デンクシフロリ(DENKUSHIFLORI)/表参道

「フロリレージュ(Florilege)」と「傳」のシェフがタッグを組み、表参道に開業した「デンクシフロリ(DENKUSHIFLORI)」。こんな企画モノのレストランすぐに無くなるだろうと敬遠していたのですが、あれよあれよという間に評判を集め、ミシュラン1ツ星まで獲得してしまいました。
店内は厨房をぐるりと取り囲むコの字型カウンターで、2人でお邪魔するのがベスト、多くても角席を確保して3人までといったところでしょう。フロリレージュのインテリアコードをどことなく引き継いでおり今風の内装。地階ながら雰囲気は明るく、不思議とカジュアルな印象です。
アルコールのペアリングは6千円と安価。それでもシャンパーニュから始まり色んなお酒を出して頂き、気前よく注ぎ足しもしてくれるので、酒飲みはペアリング一択でしょう。

接客は抜群に良いですねえ。スーパースター的な女性のサービスが居て、ニコニコと親しみ易く接してくれる一方で、過度にウェットではないという絶妙な距離感。ここ数年で出逢ったサービスの方で最も印象に残りました。彼女に釣られてチーム全体の雰囲気も凄くいい。何ならバイトしたいぐらいです。
お品書きは食材名のみが記載された今風イノベーティブスタイル。まずは茶碗蒸しで、オクラとイクラをざぶざぶと流し込みます。どことなく感じる焼き茄子の風味が季節にぴったり。
ウナギのタルタル。ウナギをミンチ状で、しかも冷製で食べるのは初めてかもしれません。スープはウナギの骨から取ったおり香ばしく美味。底に敷かれたレンコン餅(?)も郷愁を誘う味わいです。
白レバーのムースに万願寺唐辛子のかき揚げ。白レバーのムースは一般的なビストロで出逢うそれと同等ですが、万願寺唐辛子をかき揚げにするという試みは面白い。リンゴの酸味も程よいお口直しです。
醤油の何かで蒸した(?)マコモダケ。香ばしい風味がマコモダケにしっかりと移り、酒が済む味覚です。マコモダケだけでなくたっぷりのお野菜も嬉しい。
メインは豚肉。ってあり?もうメイン?しかも量少なくない?味は悪くないのですが、突然終わった恋愛関係のように不意打ち感のある肉料理でした。
合わせて出されるカボチャの何かにバニラの風味。底には巨大な落花生が鎮座しており、ガシュガシュと食べごたえがあるのですが、先の豚肉の小ささと併せる意図が見えませんでした。
〆のお食事は鮎ごはん。思わず笑みがこぼれるプレゼンテーションなのですが、、、
実際に盛り付けられると、まあこんなもんです。美味しいのですが、突然の破局のダメージを引きずったままで、食に対する印象は下降線を辿っています。
デザートは濃厚なプリンに大福。プリンに添えられたソースが緑茶の風味で面白かった。
以上を食べ、ペアリングを付けて税サを含めてひとりあたり2万円。この立地のこの手のレストランとしては良心的な価格設定でしょう。企画モノのレストランだろうと斜に構えてお邪魔しましたが、覚悟していたよりも全然美味しいし、楽しい。「フロリレージュ(Florilege)」と「傳」とのコラボ作品という位置付けですが、良い意味でそれらを特に想起させることのない独立した個性を放つお店です。「串」料理を全く感じられなかったのはご愛敬。

表参道の話題の1ツ星で飲んで食べて2万円と予算は立てやすく、20代の男子も手が届く範囲。接客は素晴らしい。友達以上恋人未満な関係でのデートに最適です。

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「好きな料理のジャンルは?」と問われると、すぐさまフレンチと答えます。フレンチにも色々ありますが、私の好きな方向性は下記の通り。あなたがこれらの店が好きであれば、当ブログはあなたの店探しの一助となるでしょう。
日本フレンチ界の巨匠、井上シェフの哲学書。日本でのフレンチの歴史やフランスでの修行の大変さなど興味深いエピソードがたくさん。登場する料理に係る表現も秀逸。ヨダレが出てきます。フランス料理を愛する方、必読の書。

