みかわ是山居/門前仲町

親しくしているご夫婦にご招待頂きました。「天ぷら予約しましたよ!」とだけ事前にお伝え頂いており、家が門仲あたりだから、みかわだったら嬉しいなー、と念じていたら。
みかわでした。心の底からガッツポーズ!
赤ちゃん連れなので、個室です。大層立派で赴きもある。こりゃあ外人連れてくると喜ぶぞ。OpenTableにも対応しているし、世界と勝負できるお店です。
前もって並べられたお皿。鯛の子の塩気に食欲の火がつく。
500ミリリットルほどの大根おろしがデーンと置いてあり、ご自由にどうぞ形式。
天つゆに浸し、もうこれだけで立派なツマミだもんね。大将がいちいちうるさいよこ田とは打って変わって、器の大きい天ぷら屋である。
ど真昼間ですが、遠慮なく始めさせて頂きますデュフフ。
お約束のエビ。「天ぷらのトップバッターはエビ」という暗黙の了解があるため、どの天ぷら屋もとりわけ力を入れているネタであり、逆に言うとエビを食べればある程度のレベルは予測がつくのですね。中央部は半生で甘く仕上げてある一方で、ごま油の風味を際立たせる衣の香り。つまり美味しく、当店の調理技術はかなりのものである。
頭は身よりも強めに揚げており、サクサク感この上ない。味も濃く、
日本酒に行くしかありません。いやあ、日本は平和ですな。
キス。ぷっくりと膨れ上がったあどけない身がホクホクと舌の上で跳ね回る。
出色の一皿はイカ。エビと同様に絶妙な火の通り具合。イカの甘味とごま油の香りが渾然一体となって迫り来る。
思いがけずエビしんじょうのお椀。天ぷらのコースの途中に出てくるのは初めてかも。
ぎんなんとメゴチ。ほっこりとした歯ざわりに秋の味。メゴチは先ほどのキスと同じベクトルの揚げながら、旨味に凝縮感がありました。
主賓のアナゴ。OMG!降参です。これまでの揚げ方とは全く方向性が異なり、焦げるギリギリ一歩手前まで踏み込んだ作品。エビやイカなどの甘味を残した絶妙さとは意味の異なる絶妙さ。普通の職人じゃここまで思い切れないと思います。当然に香ばしく、あるいは軽やかで、これまでのアナゴの天ぷら観を覆す傑作。
見とれる程ごんぶとのアスパラがジュワリジュワリとジュースを湛える。むっちりとした歯ごたえのシイタケの旨味も申し分なし。満足じゃ。
お漬物たちでお口をチューニングしつつ、
〆のゴハンもの。ご夫妻は天茶。先ほどのお椀と同じで出汁であり素晴らしい出来とのこと。そう、天茶ってたまに本当にお茶の時があって、味がボヤけてしまうおそれがあるので、注文するのにビビってしまう。
したがって、私は天丼。むっはー、サイコロ大の小柱がこれでもかというぐらい入ってルンバ。そのどれもがほんのりと海の味を留めてある一方で、濃い目のタレが潔く振舞われる。文句をつけるとすれば、もう一杯食べたくなる点ですな。
しかも天丼には赤だしがつくのですね。タレに負けない頑丈な味噌とギネス級に大きいシジミ。大満足。
お豆さんで胃袋の空きスペースを満たし、ごちそうさまでした。

美味しかった。とりわけアナゴ。あの画期的な揚げ方。くどいようですが天ぷら観が変わると思います。たった一品で客に強烈な印象を与える妙技。水谷の煮アワビでノックアウトされたことを思い出しました。

今度は夜にカウンターでお邪魔してみたいと思います。


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天ぷらって本当に難しい調理ですよね。液体に具材を放り込んで水分を抜いていくという矛盾。料理の中で、最も技量が要求される料理だと思います。
てんぷら近藤の主人の技術を惜しみなく大公開。天ぷらは職人芸ではなくサイエンスだと唸ってしまうほど、理論的に記述された名著です。スペシャリテのさつまいもの天ぷらの揚げ方までしっかりと記述されています。季節ごとのタネも整理されており、家庭でも役立つでしょう。



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