焼肉くにもと 本店/大門

妻が「焼肉食べたい」と呻き声を上げ始めたので、近所の焼肉夫婦に連絡を取り、付き合ってくれないかと相談すると2つ返事でOKでした。都合の良い夫婦である。

日曜夜で開いている店が少ない上の当日予約。近場で適当なお店が中々見当たらず、何とか大門にまで索敵範囲を広げてようやく予約できたのが当店。

しかし予約電話で非常に嫌な気持ちにさせられました。電話口で「子供NG」「予約時間厳守」「バラバラに来るな揃って来い」「予約の時点で注文するコースを決めろ」「2時間制」「カードNG」などと、リアル注文の多い料理店。予約で席を埋めてもいないくせになんて横柄なんだ。入店前から非常に印象が悪かったです。
仕方が無いのでクソ暑い中わざわざ店の外で友人夫婦と待ち合わせての入店。誰得ですかこのシステム。私がおもてなしする側なら客に対してこんな対応絶対にできないんだけど。と暗い気持ちになっていたところ、近くのテーブルの客は見事にバラバラに集合しており、特にお咎めは無い模様。正直者が馬鹿を見た瞬間です。
テーブルの最も目立つ位置に立派に掲げられた有り難いお言葉。「敬白」の意味を取り違えてるとしか思えない居丈高な文章です。
気を取り直して生ビールで乾杯。一般的な中ジョッキよりも一回り小さめで約800円でした。 高いなあ。
ナムル盛り合わせは約1,300円。人生で最も高価なナムルです。ただし上品で清澄な味わいで味は良かった。
「飛び切り」という、ひとり9,000円のコースを注文しました。ただしコースと言っても前菜やサラダ、ゴハン物は全て別料金であり、コースに含まれるものは肉のみです。つまりこの写真にある4人前で実に36,000円である。
お肉は田村牛という、但馬牛系のブランド牛で統一されていました。食べる順番や焼き加減など懇切丁寧に教えてくださいます。そう、威圧的な電話対応や注意書きとは裏腹に、ひとたび店内に入れば店員さんは非常に丁寧かつ柔和な笑顔で対応して下さいます。
ヒレササミ。いわゆるヒレ肉のことでしょうか?豪胆な見かけと異なり箸で繊維を裂くことができるほど優しくスマートな肉質です。肉汁はジューシーながら脂身は少なめであり、肉の味も申し分なし。本日一番のお皿です。
 上肩ロース。甘い脂と細やかな肌理。
王道中の王道の味わい。個人的には若干に脂がリッチすぎると感じましたが、妻はこの肉が本日一番だったとのことでした。
 芯々。しんしんと読みます。稀少部位。赤が濃く、健康的で食欲をそそるビジュアルです。
ひとたび炙るとパっと色味がフューシャカラーに変化します。唇で挟むだけでプツプツと切れるほど徹底的に柔らかい。ロースほど脂が濃くなく、品の良い旨味に溢れていました。

以上、塩の部。何もつけずそのまま頂きましたが事前の味付けはやや濃い目だったかもしれません。
タレの部開始。まずは上いちぼ。ランプと呼ばれるおしり上部うち、下側の柔らかい部分です。ちなみに「いちぼ」ってのは日本語でも何でもなく、牛のお尻の骨がH型だからH-bone(エイチボーン)であり、それが訛ったという説が有力らしいです。
運動を重ねているからでしょうか、お尻のお肉とは思えないほどサクサクとした歯ごたえ。赤身と霜降りのはっきりとしたコントラストが見て取れますが、見た目ほど脂肪分は感じられず食べやすかった。
上ランプ。まるっきりお尻の部分です。先のイチボに比べると紅色が鮮やか。
なるほどイチボに比べると噛みごたえはハッキリとしており、脂よりも肉そのものの鉄の味わいが支配的。 ローストビーフにしても良いかもしれませんね。
〆は泣く子も黙るサーロイン。一見すると肉よりも脂を食べるかのようなヴィジュアルです。
網に載せると桜色が花開く。サーの称号を得るに相応しく堂々たる味わいです。ただしサーロインにしては脂が強すぎるような気もします。私にとってはバランスの欠いた元貴族のような味わいに感じてしまいました。

以上、6種の肉とナムル、ビールを2~3杯飲んで、ひとりあたり12,000円弱でした。うーん、高い。焼肉としては非常にレベルが高いですが、これだけ値段を上げればそりゃあ美味しいよな、という感想です。

焼肉という井の中で勝負すれば間違いなくトップクラスの店であり、ここを超える焼肉屋はそうそう見当たることはないでしょう。ただ、飲食業という観点で当店を眺めると、味のバラエティが乏しい割にゲストに不自由を強いる点に納得できかねる。自由の敵に自由は無い。

客に媚びろとは言いませんが、もうちょっと普通にして欲しいです。「嫌なら来るなキャビア左派め」と言われればそれまでかもしれませんが、うーん、困ったな。何よりも味は間違いない点が、私の中で論点を余計にコントラバーシャルにしているのかもしれません。あまり食事に哲学を求めず、直線的に旨い肉を食べたい方にとっては満足できるお店だと思います。
駆け出しのUBER芸人として興が乗って、UBERで十番まで帰ることにしました。日本でUBERを使うのは初めてです。台数は少ないものの、使い勝手はアメリカのそれと変わらず。
さすがにタクシーよりも割高ではありますが、ホスピタリティに溢れた素晴らしいドライバーの方でした。是非このドライバーに先の焼肉屋で電話応対をして頂きたかった。そんな夢のまた夢をみてしまうほど、ある意味では印象的なレストランでした。


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それほど焼肉は好きなジャンルではないのですが、行く機会は多いです。有名店で、良かった順に並べてみました。
そうそう、肉と言えばこの本に焼肉担当として私のコメントが載っています。私はコンテンポラリーフレンチやイノベーティブあたりが得意分野のつもりだったのですが、まあ、自分の評価よりも他人の評価が全てです。お時間のある方はご覧になってみて下さい。


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