秋田 てんぷら みかわ/川反(秋田)

天ぷら業界のレジェンド「みかわ是山居」の初の暖簾分け店として開業した「秋田 てんぷら みかわ」。県内屈指の歓楽街「川反(かわばた)」エリアを抜けて静かになったあたりに位置します。
店内は小ざっぱりとした印象で、天ぷら屋特有の清潔感に満ちています。L字カウンターが7-8席に個室のお座敷も用意されています。客層は地元のオッチャン・オバチャンがちょっと贅沢してワイワイ楽しくやってる、そんな雰囲気です。

北嶋大地シェフは16歳から料理人としてのキャリアをスタートし、25歳で「みかわ是山居」の早乙女哲哉シェフに弟子入りした後、2015年に地元秋田でUターン開業しました。
日本酒は地元のものを中心に1合千円強といったところ。ワインもいくらか用意されておりいずれも良心的な価格設定です。
入店して直ぐに供されるギンナンとムカゴの素揚げ。シンプルなひと品ですが滋味あふれる味わいです。
こちらはアダにサザエ。アダというお魚の名前は初めて耳にしましたが、ウスメバルとも呼ばれるそうであり、程よく脂がのった優しい甘味が特長的です。
天ぷらに入ります。まずは車海老。王道中の王道といった味わいであり、一番バッターとしての役目を果たしてくれました。
先の海老の頭の部分。サクっとした食感に深みのある旨味。大人のスナック菓子です。
続いて海老を大葉で巻きます。大葉特有の清涼感が海老の風味に程よくフィットします。
キス。こちらも天ぷらにおけるエース級のタネであり、淡泊な味わいながら不思議と余韻の長い逸品です。
メゴチ。サクっとした歯ざわりに仄かな苦み。お酒が進む味覚です。
ムカゴ再登板。素朴な味わいで箸休め的な安心感があります。
アマダイ。日本料理やフランス料理ではウロコ焼きで食べることが殆どですが、なるほど天ぷらとして食べるのも乙な味。衣の中でフンワリと蒸されて優しい食感です。
ハイペースで日本酒を楽しんでいたからか「おつまみにどうぞ」と、名産のいぶりがっこをお出し頂けました。これは酒量が増加する仕組みです。
ホタテては身がパンパンに張っており、それでいて実に清らかな味わいです。外側から内側へと向かう火入れのグラデーションも楽しい。
レンコン。ザクっとした歯ざわりに続くニッチャリとした食感。レンコンでしか表現できない口当たりです。
まいたけ。程よく土っぽい味わいで、深みのあるひと品です。
フグ。このタネは美味しいですねえ。ギッチギチに身が詰まっておりマッチョな食感で、噛みしめる程に旨味が滲み出て来ます。フグってデブで淡白な印象が強かったのですが、こんなに筋肉質な方向性もあるのか。
秋田産の枝豆。お出汁で湯がいているのか仄かな旨味が感じられます。枝豆そのものの青い風味も美味しくって、まさに抓住夏天的尾巴といった味わいです。ちなみに「抓住夏天的尾巴」とは、最近中国語の勉強を始めた行天優莉奈が言ってた素敵な言葉です。
海苔をサっと揚げた後にドーンとウニをのっけます。濃密にして濃厚。問答無用の美味しさでした。
アナゴはひとりにつき1本づつ。こんがりと揚がったその様は、見ているだけで食欲を刺激します。ザックリとした食感と香ばしい衣の香り、優しい脂が感じられる身。これぞ天ぷらと、思わず目を閉じてしまう旨さです。
〆のお食事の前に少し追加。こちらはアカイカで、見た目の通り綺麗な味わい。先の穴子の存在感とは対照的な美味しさです。
シイタケに海老のミンチを詰め込んでこんがりと。シイタケの深みのある旨味と海老のアッパー系の旨味が意識し合い、酒の進む逸品です。
〆のお食事はかき揚げ丼。タネはホタテであり、先のホタテとはまた違った攻めた揚げポイントで、あげぽよな美味しさです。
食後はマンゴーシャーベットでクールダウン。ごちそうさまでした。

以上を食べ、そこそこ飲んでお会計はひとりあたり2万円弱。東京のちょづいた天ぷら屋の半額であり、信じがたい費用対効果です。ブラボー!

何より客層というか、お店全体の雰囲気が良いですね。冒頭記した通りゲストの殆どは地元民であり、みな楽し気に語らい合いながら美味しい美味しいと店主の腕前を堪能しています。都心のパパ活御用達の天ぷら屋とは別ジャンルとも言える食体験であり、ごちそうって本来こうだよなあと色々と考えさせられた一夜でした。

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天ぷらって本当に難しい調理ですよね。液体に具材を放り込んで水分を抜いていくという矛盾。料理の中で、最も技量が要求される料理だと思います。
てんぷら近藤の主人の技術を惜しみなく大公開。天ぷらは職人芸ではなくサイエンスだと唸ってしまうほど、理論的に記述された名著です。スペシャリテのさつまいもの天ぷらの揚げ方までしっかりと記述されています。季節ごとのタネも整理されており、家庭でも役立つでしょう。