Benoit(ブノワ)/パリ4区

パリ旅行中の日本人女子とタイミングが合い、急遽夕食を共にすることに。ブノワに興味を示していたので秒でトリップアドバイザーから予約を入れる。便利な世の中になりました。18:45にピラミッドで待ち合わせて立ち飲み屋で軽く引っ掛け、ほろ酔い気分でパリの街中を散歩しながら予約時刻の20:00にブノワ着。
当店はパリで100年以上続く老舗中の老舗。現在はアラン・デュカス(史上最年少三ツ星シェフ)のグループの一員として機能し、表参道大阪にも出店しました。ミシュラン1ツ星。
ほんのり温かい特大サイズのグジェール(チーズを混ぜたシュー皮)をツマミに乾杯。 ワインは全てキャラフェで注文したので写真を撮り忘れてしまいました。

「あなたといると、あたしのフランス旅行が台無しなんだけど」彼女はつっかかるような口のきき方をする。「せっかくパリに来たってのに、立ち飲み屋で軽く飲んでからビストロ。東京でやってることと何も変わらないじゃない」
「ぜんぜん迷ったりしないでスイスイお店までたどり着くし、周りの客はアメリカ人だらけだし、もうちょっと旅情ってものは無いわけ?」確かに周りのゲストは英語を操る人種ばかりであり、店員もそのつもりで最初から英語で話しかけて来ます。恐らく店内は外人ゾーンとフランス人ゾーンに分けられているのでしょう。
私は前菜にザリガニのスープを注文。彼女はザリガニ!?と露骨に顔をしかめていましたが、一口味見してもらうと「何これ!美味しい!」と瞬で絶賛へと変化しました。ザリガニという響きはアレですが、要はエビと大差ない食材であり濃厚なビスク的な料理。美味しくないわけがありません。
山盛りのバターとパン。しかしフランスでの食事を上手にこなすコツは、パンには手を付けないことである。特にビストロにおいてはとにかく料理のポーションが大きいのです。

「フランス語話してるとこ、聞いちゃった。やるじゃん」うーん、話すって言っても、カタコトで単語単語を言ってるだけなので、フランス語をある程度解する彼女(フランス語圏在住歴あり)の前ではお恥ずかしい限りです。
彼女の前菜はパテアンクルート。いわゆるパテを生地で包んで焼き込む料理です。一口味見させてもらいましたが、やや調味が強すぎる。北島亭のように味が濃いので、若干食べ疲れするきらいがあります。
私のメインはリ・ド・ヴォー(仔牛の胸腺)にフォアグラ。聞いただけで胸が焼けそうな濃厚な食材たちですが、思いのほか酸味をきかせた調味であり、ある種アジア料理のような味覚でスイスイと食べ進めることができます。白眉は貝殻型のパスタ。茹で加減がちょうどよく、フォアグラの脂とよく合う。
連れはカスレを注文。フルかハーフの選択肢があったのでフルでオーダー。するとマジでキャセロール丸々いっぱいで作ってきやがって軽く引く。この写真は取り分け後の第一弾です。味は王道中の王道。多種多様な肉のエキスを豆が吸い込みコッテリとした仕上がりです。

「別に流暢じゃなくてもいいんじゃない?彼らの言葉でコミュニケーションを取ろうとする姿勢を評価するのよ、フランス人は。その証拠に、お店の人の接し方、他の客とあたしたちとの間で露骨に違う」
第二弾。それにしても馬鹿げた量である。今回はフランスらしさを確かめるためにフルサイズでの注文でしたが、普通の食事であればハーフで注文することをオススメします。

まあ確かに、ちんちくりんなアジア人が一生懸命フランス語を使おうと頑張っている光景は、彼らにとって微笑ましいことこの上ないでしょう。この歳になっての新たな言語の学習は苦痛でしかありませんが、そのストレスを雲散霧消させるメリットもたまにはあるのだ。
小菓子のショコラが異常に美味しい。アラン・デュカスグループだから、そこのショコラなのかなあ。クーベルチュールの濃さはもちろん、プラリネの滑らかさと風味の強さに心を打たれる。本日一番の一口でした。

上記の料理にワインをキャラフェで2本注文し総額195ユーロ。料理の味覚としては普通のビストロ料理なので、東京で食べるよりは割高に感じました。それでもミシュラン1ツ星というブランド、老舗の看板を考えればまあこんなものでしょう。観光客への対応もこなれているし、ネットからも予約できるので、パリでのビストロデビューにちょうど良いお店です。


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