Mori Yoshida(モリ・ヨシダ)/パリ7区

2019年のサロン・デュ・ショコラでは「モリ ヨシダ」と「コンパルティール ヴァロールのコラボ作品が一番美味しかったので、せっかくパリに来たことですし、「モリ ヨシダ」の路面店へお邪魔することに。
アンヴァリッド地区の南、公園に面した落ち着いた雰囲気に位置します。ガラス張りの店内からは街路樹や芝生の緑が飛び込んでくる。常にゲストで満ちており、GW期間中だからか、その半分は日本人という印象。店員には普通に日本語が通じます。
吉田守秀シェフは1977年静岡の菓子店の3代目として誕生。日本菓子専門学校を卒業後、1999年渡仏。パークハイアット東京などを経て2005年に静岡に「パティスリー ナチュレナチュール」をオープン。TV東京系列の人気番組「TVチャンピオン」において2年連続チャンピオンに。2010年に再渡仏し、2013年パリ7区に「MORI YOSHIDA」をオープン。最近ではフランスのテレビ番組「LE MEILLEUR PATISSIER」で優勝しています。
普通の日本人が彼に接することができる機会は年に一度のサロショだけなので、どうしてもチョコレートの印象が強いかもしれませんが、やはりその本懐はケーキ類。フルーツを多用した色とりどりの芸術作品が飛ぶように売れていきます。
マドレーヌやフィナンシェなどの焼き菓子も、それ専用のコーナーが設けられるほどの充実ぶり。まさに王道といった伝統的な焼き菓子がズラりと並びます。
フランスのパティスリー(お菓子屋さん)らしくヴィエノワズリーもたっぷり。ヴィエノワズリー(Viennoiserie)とは鶏卵やバター、牛乳、クリーム、砂糖などを用いたパンの総称。ただしフランス人にとってはパンというよりもお菓子に位置づけられています。クロワッサンはパンでなくお菓子なのだ。
イートインスペースは無い(フランスではケーキ屋併設のカフェスペースは普通無い)ため、店の向かいの公園のベンチに座り込んで買い食いします。言えばフォークやスプーンもきちんとつけてくれます。
いちばん食べたかったクロワッサン。これはど真ん中のクロワッサンですねえ。最高のバターに最高の小麦粉。構成要素が手に取るようにわかるほど、シンプルで素材そのままのクロワッサンでした。密度が高く、存在感がある。これで1.5ユーロという値付けはパリの奇跡である。
パリブレスト(Paris-Brest)。リング型のシュー生地の間にプラリネ(焙煎したナッツ類に加熱した砂糖を和えてカラメル化したもの)のクリームがサンドしてあります。クリームの総量が半端なく、クリームそのものを味わう逸品。見た目とは裏腹に口当たりが軽いので、スイスイ食べることができます。
スペシャリテの「M」。公園で手づかみで食べると、どこかオニギリのようも見えます。ヘーゼルナッツの生地にメープルシロップを用いたムース、ミルクチョコレートのムース、柑橘のコンフィチュール(ジャム的砂糖漬け)、トップにヘーゼルナッツをトッピング。
ご想像の通り割とややこしい味覚であるため、ホテルに戻って椅子とテーブルについて、フォークとナイフでじっくりと向き合って食べるべきケーキでした。今後、買ってすぐ公園で食べる方は、手づかみでパクパク食べることのできるものを選ぶと良いでしょう。
極めてベーシックで王道中の王道という食後感でした。「日本人がフランスで作るフランス菓子」と意気込んで行くと拍子抜けするほど伝統的な味わいです。ユズ・マッチャ・サンショ・ウマミ・ダシを掲げた日本を意識させる特殊なフランス菓子では決して無く、店名を隠せばフランス人によるフランス人のためのフランス菓子と認識することでしょう。

甘味を食事の一部として捉えるフランス人(刑務所でデザートがでる国だ)に向けられた菓子。ヘヴィなフランス料理に負けない力強さ。まさにフランスでの生活に溶け込んだ日常的な味わいであり、そういったジャンルで日本人が活躍しているのは嬉しく、また、フランス人の度量の広さが感じられたひとときでした。


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