カラペティ・バトゥバ(QUAND L'APPETIT VA TOUT VA!)/麻布十番

貧困層の女の子と半年ぶりにデート。お店は麻布十番で、いや日本で最も好きなフランス料理店のひとつ「カラペティ・バトゥバ(QUAND L'APPETIT VA TOUT VA!)」。1年半ぶりの訪問です。
ワインは全てお店にお任せ。「乾杯用に、泡を半量ご用意しますねっ」と軽快なソムリエ。当店は食事の量やワインの量、サービスの濃度(?)まで自由自在。ゲストの趣味嗜好に完璧にチューニングしてくる自由度の高さが見事です。

「ゴールデンウィークは一人旅。わちゃわちゃ観光するんじゃなくて、中くらいのサイズの街に留まるつもり。エアビー借りてさ」貧困層は暮らすように旅をする。中上級者のスタイルである。
アミューズはシラスと卵をクルっと巻いたものにキャビアをトッピング。程よい塩気と仄かな苦味。最初の一口目として完璧な一品でした。
今夜はアラカルトで注文。人数に合わせてうまく量を調整してくれるのが当店の美点。初ガツオの藁焼きにデコポンや深谷ネギなどを彩り良く組み合わせ、健康的な味覚へと仕立て上げます。カツオ表面の旨味や苦味が大人の味わい。
「オーガニック系のコスメとか食材とかを勉強しようと思ってさ」出た!オーガニック!先日私はオーガニックでとても嫌な思いをしたので、そのようなコンセプトに傾倒する人種とは距離を置いているのですが、貧困層よ、お前もか。
「あはは、あたしは大丈夫。いまだにラーメンとか食べに行くし。でも確かに、ヴィーガンとかに心酔してる人って、いっつもカリカリしてるよね。非暴力がコンセプトのはずなのに、すごく攻撃的。細かいことにイライラしてるし、押しつけがましい、説教臭い。肌は浅黒くてカサカサに乾燥してて、くすんでる」陶器のようにツヤっとした肌を持つ彼女は他人の肌に対する分析が鋭い。
新玉ねぎのスープにイワシのフリットをトッピング。これが玉ねぎか、と驚くほど糖度が高くコクも強い。まさに大地の恵みであり、本日一番のお皿です。イワシのフリットも旨味が強くワインのお供にバッチグー。
「ヴィーガンな人ってさ、『あなたが生きているだけでどれだけ地球にダメージを与えているか理解している?』とか真顔で言ってくるの。怖いでしょ?」確かに人間が生きているだけで地球にダメージを与えているは確かでしょうが、だったらオマエ今すぐ死ねよ地球の敵め、というのが私の率直な感想です。
メインはラム。結構な脂を湛えた肥満児であり、見た目以上に食べ応えがあります。ジューシーな肉質はもちろんのこと、付け合わせのキノコなども外さない美味しさ。
ところで、どうして毎回ひとり旅行なの?「うーん、女友達とは旅行したくないんだよね。予定調整から面倒だし、行きたい場所とかお店もバラバラ。そういう場面であたしは全部譲っちゃうタイプだから、疲れちゃうの。お風呂に入る順番すら気を遣う」
デザートはチョコレートのスフレに焼きバナナのアイスクリーム。丼いっぱいのスフレを独り占めできる幸せさといったらない。焼きたてのスフレはマグマにドロっとしており、上質でふくよかな甘味が心地よい。焼きバナナのアイスクリームはスフレとはまた違ったベクトルの甘味であり、迫力のある1皿でした。
「男の人が羨ましいよ。みんな平気で別行動しちゃうし、何ならホテルまで別の部屋とっちゃうでしょ?女子旅で別行動なんか許されないし、部屋が別々だなんて聞いたことがない」
「楽しかった。素敵な金曜日。やっぱりこういう垢抜けたお店に来るとウキウキしちゃうよね。あたしは基本的にはひきこもりだから、もっともっとあたしを外に連れ出してね」確かに当店は大変に垢抜けており、麻布十番らしさという意味ではパーフェクトなお店です。

奇をてらわずオーソドックスに美味しい料理、察し良く付かず離れずなサービス、洒脱な客層、驚くほどリーズナブルな価格設定、長所を挙げればキリがありません。姉妹店の「ALTRO!(アルトロ)」も似たような空気感なので、やはりオーナーの哲学に筋が通っていることの証明でしょう。オススメです。


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東京カレンダーの麻布十番特集に載っているお店は片っ端から行くようにしています。麻布十番ラヴァーの方は是非とも一家に一冊。Kindleだとスマホで読めるので便利です。

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