乙女寿司(おとめずし)/片町(金沢)

金沢随一の繁華街「片町」の路地裏にある「乙女寿司(おとめずし)」。金沢、いや北陸を代表する鮨屋であり、予約が取れないこと山の如し。ミシュラン2ツ星を獲得し、食べログではブロンズメダルと百名店に選出されています。「小松弥助(こまつやすけ)」は県外客が殆どで観光名所と化していますが、当店のゲストは地元客が多いのが印象的。

鶴見和彦シェフは客に媚びることなく寡黙に仕事に集中するという、私の最も好きなタイプの料理人です。
入店してすぐ、「つまみますか?それとも早速にぎりで?」との問いかけ。つまむと答えた途端に光の速さで刺身が並びます。中トロにアラ。あらー、美味しいじゃない。のっけから北陸の味覚で胃袋を掴まれます。
続いて迷いガツオにアカイカ。アカイカが素晴らしいですねえ。細く細かく包丁が入っており、口に含むとまるで生きているかのようにネトネトと色んなとこに絡みつきます。そして甘い。
ムラサキウニ。利尻帰りの私としてはムラサキウニについて一家言あるのですが、なるほど下に敷かれたウニ醤油的なひと工夫は、素材が全ての彼の地には無い発想である。
輪島の毛ガニ。どひゃー、なんて気前の良いボリュームなのでしょう。そのまま食べて旨味たっぷり、お味噌と共に最高潮。マンボウで酒が飲めないのが悔やまれます。
万寿貝。包丁を入れる必要があるほど迫力のある個体であり、ムッチムッチと浅川梨奈のような食感です。何より貝殻に溜まったエキスが一番のごちそう。
アワビの肝焼き。万寿貝の歯ごたえをより洗練させたタッチであり、セメント色の肝のソースと共に、思わず唸る美味しさです。珠洲産ってのもいいですね。当店は能登を中心とした地物のタネが多いのだ。
焼き物はノドグロ。かなり攻めた焼き加減ですが、それに負けない脂。北陸に来るとノドグロに接する機会が増えますが、ピンからキリまで色々あるなあと妙に感心したひと皿でした。
にぎりに入ります。まずは甘海老。その名の通り甘い海老であり、ねっとりと舌に絡みつきつつプツンと切れるこの食感。
マハタ。実に綺麗な外観およびその味わいであり、白身魚な王者と評しても過言ではありません。
コダイを昆布締めで。ぬるりとした舌ざわりを感じるほど昆布のニュアンスが強く、コンパクトになりがちなタイの風味を補強しています。
トロ。説明不要。スタンダードナンバーこそ美味。
コハダはマイルドな締め方であり、優しい酸味がやさしみです。
新物の生いくら。透き通ったその外観にデビューしたばかりという初々しさが現れています。小ぶりな軍艦ながらその存在感は抜群。
アジ。肉厚の美味しいところをズバっと割いてネギを忍び込ませます。ムシャムシャと食べ応えがあり私の最も好むスタイルでした。
ノドグロを軽く炙って。先の焼き物もナイスですが、こちらのにぎりもベリーナイスです。フワっと脂の香りがした上で、ツルっと美味しい深みのある甘さ。
七尾のシャコ。それほど好きなタネではないのですが、それでもこのシャコは別格であると思わせる艶っぽい味わいです。
お椀は実に綺麗で気品あふれる美味しさ。それでいてしっかりと魚介の風味を感じるのだから恐れ入る。
バフンウニ。礼文帰りの私としてはバフンウニについて一家言あるのですが、なるほど何度食べても頑強な美味しさであり、小ぶりな軍艦ながらその存在感は抜群。
あなご。やはり攻めた焼き目があり、フェミっぽい店名ながらマニッシュな味わいです。
ここからは追加。シメサバはコハダと同様、優しい仕上げであり、青魚推しの私としては思わず笑みがこぼれる逸品です。
〆にカンピョウ。カンピョウたっぷりワサビたっぷり、ああ、鮨を食ったと記憶を刻むフィニッシュでした。

ノンアルコール飲料をいくらか飲み、少しにぎりを追加してお会計はひとりあたり2万円を切りました。うわおー、これだけの高級食材、質、量を平らげてこの支払い金額は思わず小躍りしたくなります。銀座なら4万円近くするんじゃないかなあ。

費用対効果はさておき、大将の毅然とした態度を含めた真っ当な鮨屋としての雰囲気がすごくいいですね。我が心の北陸ナンバーワン鮨屋かもしれません。オススメです。

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鮨は大好きなのですが、そんなに詳しくないです。居合い抜きのような真剣勝負のお店よりも、気楽でダラダラだべりながら酒を飲むようなお店を好みます。
この本は素晴らしいです。築地で働く方が著者であり、読んでるうちに寿司を食べたくなる魔力があります。鮮魚の旬や時々刻々と漁場が変わる産地についても地図入りでわかりやすい。Kindleとしてタブレットに忍ばせて鮨屋に行くのもいいですね。