Installation Table ENSO L'asymetrie du calme(インスタレーションテーブル エンソ ラシンメトリー ドゥ カルム)/金沢

金沢の繁華街から少し入った住宅街に溶け込む「Installation Table ENSO L'asymetrie du calme(インスタレーションテーブル エンソ ラシンメトリー ドゥ カルム)」。私の知る限り最も長いレストラン名です。明治時代に建てられた洋裁学校をリノベーションしたそうで、良く言えばレトロ、悪く言えば洗濯物でも干していそうなアパートのような外観です。
一転、内装はめちゃくちゃカッコイイです。北欧サンセバスチャンあたりの今風レストランのような雰囲気であり、思わず覗き込みたくなるような位置にシェフの手元があります。
本日のお品書き。食材名だけを並べるレストランが一時期流行りましたが、絵で攻めてくるお店は初めてです。ありそうでない。土井誠シェフは日本料理からフレンチに転向した後、海外の様々なレストランで腕を磨いたそうな。
アミューズは蓮根もち。加賀蓮根を用いており、周りに細かく刻んだ大葉を纏わせカラリと揚げ、仕上げにウニをトッピング。おおー、これはナイスなアミューズですね。ほんわりと温かく、大地の味と海の幸を同時に感じることができます。
続いてトウモロコシのムース。コーティングはヨーグルトで作られた飴のようで、程よい酸味とカリっとした食感がすごくいい。私ちょっと楽しくなってきました。
アミューズ、続く。リエットを詰めてビーツの生地で巻いた大人のシガーロールに、ムール貝とビーツのボルシチ。凝ってるなあ。6,000円のランチコースでこんなに凝ったアミューズが3つも4つも出てくるのは敬服に値します。
「チキンスキン」とのことで、鳥皮せんべいにチョコレートとレバーのペースト、ならびにチョコレートと黒ニンニクのペーストを塗ります。カカオが多すぎてモッタリと脂っぽく感じます。アイデアは悪くないのですが、私の口には合いませんでした。
マスのマリネ。ソースは用意されているのですが、マスそのもののとマリネの調味の時点ですごく美味しい。酒粕ヨーグルトのソースは酸味がきいて面白い。キュウリのソースは青臭くて私はあまり好きじゃない。
ホタルイカと馬肉のタルタルでしょうか。馬肉の力強い味わいにホタルイカの旨味が折り重なりめちゃんこ美味しい。揚げた九条ネギの香りならびに塩漬けにした卵黄の風味も見事です。
細切りのジャガイモにゴボウのムースを詰め、トップにウナギを飾ります。創造性や独創性はもちろんのこと、きちんと美味しいのが素晴らしいですね。蒲焼一辺倒のウナギの世界に未来を見出しました。
太いアスパラ。地元の旬のものだそうで、ジューシーで甘味が強い。さりげなく配置されたハマグリも上手く、その出汁を用いたソースも上々です。
甘鯛のウロコ焼きにラタトゥイユを重ね、白エビのガレットでバランスを取ります。地元の食材が凝縮され、その上でシェフのクリエイションが発揮されたお料理です。
パンも自家製なのかなあ。密度の高い凝縮感のある味わいで美味しかった。
お肉料理はホロホロ鳥。あまり好きな食材ではないのですが、当店のこれは別格。たっぷりと身に水分を残し実にジューシー。皮と身の間のコッテリした部分の味覚なんてもう最高です。付け合わせのシメジやモモ肉のメンチカツ(?)も記憶に残る味わいでした。
デザートまでめちゃくちゃ凝っています。ベースはダックワーズ(アーモンド風味のメレンゲを使った焼き菓子)であり、その中に旬のベリーが百花繚乱。見て美味しい食べて美味しい。
お茶菓子もしっかり。マスカルポーネがたっぷりのったクレームブリュレはこれだけで主役のデザートを張れるレベルであるし、食用の菊を用いたタルトも面白い。最後の最後まで一切の手抜き無し。謳歌した。ごちそうさまでした。

コース料理に酒を3杯飲んで、お会計はひとりあたり1.2万円ほど。慈善事業かよ。ただ単にお値打ちというだけでなく、料理のひとつひとつが大変凝っており、しっかりと美味しいのが素晴らしい。東京のミーハーな客相手であれば平気で3~4万円は取れるクオリティです。加えて地元の食材を多用しているのも旅行者にとっては嬉しい限り。

北陸に来るといきおい日本料理や鮨に走りがちですが、なかなかどうして欧州系の料理も素晴らしいですね。次回の旅行からは積極的にフレンチやイタリアンを織り交ぜていきたいなと思わせてくれるお店でした。


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