ポム・ダダン(pomme d'Adam)/丸の内

丸の内界隈のカフェかどこかで独りでいた際に、隣のテーブルの客が「ついに行きましたよ!丸の内ホテルのローストビーフ食べ放題!いやぁ、旨かったぁ!」と興奮しながら話していたので秒で予約。
丸の内ホテルのメインダイニング「ポム・ダダン(pomme d'Adam)」。発音が言語に忠実ですね。直訳すれば「アダムのリンゴ」ですが、どう転じたのか、最終的には「のどぼとけ」を意味するフランス語らしいです。

ぜんぜん関係ない話で恐縮ですが、昔、妙につっかかってくる自称料理上手の女がいて、彼女の前で私が「アーモンドパウダー」と発言した際、瞬で「それ!正式には!アーモンド・プードルだから!(ドヤ」と突っ込まれたことがあります。面倒なのでその場では言い返しませんでしたが、私は英語で言っただけで別段間違いではなく、むしろフランス語なら「プードル・ダマンド(poudre d'amand)」なんじゃないかなあと、未だに根に持っています。
閑話休題。スパークリングワインで乾杯。オーストラリアのスタンプです。ワインに罪は無いのですが、酒屋で1,000円を切るような泡をこのクラスのレストランで出すのはちょっとどうなのでしょうか。

「男が収入と元カノの話を始めたら要注意ね」本当に頭にきた、という顔で彼女は熱っぽく語る。
前菜。おせち料理のような色合いのテリーヌはニンジン・カリフラワー・エンドウマメ。悪くはないのですが、もっと素材の食感を残した料理のほうが私は好き。色合いもアガりません。
パンは普通のバゲットです。この後、ローストビーフ食べ放題祭りが控えているので1つに留めます。

「成り行きでヘンなジジイと食事することになったわけ。もうずっとお金の話をしてるの。持ってる会社が何億で売れただの、何千万の車に乗ってるだの。そんな自慢を私にして何になるってわけ?お金なんて体力みたいなものでしょ?一定量を超えれば使いみちなんてない」確かに彼女の発言は正鵠を射ており、お金はあるに越したことはないけれど、あんまりあっても仕方のないものでもある。
ホワイトアスパラガスのスープ。これは基本に忠実で美味しいですね。元気いっぱいの春の風味が感じられるベーシックな美味しさです。

「あたしがお金に興味ないってわかったら、次の話題は女。モデルと付き合ってただの、CAと付き合ってただの、あたしはモデルでもCAでもないんだから、そんなこと吹き込んで何をどうしたいのか意味不明」

恐らく彼は「オレはすげえイケてる男なのに、世の中の女はその魅力に気づいていない!不当な扱いを受けている!本当はもっとモテてもいいはずだ!」と考えており、そのモテた証拠として象徴的な事案を示しているつもりなのでしょう。インセルの典型である。
お目当てのローストビーフ食べ放題。最初に選択したソースは柚子ソース。肉からは水分が飛んでおり肉汁も乏しくジューシーさに欠けます。付け合わせのジャガイモやキノコは及第点。柚子ソースはさっぱりとした口当たりで私は好き。
続くソースはハラペーニョソース。ピリピリと辛味が強く、フランス料理店としては珍しい調味です。柚子ソースよりも水分含有量が少ないため、より肉のパサつきが気になりました。なお、おかわりからは付け合わせがナッシングなのでご注意を。

「その次は『オレってまだまだ若いでしょ?若くみられるんだよねえ』って若作りアピール。バカですわ。モノホンの若者は『オレってまだまだ若いでしょ?』なんて言うわけないでしょうが」彼女の語気が荒くなる。確かに年齢と健康の話を始める方は大体ご年配の方ですね。もちろん私も行く道ではあるので笑ってはいられない。
こちらはグレイビーソース。肉汁を中心に半日以上じっくりと煮込んで作成したものらしいのですが、どうにもボンヤリとした味わいで決め手に欠けます。この後、口直しに柚子ソースを食べ、都合4皿、ノーマネーでフィニッシュです。

「もう二度と関わりたくないと思ってさ。好きなタイプ聞かれたけど、全部逆の方向に答えといた。てゆうかあんた、食べすぎよ」最近こういったモテない金持ちの話をよく聞くなあ。やはり人生の醍醐味は金銭で測れない部分が大半。年収1億円の人が年収2億円になったところで、幸福度はさして変わらないものなのだ。
コーヒーも一般的な味わいでした。うーん、東京駅目の前という立地で、3,600円食べ放題という意味ではこんなもんでしょうか。もうちょっと主題のローストビーフが美味しくあって欲しかった。これならスーパーナニワヤのそれのほうが倍以上に旨く、安い。ローリーズとまでは言いませんが、きちんとしたホテルなんだから、せめてローストビーフ大野よりは美味しくあって欲しいところでした。


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