まるエリアのイタリアン「リナシメント(RINASCIMENTO)」。食べログは3.73(2020年6月)でありグルメガイド「ゴ・エ・ミヨ」にも毎年掲載されています。
店内にはメインダイニングの他、シェフズテーブルや個室もあり様々な使い方ができるでしょう(写真はヒトサラ公式ページより)。夜はシックでスタイリッシュ、ランチはガラス窓から光が差し込み清潔で美しく健やかな雰囲気です。
ワインはイタリア中心。アラカルトはもちろんペアリングもあって6千円程度とリーズナブル。小川慎二シェフはイタリアの2ツ星「リストランテ・サンドメニコ」で5年を過ごし、うち2年間をスーシェフとして活躍。かといって鼻持ちならない嫌な野郎ということは全くなく、オーナー含め皆ゆるふわ系の感じの良い民であり居心地がとても良い。
名刺代わりに出される前菜の盛合せ。ぐわー!なんだこりゃ!阿保なインスタグラマーなら濡れてしまうレベルの美しさです。
メニューにはお料理ひとつひとつについての説明が記載されています。それぞれが絶妙な酒のツマミであり、のんびり飲み食いすればこれだけで1時間は楽しめてしまいます。
パスタは天龍鮎を用いたもの。トップに置かれた若鮎コンフィの旨味とビターな肝のソースの風味が大人の味わい。木の芽の香りも格好良く、和の空気を感じさせる1皿です。
自家製のパン。小麦を感じさせる深みがあり、そのへんの手抜きフォカッチャとは一線を画す味わい。
「くちどけ加藤ポーク」のオーブン焼き。脂の融点が低い豚肉だそうで、なるほどしっかりと肉汁は保ちつつもサラサラとした口当たり。ニンジンもサッパリとした味覚で軽やかにフィニッシュです。
他のテーブルに供される料理があまりに旨そうだったので追加注文。短角牛と幸福豚を用いたボロネーゼであり、スペシャリテです。2種類の肉由来の複雑な旨味や脂の濃さ、ならびに皿全体を覆い尽くすフレッシュなマッシュルームとパルミジャーノ・レッジャーノが弾ける美味しさ。〆の糖質のつもりがワインがグイグイ進むパスタでした。
今度こそ〆の糖質。パンと同様、素朴ながら深みを感じるパウンドケーキで〆。ごちそうさまでした。
短めのコース料理にペアリングをつけ、パスタを追加してひとりあたり1.8万円ほど。かなりしっかり飲み食いできたことを考えれば実にリーズナブルです。ニッチな場所に立地するため、ヘンな客がいないのもすごくいい。デートに接待に食事会にとかなり使えるお店でした。次回は高いコースでシェフのフルパワーを楽しもうっと。

食べログ グルメブログランキング


関連記事
イタリア料理屋ではあっと驚く独創的な料理に出遭うことは少ないですが、安定して美味しくそんなに高くないことが多いのが嬉しい。

日本のイタリア料理の歴史から現代イタリアンの魅力まで余すこと無く紹介されており、情報量が異常なほど多く、馬鹿ではちょっと読み切れないほどの魅力に溢れた1冊です。外食好きの方は絶対買っておきましょう。

私厨房 勇(yung)/白金高輪

広尾駅または白金高輪駅から徒歩10~15分、北里通り沿いにある中華料理店「私厨房 勇(yung)」。ミシュラン1ツ星、食べログでは4.05でブロンズメダル獲得と安定した人気を誇ります。近くにはヲタク系中華「蓮香(レンシャン)」やフレンチ方程式「アルゴリズム(l'algorithme)」など実力店が百花繚乱。
「私房菜」とは香港で有名シェフが引退後にズッ友を招いてホームパーティをすることですが、当店はそのコンセプトをアレンジしたカウンターフレンチ。原勇太シェフは柏の広東料理「文菜華」の 渡辺展久シェフに師事した後、松戸に「中国麺飯勇」をオープン。その後、渡辺展久シェフプロデュースのもと白金の地にて当店を開業しました。
ハートランドの小瓶が700円と悪くない値段です。その他、グラスワインは千数百円、ボトルでも5千円と、ミシュラン星付きレストランとしては良心的な価格設定です。
前菜盛り合わせは新レンコンの黒酢炊きに蒸し鶏のネギ生姜野沢菜ソース、タイの刺身のサラダ。蒸し鶏が美味しいですねえ。単に蒸しているわけではなく、チキンライス的にチキンにしっとりと味が沁みており美味。エキゾチックなソースも面白い。
新ゴボウと中国ハムのポタージュ。土を感じる力強い味わいであり、中華でもフレンチでもどこでも通用する旨さです。
活鮑のチャイニーズステーキ。エログロな見た目ではありますが文句なしに旨い。フンニャリと柔らかいのに弾力も感じられ、鮑そのものの味が深い。肝のソースにも奥行きがあり、はっきり言ってアホみたいに高い白金台「ShinoiS(シノワ)」の鮑料理よりも全然美味しかった。
三陸産帆立貝と中国野菜の炒め。ザアっと油通ししているのにも関わらずサッパリとしたテイストです。調味は控えめであり、野菜の旨味に突き動かされる味覚です。
牛頬肉のフレッシュトマト煮込み。牛頬肉はそれほど好きな食材ではないのですが、当店は新鮮なトマトを巧みに取り入れているため、独特の味のため込みやクドさは無くスカっと美味しかった。やはり酸味というのは料理における重要なファクターなのだと再認識。
〆のお食事は梅と紫蘇のスープ炒飯。梅の酸味と紫蘇の爽やかさがレンゲを後押しし、終盤であってもスイスイと食べ進めることができました。以上で7,500円のコースが一通りです。
お腹に余裕があればアラカルトで追加できるということで、香港麺の醤油焼きそばを連れとシェア。なんとも繊細で緻密な焼きそば。私は年に5回も香港を訪れる中々の香港好きですが、今まで食べた香港麺の醤油焼きそばの中で一番美味しかった。
もう少しイケるということで、担々麺を連れとシェア。アタックこそ上品ですが、後からジンワリと汗が噴き出てくるしみじみ系の担々麺です。
濃厚にして濃密な杏仁豆腐で〆。ごちそうさまでした。コース料理に少し追加し、軽くビールを飲んでお会計はひとりあたり12,000円ほど。うーん、1万円に収まれば言うべきことは何もないのですが、まあ、あのアワビや牛頬肉の素材を考えれば妥当かもしれません。

客はバラバラに来るというのにシェフの手際が非常に良く、およそ待たされたという感じが全くなかったのが素晴らしい。脇を固めるサービス陣のゆるキャラっぷりも心地よく、肩肘は張らないけれどしっかり美味しくセンスも良い、そんなお店です。オシャレなデートでたまには中華でも、みたいなシチュエーションでどうぞ。

食べログ グルメブログランキング


関連記事
それほど中華料理に詳しくありません。ある一定レベルを超えると味のレベルが頭打ちになって、差別化要因が高級食材ぐらいしか残らないような気がしているんです。そんな私が「おっ」と思った印象深いお店が下記の通り。
1,300円としてはものすごい情報量のムック。中国料理を系統ごとに分類し、たっぷりの写真をベースに詳しく解説。家庭向けのレシピも豊富で、理論と実戦がリーズナブルに得られる良本です。