Le Pré Catelan(ル・プレ・カトラン)/パリ16区

パリ16区にある森林公園「ブローニュの森」のど真ん中にある3ツ星レストラン。公園というよりもまさに森の中であり、公共交通機関でのアクセスは実質的に不可能。私はホテルからUberを利用しました。
シェフはフレデリック・アントン(Frederic Anton)。MOF(国家最優秀職人賞。フランス文化の最も優れた継承者たるにふさわしい高度な技術を持つ職人に授与される)として認められており、ジョエル・ロブションの一番弟子でもあります。最近ではティエリー・マルクス(Thierry Marx)とタッグを組み、エッフェル塔内にあるレストラン「ジュール・ベルヌ(Jules Verne)」からアラン・デュカスを追い落とし話題となりました。
これがパリ市内かと目を疑うほどの優雅な造りです。どこか田舎のラグジュアリー・リゾートを訪れたような空気感でテンアゲです。
こちらはウェイティングスペース。建物はルイ16世の別荘をそのまま利用しているそうな。深緑色のトーンが特徴的であり、お外の深い緑とシンクロ。これがマイナスイオンである。
ダイニングエリアへとご案内。丁寧に整えられたお庭を囲むように大きな窓が誂えられており、これを開放感と言わずに何と言おうか。近くのテーブルは犬連れ。ゲストの足元でじっと寝転んでおり、時々ワンと声を出し心が和みます。私は皆が考えている以上に犬好きなのだ。
グラスのシャンパーニュが割高だったのでボトルで注文。コクが感じられる力強いロゼであり、ランチで1本で通すにはナイスなチョイスでした。
お料理に入ります。サワークリーム的な何かにグリーンピース等をトッピング。「Le Cinq(ル・サンク)」同様、やはりこういう何でもない食材の質が恐ろしく高いですね3ツ星料理店は。最初からこういうものを食べていれば、世のグリーンピース嫌いは減るだろうに。
お隣にはビーツのメレンゲ。いわゆるメレンゲよりも幾分軽く実にエアリー。ビーツの土臭さは排除されており、どぎつい見た目からは考えられないほどの上品な味わいでした。
パンが2種にバターが2種。兎にも角にもバターが旨い。畢竟、フランス料理とはバターである。うう、日本に連れて帰りたい。ちなみにCAたちはパリへのフライトの土産として、機内の冷蔵庫にたっぷり自分たち用のバターを詰め込んでいると聞きました。
うわ、なんてことだ、こんなに美味しい料理があるでしょうか!?カニの味覚が凝縮されており、カニよりもカニの味がします。スプーンに詰め込まれたフェンネル(?)風味の軽いバターも味変としてグッド。旨味や塩気が強く、こういう料理は若いうちに食べてこそ価値があります。
こちらもカニ。タイ風味と伺っていて嫌な予感はしていたのですが杞憂に終わりました。ヤムウンセン(タイ風春雨サラダ)の春雨部分を全てカニに置換した料理であり、美味しくないわけがありません。辛味は排除されて酸味と甘味はしっかりと残した興味深い料理でした。
メインはリ・ド・ヴォー(仔牛の時にだけある乳を消化する酵素の出る内蔵)を選択。「Benoit(ブノワ)」でもそうでしたが、フランスに来たからにはこっち系の食材をたっぷり食べたい。その期待に120%応えてくれたのがこの皿でした。牛肉とは考えられないほどクリアな味わいであり、ホルモンなの?違うの?どっちなの?というギリギリの脂の食感。見た目は映えませんが、直線的に旨い見事な1皿でした。
付け合せは旬の野菜とキノコをコッテリとチーズ系で。こちらはコストコのパスタソースのように解りやすい味わいであり、万人受けする調味でしょう。素材は一流ですが、人によっては下品に感じる味覚かもしれません。
フランスの美点のひとつ、チーズの時間です。この他ハード系のものも取り揃えており、フランスにおけるチーズの代表作は一通り揃うという見事なラインナップ。私はブリア・サヴァラン、シャビシュー・デュ・ポワトゥ、ラングル、エポワス、コンテを注文。私はチーズプロフェッショナル様なので、このあたりスラスラとオーダーできて便利です。
デザートはパリ・ブレスト。シューとプラリネクリームを合わせたフランスの伝統菓子です。ややコンテンポラリーなコース仕立て見せかけて、〆は王道中の王道でスマッシュを決めてくるのがいいですね。時代の流れに乗りながらも伝統は守る、そんな芸風です。
お茶菓子はショコラにマドレーヌ。左上の器に入ったソースが濃厚であり、静脈注射をすれば3日は起きていられそうな味の濃さでした。
夢のような空間で最高のサービスを受けつつ極上の料理を腹いっぱい食べシャンパーニュを1本飲んでお会計はふたりで5万円弱。なんという費用対効果の高さでしょうか。もちろん絶対価格としてはそれなりに高いですが、2.5万円でこれだけの幸せをクリエイトできるジャンルは料理以外に他には無いような気がします。ネットからも予約できるので、フランス行きが決まったら真っ先に予約を入れましょう。オススメ!


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「好きな料理のジャンルは?」と問われると、すぐさまフレンチと答えます。フレンチにも色々ありますが、私の好きな方向性は下記の通り。あなたがこれらの店が好きであれば、当ブログはあなたの店探しの一助となるでしょう。
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