熙怡(Kii)/四条(京都)

中書島の「センプリチェ(Semplice )」が京都のど真ん中に移転リニューアルオープン。
四条駅歩いてすぐそばであり、お隣にはインスタ映えるために生まれてきた丸いたい焼きが自慢の人気カフェ「あまいろ」があります。
カウンター6席のみの小さなお店。ご夫婦で営業されており、営業時間などは融通がきくそうです。西山哲平シェフは大学のイタリア語専攻ならびに留学がきっかけてイタリア料理の世界にのめり込むようになり、その後は料理人としてイタリアで腕を磨きました。
カンタンなドリンクメニューはありますが、お料理に合わせてワインや日本酒をグラスでお出し頂けます。量の調整などあらゆる面でフリーダムであり、これぞ個人経営の美点。価格設定も非常にリーズナブルであり、呑兵衛には堪らないお店です。
まずはトリガイ。和食店ならまだしも、イタリア料理店でこのクラスのトリガイが出てくるのは驚きです。発酵した野菜やお豆の付け合わせも興味深い。
餃子状態のパスタ。中にはたっぷりのウニが詰まっており、思わず笑みがこぼれます。スープ(?)には海藻が敷かれており磯の香りが漂う。パスタとスープが一体化した新機軸の料理です。
牡蠣。和食店ならまだしも、イタリア料理店でこのクラスの牡蠣が出てくるのは驚きです。しかもただデカいだけの大味、ということは決してなく、このボリュームであってもしっかりと凝縮感があり、ミルキーで白子のような滑らかさがあります。少しきかせたトマトの風味も魅力的。
ミニピザのトッピングはガスエビ。くわー、このガスエビの量は堪らないですね。ねっとしとした質感に奥行きのある甘味。まさに官能的という言葉が似合う1皿でした。
熟成豚をカダイフで巻きました。カダイフは海老を巻きがちなところであり、肉を巻いて食べるのは初めてかもしれません。ホワイトアスパラガスのエキスや木の芽の香りも相まって、どこか和食のメインディッシュのようなニュアンスが感じられました。
たっぷりのサラダ。野菜の種類が豊富で盛り付けが美しく、至急インスタに上げたい。野菜そのものの味も強く量もたっぷり。心と身体が洗われた気がします。
もずくのスープで内蔵を温め、フィニッシュへと向かいます。
メインディッシュは琵琶湖の大ウナギ。すごー、よくこんなん仕入れられるなあ。まさに琵琶湖の主といった逞しさであり、バリっと焼いて、エキスはジュワジュワ、身はフッカフカと記憶に残る味わいです。そっとゴハンが敷かれているのが日本人の心をくすぐります。
パスタは2種からのチョイスだったのですが、両方とも頂くことにしました。量も調整することができ、こうやって融通がきくお店って大好き。まずはイカとキュウリのパスタであり、〆のパスタでありながら清涼感すら感じられるクリアな味わいです。
こちらは豚肉とトマトがベースのコッテリ味。豚肉の脂の旨味がパスタに絡み実に美味しい。最近のイタリア料理店にありがちな、単に腹を膨らませるだけの炭水化物とは一線を画す味わいでした。
デザートはクランブルの食感が楽しい逸品。クリームの濃密な味わいと共にまったりと過ごせます。
お茶菓子もかなり凝っており、和紅茶と共に最後まで楽しめました。お会計は3.5万円。ただしこれはかなりの量を飲んだからであって、常識的な酒量に収めれば3万円を余裕で切ってくることでしょう。

無理くりカテゴライズすればイタリアンになるのでしょうが、実際はイタリア料理をベースとしたオリジナル料理。それも素材のパワーを最大限活かすことを目的とした芸風です。札幌「霜止出苗(シモヤミテナエイズル)」での食後感に似ているかも。グルメ仲間と共に、ワガママ言いたい放題に遊びに行くのが一番楽しそう。酒飲みと一緒にどうぞ。

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