トラットリア アマルフィターナ/渋谷


Trattoria Amalfitana。2016年にオープンしたばかりの新しいお店。青山学院大学の西、いわゆる「シブニ」の辺りであり、このあたりラ・ブランシュドンチッチョアバスク琉球チャイニーズ TAMAなど人気のお店が百花繚乱。この日は奥の大テーブルを予約し8人で忘年会です。
1周年記念キャンペーンでボトルワインが半額でした。例えばこのフランチャコルタは3,500円と酒屋で買うよりも安い。こんな値段で飲んでしまって良いのだろうかと心配になる。
黒ソイのカルパッチョ。筋肉質な食感に脂のノリが良く、噛めば噛むほど甘みが広がります。やはり旬のものをシンプルに頂くのが一番ですね。
アジのタルタル。気前良く太めにカットされたアジにこれまた気前良くハーブを練りこみます。愛想の良いなめろうのような味覚であり、お茶碗いっぱいのゴハンと食べても良さそうです。
野菜の名前は失念。セロリのようなシャクシャクとした食感であり、内臓が浄化されるようなポテンシャルを感じます。アンチョビ主体の強めの味付けがワインの消費を後押しする。
ワオ!これは美しい!葉物野菜の上に色とりどりの大根たち。野菜の味が濃く、シンプルな調味と相俟っていくらでも食べてしまいます。
タコのマリネ。こちらもグっと噛み締める歯ごたえであり、モグモグといつまでも美味なる時間が口の中で続きます。
ツブ貝のマリネ。こちらも歯ごたえいいですねえ。やはり食感も味覚のうちのひとつである。臭みなどは一切なく上品な個体であり、上手くするとアワビのような風味も感じました。こんなにも大量のツブ貝、殻から取り出すの大変だったろうな。。。
ブッラータと生ハム。ブッラータとはモッツァレラチーズにクリームが練りこまれたような感じのフレッシュチーズです。新鮮なチーズと濃厚なクリームが相俟って見事な調和を醸し出す。 生ハムたちもジットリと旨味の増した熟成であり、イタリア食材の真髄を見ました。
おお、リピエノ。タマネギをくり抜いて大量のスカモルツァ(恐らくアッフミカータ)を詰め込みじっくり火を入れた逸品。食欲をそそる燻製香に旨味と塩気の強いトロトロのチーズ、滋味溢れるタマネギの甘味。この料理が好きでない人間は地球上に存在しないであろう。
うふふ、コチラも半額。やはり大勢で飲み食いするのはいいですね。色々なワインを試すことができる。最近ふたりでフランス料理とかに行っちゃうと、泡1本白1本赤1本でノックアウトされることが多くなってきたもので。
うちわ海老の リングイネ。平たく、ややもするとグロテスクな外観のエビですが、たっぷりと身が詰まっており実に濃厚な味覚。溶け出した甘味がパスタ全体に周り全体として完成された味わいです。
たっぷりの貝をパッケリと共に食す。パッケリとはカンパーニャ地方(アマルフィがあるとこ)で食べられる巨大なマカロニのようなパスタ。旨味の強い貝の出汁をたっぷりと含ませてムシャムシャと頬張る。茹で加減も完璧であり、結構な大箱で好き放題バランバランに注文しているのにこのパスタの火の通りは素晴らしいです。
カラスミのスパゲッティ。とにかくカラスミを塗す、といったスタイルではなくタマネギの甘味を上手に用いてソースのように楽しむ一皿。ベクトルとしては高岳のヒヅメ。強い旨味に酒が進む。これは日本酒とあわせても良さそうな料理です。
リゾットにはチーズがこれでもかという程ぶちこまれており、味コイメ原理主義者の私としてはほとんど恋愛に近い熱狂を持ってひと口ひと口を賞味しました。
アオリイカのグリル。こちらも思い切りの良い火入れであり、表面に焦げ目の緩急があって実に香り豊か。
オマール海老のカタルーニャ。サルデーニャがスペインに支配されていたころに伝わった料理であるため、サルデーニャの名物料理ながらも「カタルーニャ」だそうな。

能書きはさておきこの料理の旨さといったらない。爪の先までミッチミチに詰まった海老肉をシンプルで勢いのある味付けで。芳醇なエビの香り、ザクザクとした歯ごたえ、濃密なエビの味覚。本日一番のお皿でした。「僕もうおなかいっぱいなので、僕のぶんも食べます?」とシイタケ嫌い。お前いい奴だな。
〆は宮崎県産牛ミスジのタリアータ。なんとも豪快で気持ちの良い料理です。いわゆる稀少部位なのに、こんなに山盛りで食べてしまって良いのでしょうか。ごくごく薄い火入れと簡素な調味が素材のポテンシャルを最大限に引き出しています。兎にも角にも柔らかく肉の味が濃い。キッチャーノヴァッカロッサなど肉自慢のイタリアンはいくつかお邪魔したことがありますが、個人的には当店のミスジのほうが心に残りました。
肉が上質なので奮発してブルネッロ・ディ・モンタルチーノ。そしてこちらも驚愕の半値プライス。トスカーナとはつまりこうである、と主張するエレガントなフルボディ。ここまでレベルの高いワインを1本5~6千円で飲める店は世界的にも珍しいであろう。
ジェラートも実に素材の味が活きています。クリのフレーバーが旬を感じる美味しさでグッド。
ドルチェの盛り合わせ。クレマカタラナが絶品。濃い卵の風味にキャラメルのビターな風味が突き刺さる。満腹なのにも関わらず、もう一口もう一口と往生際悪く食べ続けてしまいました。

ぐわー、大満足です。上質な食材をシンプルに腹いっぱい食べた。この満足感は何事にも代え難く、これこそがトラットリア(大衆向きの小さなレストラン)の本懐です。今回は派手な忘年会であったため、その注文量も豪快でしたが、普通に訪れて常識的な量に留めれば6~7千円に落ち着きそう。

ドンチッチョケ・パッキアなど、東京にはトラットリアを標榜している割に油断するとひとり1万円を余裕を超えて来るお店が多く、油断も隙もあったもんじゃないですが、当店は精神的にも費用対効果も本物のトラットリアです。気の置けない仲間たちと是非どうぞ。


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イタリア料理屋ではあっと驚く独創的な料理に出遭うことは少ないですが、安定して美味しくそんなに高くないことが多いのが嬉しい。
十年近く愛読している本です。ホームパーティがあれば常にこの本に立ち返る。前菜からドルチェまで最大公約数的な技術が網羅されており、これをなぞれば体面は保てます。

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