キャンティ(CHIANTI)/飯倉片町

日本のイタリアンレストランの草分けであるキャンティ。創業者の川添浩史と妻の梶子は「日本には本格的なイタリアンレストランがまだないから、自分達でつくってしまおう」と1960年、飯倉片町の地にオープン。店名はもちろんワインの「キャンティ(CHIANTI)」が由来です。
地階がメインダイニング、1階がカフェ、2階がバーという誂えの建物。全盛期の当店は午前3時まで営業しており、遅い夕食をとる放送・芸能関係者や財界人のアフターに付き合うホステス達で深夜まで賑わったそうです。

彼らは「キャンティ族」と呼ばれ、例えば荒井由実(松任谷由実)は中学生時代に実家の八王子からキャンティに通い、芸能界の重鎮を捕まえては自分の歌を披露してデビューのチャンスを勝ち取ったし、三島由紀夫が割腹自殺する前の晩に夕食を食べたのも当店です。このあたりの登場人物はwikipediaに整理されています(レストランがwikipediaって凄い!)。一見の価値あり。
ディナーは客単価2万円の高級店であるため、まずは平日ランチで様子見。お邪魔したのは1Fのカフェ。正午過ぎのピークタイムに訪れたのですが、ゲストは私ひとりだけでした。

注文は「平日 パスタランチ ROSSO」。前菜3品に本日のお勧めパスタ、パン、デザート、コーヒーが付いて2,800円です。
注文してすぐに前菜が到着。げ、「前菜3品」ってこれだけ?それなりの価格なので3皿出てくるものだと勝手に妄想していたのでうが、まさに字面通りの3品でした。ぐぬぬ。
柿に生ハム。今あなたが想像している通りの味わいであり素材を盛り付けただけ。レストランで食べる必要は無いかもしれません。
マスタード風味のサラダ(?)。やはりコチラも見た目の通りの味わいであり、家庭料理の延長です。ハムとサラダの風味が支配的であり、先の生ハムと味覚が重複する。
こちらは一口カプレーゼでしょうか。半切りのトマトにリコッタチーズをのせ、オリーブオイルで調味します。やはり料理というよりも材料です。
パンも一般的なバゲットであり、特筆すべき点はありません。

この辺りで常連客と思しき港区おじさんと2まわりも3まわりも年下の女子が登場しました。大声で電話し、クチャクチャと咀嚼し、ガハハと女の腰に手を回す。USBとファックスの違いもわからないタイプです。まさに私が思い描いていた通りの客層であり、心がときめきメモリアル。
菜の花とカラスミのパスタ。乾麺を柔らかめに茹で上げ、オイルとカラスミを塗し、菜の花をトッピングします。決して不味くはありませんが、プロ専業主婦の作品と言われても違和感のないクオリティです。

ちなみに当店のスペシャリテはスパゲッティ・バジリコ。創業当時はまだまだ日本の流通も食材市場も発展途上だったので、イタリア本国と同じ材料を揃えることは難しく、バジルの葉の代わりにシソの葉を用いたり、オリーブオイルの代わりにバターとサラダ油を混ぜたりと代替品で試行錯誤しており、当時のレシピを今でも変えずに提供しているそうです。
デザートは苺のショートケーキ。思ったよりも大きなサイズであり、血糖値スパイクが約束される味覚です。前菜・パスタと量は少な目だったのですが、このケーキで一発で腹が満たされました。
コーヒーは中々美味しい。本日一番のお皿です。難しいお店でした。
社会的・歴史的な意義は充分に理解しているつもりなのですが、純粋なイタリアンレストランとして捉えると、古臭くて時代遅れの割高なレストランに映ります。近場で同じ金額を払うのであれば六本木「ラ ブリアンツァ」のほうが圧倒的に上質であるし、もう1,000円上乗せすれば麻布十番「ラパルタメント ディ ナオキ」で次元の異なる最先端のイタリア料理を楽しむことができます。

まあこのあたりは思い出と闘っても勝てないので、日本におけるイタリア料理歴史博物館に訪れるような心構えで行きましょう。


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東京カレンダーの麻布十番特集に載っているお店は片っ端から行くようにしています。麻布十番ラヴァーの方は是非とも一家に一冊。Kindleだとスマホで読めるので便利です。