ラ ブラスリー(La Brasserie)/日比谷

仏検準2級の面接試験、無事合格しておりました。わーいわーい。さて次回は2級を受験しようと、身近なフランス語の達人にアドバイスを乞うことに。

訪れたのは帝国ホテルタワー棟地下レストラン街にあるフランス料理店。「ブラッスリー(brasserie)」とはフランス料理の業態のひとつであり、元々はドイツ系の人々向けのビアホールのようなレストランを指し、現代ではカフェ以上ビストロ未満という位置づけの飲食店です。
しかしながら当館は世界に誇る帝国ホテル。「ブラッスリー」を標榜しつつもランチで5,000円を超える高級店。外套はレセプションで恭しく預けられ、行きかうスタッフはホテルマンそのものの身のこなしであり、襟元にソムリエバッヂを備えた方が良く目に付く。
客層は年配客が多く、丸の内のようにビジネスパーソンらしきゲストはひとりも見かけませんでした。若いカップルがデートで訪れる店とは絶対に違うのご注意を。

前菜・スープ・メイン・デザート・コーヒーがつくランチコースを注文。5,800円に税サが付いて6千円を超えてきます。グラスシャンパーニュは2,000円を超え、2時間ビール飲み放題プランは3,800円でした。
前菜はウサギを用いたテリーヌ(?)。ウサギ肉は割と好きな食材ではあるのですが、この料理に関しては冷凍焼けというか何と言うか、独特の臭気と後味が感じられあまり好みではありませんでした。

さて、連れは純ジャパではあるものの、小中高と暁星学園でフランス語を学び、大学をフランス語受験で合格したという変わり種。物心ついたばかりの世間知らずの状態で、どうしてフランス語を第1外国語にしようって思ったの?勉強法に入る前にまずは素朴な疑問から。

「それにはまず、暁星学園という存在から説明しなければなりません」彼は小さく咳払いをし、静かに語り始めた。
パンはクルミのパン、ゴマのパン、バゲットなど。クルミやゴマなど中に何か入っている系のものが美味しかったです。

「暁星には軍隊的な規律、いや、カースト制度があるんです。クラス替えは全て成績に基づいて実施され、上位クラスの雲上人の優秀さと言ったらない」彼の声色は闇を見つめるに等しい。「そいつら全員、東大ですわ。大して勉強しているふうでもなく楽々と。今ではみーんな医者か弁護士か官僚。俺が奴らと同じ小学校だっただなんて、口が裂けても言えないっすよ」
スープはオマールのビスクを選択。これはもう、文句なしに美味しいですね。奇をてらわない真っ直ぐな調理であり、素材の風味が剥き出しとなっています。濃縮にして濃密。本日一番のお皿でした。

「上位クラスの連中は何故か運動神経も良くって。サッカーとかやらせるともう大活躍。俺なんか成績もスポーツも中くらいで嫌んなっちゃいますよ」なるほどここで暁星の代名詞とも言えるサッカーが出てくるのが面白い。ちなみに松木安太郎は暁星出身ですが、学業とサッカーの両立が難しくなり、途中で暁星を去ったそうです。
メインは「豚肩ロースのコンフィ・ブーランジェール風」。豚肉のコンフィの第一印象は悪くないのですが、先のウサギ肉のようにやはり冷凍焼けのようなニュアンスを感じてしまいます。調理は悪くないと思うので、素材が異なれば全く異なる料理に化けるでしょう。

「ブーランジェール風」とは「パン屋風」の意味であり、パン釜の余熱でのんびりと調理することをイメージした料理です。原型を留めないほどトロトロに詰まったジャガイモが実に美味であり、主役を食うほどの存在感です。

「小学校低学年の時分から、もうどうやったって勝てない奴らを知ってしまうんですよ。幼心に圧倒的な劣等感を植え付けられる。こいつらと正面から戦っちゃだめだって、小学校低学年で人生を悟りました」だからフランス語を選択したんですよ、彼は自嘲気味に笑う。
デザートはワゴンから好きなものをチョイスする方式であり、脊髄反射で「ぜんぶください」とお願いしました。これ1皿で1,000は超えるキロカロリー。とりわけ左奥のプリンが美味。昨今、様々な飲食店の自慢のサイドメニューで「○○のプリン!」的に推されていることが多いですが、当店のそれは黙っていても本物のプリンです。

コーヒーは淹れ置きではありますが、さすがのホテルクオリティ。食後にのんびりしていても、ザブザブおかわりを持ってきてくれるので心が満たされます。
外さないレストランでした。全体的に品がよくサービスも完璧であり、気軽な会食などにちょうど良いかもしれません。が、冒頭に述べたようにゲストを含めた雰囲気が重厚であり、料理も今風とはかけ離れているので、若者がお友達とランチしたりデートしたりするのは少し違う。加えてめちゃんこ高い。親戚など3世代が揃った会食などにちょうど良いかもしれません。

でも、よかったじゃん、おかげでフランス語できるようになったんだから。ゴーンの言ってることとかわかるんでしょ?すげえじゃん。私の天真爛漫な問いかけには何も答えず、彼は穴が開くほど私を見つめる。「まったく、相変わらずお花畑ですね。あんたが目指しているゴールはどこなんですか」彼は小さくため息をついた。

まあ、一緒に這い上がろうぜ。「負けたことがある」 ってのは、いつか大きな財産になると思うよ。


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