Mētis(メティス)/六本木

2023年2月にオープンし、いきなり1ツ星を獲得した「Mētis(メティス)」。店名はギリシャ神話の知恵の女神を意味するそうです。場所は飯倉片町の交差点近くで、人気のタイ料理店「ジャスミンタイ」のお隣です。
入店してすぐ目に飛び込むのは薪の炎。「薪焼 銀座おのでら」に比べるとグっと距離が近く臨場感に溢れています(写真は公式ウェブサイトより)。鈴木昌嗣氏シェフはフランスの名だたるレストランで経験を積み、帰国後はグローバルダイニング入社。恵比寿「L'IGNIS (リグニス)」の立ち上げに携わったそうです。
ワインはペアリングでお願いしました。論理的に練られた組み合わせであり、シェフとソムリエのチームワークを感じさせます。
アミューズから凝っていて、層構造になったフォアグラに鰻をトッピングするなど意欲的な取り組みが光ります。それぞれそのままビッグサイズにすればきちんと料理として成立するであろう完成度の高さでした。
ホカホカのおまんじゅう。中にはフォアグラが詰まっており、熱でトロトロとした口当たりに溶けており美味。甘味を感じさせる生地とも相性補完する味覚です。
このお料理は、なんとタケノコ。鹿児島の早堀筍をコンソメで煮た上で衣を付けて揚げ、ヤリイカやセリ、パクチーをトッピングします。こちらは素晴らしいですねえ。こんなスタイルのタケノコ料理は初体験であり、しかもキッチリ美味しい。
金目鯛。一本釣りした極上物の個体であり、ジリジリとした脂にふっくらとした旨味が光ります。どこか出汁や日本酒を彷彿とさせる面もあり、日本料理のニュアンスが感じられました。
パンも自家製で、穀物そのものの風味がジットリと響きます。豆乳(?)を用いたクリームもリッチな味わいで美味しい。
メインはエゾジカをチョイス。パワフルな赤身の旨さど真ん中の味わいであり、肉喰ってるなあというプリミティブな快楽を呼び起こします。ソースもクラシック一直線で、これぞフランス料理のメインディッシュとも言うべきひと品です。
「お腹に余裕があれば」ということで、追加料金でリゾットをお出し頂けました。セイコガニの身も内子も外子も練り込まれており、カニの旨味が凝縮して爆発してオーバーキルの美味しさです。
お口直しはベルガモットの氷菓。サッパリとした味わいながらどこか濃密な気配を感じさせるひと品です。
デザートはミルクの風味がリッチな練乳アイスにピスタチオのアイス。いずれも素材に忠実な味わいで、率直に旨い。ちなみに近くのゲストがお願いしていたお祝いのケーキがとても美味しそうでした。
お茶菓子までも手抜き無し。バターの風味たっぷりのクイニーアマンが個人的にツボです。

以上のコース料理にアルコールのペアリング、リゾットとそれに合わせた酒を含めてひとりあたり3.5万円に着地しました。「薪焼 銀座おのでら」よりも全く安く済み、立地や料理の質の高さを考えると見事な費用対効果です。

素材感を大切にしつつもかなりややこしい料理で攻めてくるのも良いですね。しかもキッチリ美味しい。加えて私はお祝いのケーキがどうしても食べたいので、誰か祝って下さい。

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