本格手打もり家 高松本店/高松市(香川)

高松空港から車で15分ほどの場所にある「本格手打もり家」。出演したテレビ番組は数知れず、食べログでは百名店に選出されています。駐車場がはお店の前に数台と、道路を渡って巨大な敷地に数十台。運転が苦手な方でもラクラク泊めることができます。
店内は座敷とテーブルで広々としているのですが、それでも人気のお店であるためピークタイムには待ち順列が生じます。我々は週末の13時過ぎにお邪魔し、満席ではあるもののタイミング良く並ばずに済みました。
香川のうどん屋はセルフ形式が多く注文に戸惑うことが多いですが、当店はファミレスのように席に着いたら注文を取りに来てくれるので初心者向け。こちらは看板メニューの「かき揚げおろしうどん(冷)」。900円です。
かき揚げのサイズが激しい。小さめのフリスビーを3枚重ねしたようなサイズ感です。具材は小エビに玉ねぎ、サツマイモ、カボチャなどなど。美味しいのですが、あまりに量が多いので途中から油でウっとしてきます。小サイズでも良かったかもしれません。
うどんはもちろん自家製の手打ち麺。ツヤがありカドが立ち、ブルンブルンとした弾力。ムギュムギュっと噛みしめると小麦の香りが口腔内に広がります。うーん、旨い。やはりうどんはコシが良く感じられる冷やで食べるに限ります。
こちらも人気の「特上天ざるうどん」。1,400円です。先のうどんはぶっかけでしたが、ざるで食べた方がうどんそのものの特長を掴みやすい気がしました。
天ぷらはエビが3本にカボチャ、大葉、サツマイモ、アスパラ。これだけの天ぷらを食べ、うどんも付いて1,400円とは東京では考えられない費用対効果です。それでも当店の価格設定は讃岐うどん屋としては高いほうらしく、何とも香川の民が羨ましい限りです。
いやあ、美味しかった。香川に到着して第一食目としての役割を十二分に果たしてくれました。他にも「カレーうどん」や「オリーブ牛肉うどん」なども気になるところ。近所に住んでいれば通い詰めて、全制覇したいところです。

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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。

炭火焼肉 久(きゅう)/秋田駅

秋田駅から歩いて5-6分の場所にある「炭火焼肉 久(きゅう)」。2019年にオープンしたばかりなのですが、拘り抜いた焼肉スタイルが耳目を集め、あっという間に食べログではブロンズメダルを獲得し、百名店への入選を果たしました。
我々は上記の情報を全く知らずグーグルマップで適当に見つけて予約ナシで訪れたのですが、土曜日のランチタイムであっても店内は予約でいっぱい。テラス席であれば案内可能とのことだったのでそれに応じると、何だ、君、一体、素晴らしい状況じゃないですか。
ランチセットにはソフトドリンクが1杯付いてきます。お冷もジャンジャン注いでくれ、あまり酒で儲けようという気は無いのかもしれません。なお、ディナータイムであればコースメニューにプラス3千円で飲み放題を付けることができるそうです。
ランチセットとは別にアラカルトで追加注文したキムチ。韓国人直伝の自家製のものであり、それほど辛くはなく、その代わりに深い旨味が支配的です。味は良いだけに、もう少し量が多いと尚うれしい。
こちらはランチセットに付随するサラダ。キャベツの千切りをチョレギ風のドレッシングで頂きます。
小鉢は茄子の煮びたしをキムチ風味にしたものでしょうか。普段お目にかかることのない、ありそうで無い料理です。
肉がやってきました。一番人気の「上久ランチ」の肉1人前であり、なんと2,300円です。先のサラダや小鉢、ライスやスープなどが付いてこの値段とはちょっと信じがたい。お肉は日替わりで、この日は鹿角ポーク(地元のブランド豚)に比内地鶏、秋田牛のハツにカイノミにカルビだったっけな。都心のふざけた焼肉屋であればこれ1皿で1万円は超えそうな質および量です。
火元は備長炭で、柔らかい熱でじっくりと火を通していきます。牛肉の美味しさは期待通りですが、豚肉や鶏肉までバリ旨い。タレも程よく甘くフルーティーで、何でも地元の老舗の酒屋から仕入れる醤油を用いているそうです。
お米は美郷町のあきたこまち。程よい弾力と粘りがあり、焼肉屋のライスとしては完璧な美味しさです。スタッフの方々のテーブルウォッチも丁寧で、「おかわりいかがですか?どうですか?」とテラス席まで何度も足を運んで下さいました。
こちらは「ハラミランチ」で3,300円。なるほど先の「上久ランチ」に比べると相対的に高価に映りますが、それは「上久ランチ」の値付けが異常に安いだけであり、これでも大そうお値打ちです。
「ハラミランチ」は卵黄と合わせてすき焼き風に頂きます。これはもう悪魔的な美味しさですね。あまりの旨さに随喜の涙を流してしまいます。
ランチセット2種類にキムチを付けて、合計で6,200円。ひとりあたり3千円強という奇跡の支払い金額でした。量もひとりあたり200グラム以上は食べてるんじゃないかなあ、しっかり食べて満腹じゃという食後感です。

