らぁ麺 飯田商店/湯河原

令和のラーメンの聖地と言えば湯河原「らぁ麺 飯田商店」。もともとは行列整理券方式で「東京から始発で向かっても整理券切れ」という、とんでもない人気を誇るラーメン屋です。現在はOMAKASEからのみ予約を受け付けており、1時間全席総入れ替えという、映画や舞台のような存在になりました。
駐車場はたっぷりあり、入れ替え制でもあるため駐車場が埋まってしまうということはないでしょう。電車でも湯河原駅から徒歩10分ほどなので、遠くはあるが困難ではないという立地です。
ご覧の通り客単価は2千円を超えます。また「せっかく来たのだから」という感情も手伝って2杯食い(当店では「連食」と表現するらしい)する客も多い。入れ替え制であり、ある意味では一斉スタートなのですが、食べるのが遅そうな女子や連食組に優先して料理を提供しているように見えました。
カジュアルな割烹料理屋や鮨屋のような雰囲気の店内(写真は自分の料理のみOKと)。アクリルボードだらけで感染症対策もバッチリです。ラーメン屋としては驚くべき従業員の数であり、その誰もが割にテキパキと動いており、一体どれだけの仕事量なのでしょう。

飯田将太シェフはメディアにも良く出ているので、お顔をご存じの方も多いかもしれません。もともとは日本料理の料理人だったそうで、紆余曲折あり2010年に当店をオープン。心の師匠は「ラーメンの鬼」の異名で知られたムッシュ佐野実だそうです。
入店後10分ほどで着丼。ようやくお目にかかれた「わんたん入りしょうゆチャーシュー麺」です。最近の人気ラーメン店はドロドロしてたり山盛りだったりすることが多いですが、当店は凛とした様式美を一杯でありまことに美しい。

2種のチャーシューならびに2種のワンタンは、ラーメンのトッピングというよりも単体の料理として成立する美味しさ。また海苔もめちゃんこ旨かったんで、相当いいやつを使っているような気がします。
スープはこれでもかと澄んでおり清流のような味わい、と思いきや、意外にも醤油の風味がバーンと飛び出るパワフルな旨さです。麺は細く長くスルスルとした口当たりでありシルキーなタッチ。ちなみに当店は自家製麺であり、製麺室には石臼があってお店で挽いているそうな。1,980円と、ラーメンとしてはぶっ飛び価格ですが、質および量(けっこう多い)、接客の良さを考えれば妥当と言えるでしょう。
続いて「つけ麺」。醤油味か塩味を選択できるのですが、こちらは塩味です。1,800円と、ニューヨークのラーメン屋のような価格設定です。
麺は2種。日本蕎麦で言うところの更科タイプと田舎タイプの盛り合わせ。いずれもベクトルが全く異なる麺なので、異なるメニューを注文したような気分です。田舎タイプはかなりパンチが強いので、塩系スープではやや弱い。醤油味のほうが良かったかな。チャーシューは先と異なりブロックタイプで炙っており、ビールが欲しくなる香り高さです。
タイミングを見計らって追いチャーシューと追いスープがやって来ました。チャーシューは低温調理タイプなのかな。しっとした舌ざわりでスープに浸すと温度が同化し口当たりが実に良い。追いスープ(?)は昆布風味の強いトロミのあるタイプであり、スープに注ぐのではなく麺に直接かけて食べるという荒業。つけ汁とのコラボもあって、何段階にも味が変化していくのが面白い。
〆に「お出汁割り」。その場でキコキコとカツオを削り小鍋でサっと出汁を取るという贅沢な液体をつけ汁に注ぎます。この出汁がもう、「木山(きやま)」もかくやと思わせる風味高さであり、追加で200円を請求するという斬新なスタイルですが、その価値は十二分にあります。
ラーメン1杯2千円という火星の出来事のような価格設定ではありますが、質および量、接客の良さを考えれば納得の支払金額です。一方で、東京から往復4~5時間をかけて、半日をつぶしてコレだけのために訪れるのはちょっと違うかもしれません。スタンダードナンバーを突き詰めた味わいであり、まことに美味しいですが驚きは特になく(決してディスっているわけではない)、究翹望し神格化し過ぎるのは少し違うと思います。

当店でランチを摂り、食後に海や湖、美術館や日帰り温泉を楽しんだのち、ディナーに小田原でメシモ(MECIMO)を食べて帰る。そんな素敵な日帰り旅行の名脇役としてどうぞ。

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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。