薪焼 銀座おのでら/東銀座

東京はもちろん世界へ向けて多店舗・多業種展開し快進撃を続ける「ONODERA GROUP」。この日は薪焼とフランス料理という東京では珍しい組み合わせの「薪焼 銀座おのでら」へお邪魔します。ミシュラン1ツ星。それにしてもこのビルすげえな、おのでらばっかしやん。
小さなお店で、カウンター8席に個室がひとつのみ(写真は公式ウェブサイトより)。暗めの照明の奥にチラチラと揺らめく薪火。何とも言えない不思議な魅力のある演出です。太古より炎を囲んで皆でメシ食ってきたヒトの遺伝子に訴えかける引力を感じました。

寺田惠一シェフはイノ系でフランスで数年を過ごし、帰国後は「カンテサンス」で腕を磨いたのち「ティルプス」の厨房を預かるなど華々しい経歴。その後は「傳」や「ワカヌイ」など多様な業態で経験を積むなど、探求心に満ちた方なのでしょう。
おのでら系列の、しかも銀座ということで、ワインはどっちゃくそ高いですねえ。1万円台のワインは数えるほどしか置いていなく、ここまで高価格帯に振り切ったワインリストを見たのは「SUGALABO」以来かもしれません。
アミューズは海苔を組み込んだ塩気のあるワッフル。初っ端から焼きたてのアツアツで提供してくれるのが嬉しいですね。作り置きの冷めたグジェールを出す意識の低いフレンチレストランは見習って欲しいところです。
名刺代わりにと、いきなり肉が登場。赤身の綺麗な部位であり、何とも言えないエレガントな風味が印象的。それでも肉の噛み応えはしっかりとしており、おおー肉食べに来たなあという気分を盛り上げてくれます。
苺を用いたガスパチョにブッラータとキャビアですが、これはイマイチ。こねくり回しすぎであり、超別々に食べたい。ふだん薪火の直球勝負な料理が続くと、ややこしいことをやりたくなるものなのでしょうか。
こちらは白レバーを用いたひと品。中々に大振りなカットであり、濃密で滑らかな味覚に酔いしれます。南米系のピリ辛ソースも面白く、モダンなひと皿です。
パンは自家製で酵母から育てるという念の入れよう。多種多様な穀物がたっぷりと詰まっており、そのままプレーンで食べて充分に美味しい。これでサンドイッチ作りたいなあ。
能登のカリスマ山菜ハンターが採った山菜。上品な青い苦みが食欲を刺激します。軽く焦がしたタケノコの香りが素晴らしく、ハマグリのプリンとした口当たりも見逃せない美味しさです。
アワビは小ぶりなサイズ感ですが旨味は凝集されており、これほどワインが進むツマミは中々無いでしょう。モリーユ茸の濃厚な旨味も愛くるしい。
真打登場、和牛の薪焼です。これはもう、文句なしに美味しいですね。肉そのものの味はもちろん、薪焼の香りにシットリとした口当たり。そうそうこれこれ、今夜はこれを食べに来たのです。
肉料理、続く。こちらは鴨肉であり、皮目を思い切りよくバリっと焼いて好印象。ソースも濃厚で、キッチリとフランス料理しており、極めて上質なフレンチのメインディッシュと言えるでしょう。
〆のお食事はラーメン。この日の食事に登場した食材たちのエキスを抽出して創り上げたスープであり、ここまで完成度の高いスープに仕上げるには並大抵の作業ではありません。チャーシューもメインディッシュ級の分厚さを誇る金華豚であり、見た目は地味ですが記憶に残るラーメンでした。
デザートでも薪火は大活躍。まずはマシュマロ。郷愁を誘う甘い香りにトロリとした舌ざわり。
チーズケーキも薪焼でバスク風に。外皮は程よくカリカリとしており内部はシットリと濃厚。ごくごくシンプルな味覚ですが、どストレートに美味しいです。
その場で茶葉をローストしたほうじ茶で〆。ごちそうさまでした。以上のコース料理が3万円で、(このお店としては)手頃なワインをひとり1本ペースで飲み、税サを含めてひとりあたり6万円弱。覚悟はしていましたが、やっぱり高いですねえ。これはもう、誰がどうというよりも、会社としての方針なのだから仕方ありません。

そのぶん料理は申し分のない出来映えであり、およそ待たされたと瞬間は1秒も無く、客あしらいは上質で余裕があり、2回転目があるので出てってください的なイマドキの銀座の流行りのお店とは対極に位置する大らかな価値観です。

そういう意味では生活に余裕がありフランス料理に日常的に接している方にはお勧めできますが、フランス料理なんて年に一度の大勝負、みたいな方であれば、同じ予算を普通のグランメゾンに投じた方が満足度は高いでしょう。

フランス料理をある程度食べ込んだ人、例えば「薪焼きのフレンチ?La Tupina(ラ・トゥピナ)』みたいなお店ってこと?」とサラっと返せるくらい感じの悪い淑女とご一緒すると、当店を最大限楽しむことができるでしょう。

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「好きな料理のジャンルは?」と問われると、すぐさまフレンチと答えます。フレンチにも色々ありますが、私の好きな方向性は下記の通り。あなたがこれらの店が好きであれば、当ブログはあなたの店探しの一助となるでしょう。
日本フレンチ界の巨匠、井上シェフの哲学書。日本でのフレンチの歴史やフランスでの修行の大変さなど興味深いエピソードがたくさん。登場する料理に係る表現も秀逸。ヨダレが出てきます。フランス料理を愛する方、必読の書。