これはもう、土曜の昼から予約でいっぱいというのも納得のお店です。「ろばたやき山ろく」を惹起させる高揚感。次回は夜に訪れて、ハチャメチャに注文しまくって飲み放題まで付けちゃおうっと。それでもひとり1万円かそこらで済んじゃうんだろうな。

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それほど焼肉は好きなジャンルではないのですが、行く機会は多いです。お気に入りのお店をご紹介。
寺門ジモン監督の焼肉映画。焼肉文化についてここまでシリアスに描けているのは監督の焼肉に対する並々ならぬ拘りに因るのでしょう。焼肉業界の有名店や有名人も沢山登場するので、焼肉通を標榜するのであれば必修科目の1本です。

アラフェルムドゥシンジロウ(A la ferme de Shinjiro)/尾張町(金沢)

近江町市場から歩いて5分ほどの場所にある「アラフェルムドゥシンジロウ(A la ferme de Shinjiro)」。大正期の町家を改修し、1階でワインを醸造、2階のフランス料理店でそのワインを提供するという面白い試みです。
2階のダイニングはテーブル席が4-5卓といったところでしょうか(写真は公式ウェブサイトより)。1卓だけ半個室的な空間があり、会食などに最適です。内装には格子やステンドグラスなどが取り入れられ、また、独特の色合いの壁がクールです。大きな車が目の前の道路を通るたびに建物全体が揺れるのはご愛敬。

澤部沢也シェフは石川県出身で能登島の漁師のせがれ。アルザスの3ツ星店や京都・神戸のレストランで経験を積み、自身のレストランを経営後、当レストラングループに合流したそうです。
ワインは泡と白を頂きましたが、いずれもブドウはデラウェアであり果実味が強い。何より同じ建物内で醸造しているというのがいいですね。値付けも安く1杯千円を切ります。
まずはカボチャの冷製スープ。自家農園の野菜をたっぷりと用いており、自然な甘さが胃袋に沁みます。
前菜盛り合わせが美しい。器のセンスの良さは勿論のこと、色とりどりの食材使いに心を奪われます。このセンスの良さは「慈華(itsuka)」の「運気の上がる前菜盛り合わせ」に勝るとも劣らない。味も当然に素晴らしく、取り分け牛スジ煮込みをパートフィロ(パリパリの薄皮)で包んだパイ的なものに心を奪われました。
メインディッシュはお魚を指定。帆立のムースをマダイで包んでギュっと丸めた面白い調理であり、食感が凝集していて肉のような歯ざわりです。中には黒米(?)が詰まっておりボーダレスな美味しさです。
デザートはハチミツのアイスに自家農園のメロン、ガトーショコラ。アイスとガトーショコラは王道に美味しいのですが、メロンが未だ熟してないというか何というか、思いのほかアッサリした味覚なのが残念。勝手にじゅくじゅくしたものを期待していたのですが、まあ、そういう品種なのかもしれません。
ハーブティーでフィニッシュ。ごちそうさまでした。

