奴寿司(やっこずし)/天草(熊本)

天草だけでなく全国にその名を轟かせる「奴寿司(やっこずし)」。ミシュランでは1ツ星、食べログでは百名店に選出されており、メディアで取り上げられること多数。ムッシュ山本益博が「日本の鮨ベスト3」に選出したのはあまりにも有名です。ちなみに熊本市の「むら上」は当店の御子息たちが開業した鮨屋です。
1974年創業と歴史あるお店なのですが、上手くリノベしており今風の内装です。カウンターは6-7席にテーブル席がいくつか、奥には個室もあり様々な用途に対応できそう。靴を脱いで上がるスタイルなので、ややこしい靴は避けてお邪魔しましょう。
私は運転があるのでノンアルコールビールを。連れは中ビンを注文したのですが、確か600円かそこらであり、費用対容量で言えば普通のビールのほうが割安な気がする。まこと世の中は不条理なものである。
我々はテーブル席にて「おまかせ」を注文。盛り込みを一度に全部持ってくるのではなく、3-4カンづつ複数回に分けてサーブして頂けます。
まずはクエ。前日の「鮓 たいと」のように深く熟成させてはおらず、フレッシュでコリッコリな食感です。
イカ。細かく包丁が入っており口当たりが良いです。ウニ風味のパウダー(塩?)が降りかかっており、イカの甘味との調和が面白かった。
イシダイはデップリと脂がのった個体を厚切りで頂きます。ムッシャムッシャと肉のような食べ応えであり、ガリガリと結晶の残った塩使いも思いきりが良いです。
ガリはまあ、普通のガリですね。薄切りで調味はやや強め。黒い立方体の容器にまとめて入れられテーブルに配置されているので、少々の回転寿司感は否めません。
コハダ。ドーンと白板昆布が乗っかっているのが特徴的ですが、その味わいの主張が強すぎる面があり、好みは分かれるところでしょう。
シマアジ。トッピングは柚子胡椒でしょうか。ピリっと刺激的な味覚でありチャレンジングな試みです。
キンメダイには青胡椒とワサビかなあ。先のシマアジと同様にかなり攻めた調味です。息子たちの店は割にクラシック寄りなのにオトンがどチャラい鮨なのが面白い。
赤出汁はごくごくベーシックなスタイル。ガリの仕様に通ずるものが感じられました。
ノドグロ。トッピングは玉ねぎ醤油であり、ノドグロの強い脂と玉ねぎの強い風味と二段構えの美味しさです。
トロ。ざっくりとした切り口で脂の甘味が強烈。ああ、やっぱマグロって高いけど旨いな、これなら仕方ないか、と思わせてくれる迫力がありました。
エビは生で頂きます。プリっとした歯ごたえに生エビ特有の甘味が響き、エビ好きにはたまらないひと時です。
カンパチは仄かに熱が入ってあり、また内部にガーリック風味の何かを内包しているので、カリフォルニアあたりのシーフード料理を楽しんでいるような錯覚をおぼえました。
デザートは和三盆のパンナコッタ。優しい甘味でホッコリとフィニッシュです。

以上を食べ、酒を除けばひとりあたり6,600円。ミシュラン1ツ星のにぎりを堪能してこの支払金額は実にお値打ち。かなりの老舗でありながら思いのほか創作的なにぎりが続くのが当店の面白いところでしょう。

また大将はカウンターのゲストに対してポリコレ的に一発レッドカードの発言を何発もかましてくるかなり突っ込んだ客あしらいなので、説明が難しい関係のカップルでの訪問は避けた方が良いかもしれません。息子たちの店とは全くスタイルの異なる鮨店でした。

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鮨は大好きなのですが、そんなに詳しくないです。居合い抜きのような真剣勝負のお店よりも、気楽でダラダラだべりながら酒を飲むようなお店を好みます。
この本は素晴らしいです。築地で働く方が著者であり、読んでるうちに寿司を食べたくなる魔力があります。鮮魚の旬や時々刻々と漁場が変わる産地についても地図入りでわかりやすい。Kindleとしてタブレットに忍ばせて鮨屋に行くのもいいですね。