以上を食べ、グラスでワイン2杯飲んで支払金額はひとりあたり6-7千円といったところ。軽めのランチコースを指定したのでやや物足りない部分はありましたが、料理とそのプレゼンテーションの質の高さは間違いなく、皿数マックスなコースを注文すべきであったと心地よい後悔を感じます。次回は是非ともディナーに訪れたいと期待させてくれるランチでした。

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北陸新幹線開通前は秘境的な小京都として魅力があった金沢。開通後は客層が荒れだし、土日連休は東京のガチャガチャした人ばかりです。それは飲食店においても同様で、金曜日の夜から日曜日にかけての鮨屋など港区のちょづいた店と雰囲気は似てきています。きちんと食事を楽しみたい方は、連休を外して訪れましょう。
「大人絶景旅」と銘打ってはいますが、石川の名所をテンポ良くまとめています。グルメ情報も多くモデルルートの提案もあり、広告だらけのガイドブックとは一線を画す品質の高さです。

スタミナ串焼き 仲垣(なかがき)/目黒

目黒駅から徒歩数分の飲み屋街にある雑居ビル2階「スタミナ串焼き 仲垣(なかがき)」2022年秋で10周年を迎えた、目黒では屈指の人気を誇る焼きとん屋。店主自ら芝浦市場で仕入れた素材をその日のうちに仕込み、その日のうちに提供することが自慢です。
店内は焼き台を取り囲むカウンター席が10ほどにテーブル席が数卓(写真は食べログ公式ページより)。トータルでは40席ほどでしょうか、カウンター席が主力であるもののグループ客向けのテーブル席もあるようです。
ハイボールは500円かそこらですが殆どが氷で可飲部が少ない。私のような狭量な人間は瓶ビールなど容量がフェアな飲み物を注文すると良いでしょう。
お通しは茄子に万願寺唐辛子。おそらく300円ほど課金されてはいますが、きちんと手の込んだ料理で美味しい。
香草サラダ。パクチーがたっぷりで、独特の香りと苦味が食欲を掻き立てます。
ハツ刺がべらぼうに旨いですねえ。ゴマ油と塩でシンプルに味付けされているだけですが、とにかく素材そのものが新鮮で初々しい。「店主自ら芝浦市場で仕入れた素材をその日のうちに仕込み、その日のうちに提供する」というタイトルコールは伊達ではありません。
すもつ。コリコリとした歯ごたえのモツにバリっと酢がきいて実に爽快。臭みなどは一切なく、秒で食べ切ってしまいました。私は酢モツが好きなのだ。
焼きものに入ります。まずは「はつ」。大変フレッシュなブツであり、流れるように食べてしまいます。
厚揚げはバリっと攻めた火入れ。たっぷりの薬味が嬉しい。
「れば」。くどいようですが新鮮な内臓であり、シンプルなネギ塩での調味に良く合います。
しいたけは、まあ、普通のシイタケですね。「れば」「たん」「はつ」と同価格であることを鑑みると、その存在感は陰に隠れてしまいます。
鳥なんこつ。自身の脂で揚がっているようなスタイルであり、外皮がカリカリと香ばしい。いわゆる焼鳥屋のそれとは全く異なるスタイルです。
上がつ。こちらも歯ごたえ主体の部位であり、ビールがグビグビ進みます。
「たん」はザックリとした食感で食べ応えあり。いわゆる牛タン屋のそれに比べると、このポーションで220円とは大そうお値打ちに感じました。
以上を食べ、軽く飲んでお会計は5千円。焼きとん屋という意味ではやや高めの部類に入るかもしれませんが、そのクオリティの高さを考えれば妥当な価格設定でしょう。立地も良いのでお友達とワイワイ飲みに行くに最適。フリーでの入店も場面で可能ですが、人気店であるので予約して訪れるが吉。オススメです。

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目黒は焼鳥やトンカツ、カレーにラーメンと生活に密着した飲食店が多く、そのいずれのレベルも高い。地味ですが豊かな食生活が約束されている街です。
市や区など狭い範囲で深い情報を紹介する街ラブ本シリーズ。2015年の『目黒本』発売から約4年の年月を経て、最新版が登場!本誌は目黒に住んでいる人や働いている人に向けて、DEEPな目線で街を紹介するガイドブックです。