たでの葉/外苑前

外苑前にある囲炉裏料理屋「たでの葉」。「海味(うみ)」「l'intemporel (ランタンポレル)」や「ラス(L'AS)」などあの辺りです。食べログは3.88と高得点(2020年5月)でトップ1000入りです。
店内は囲炉裏をぐるりと取り囲むカウンター席で12~13席ほどでしょうか。最初に予約をしたゲストの予約時間に合わせての一斉スタートとなるため、営業時間は日に拠ってまちまち。南麻布「いちかわ」のように常連の都合に合わせる仕組みでないのが嬉しい。
丁寧に入れられるエビスが700円と安い。日本酒は1,200円~、グラスワインも2,000円までと、料理代金に比べると控えめな価格設定です。

小鶴清史シェフはもともと中華料理人。上野毛「吉華」や麻布台「浅野」で経験を積んだ後、故郷熊本に思いを馳せ、鮎とジビエに焦点を当てたお店を志しました。
まずは山菜盛り合わせ。半分ぐらいは聞いたことのない植物であり、料理の道は奥が深い。さっぱりしたものからヘヴィ級の味付けのものまで幅が広く、思いのほか酒が進みました。
これは何かの魚(?)を用いた熱燗でしょうか。フグのヒレ酒のようにアミノ酸が強く、酒というよりもスープのような味わいです。
熊本のヤマメ。囲炉裏でジリジリと炙られていくのを眺めるのは郷愁を誘います。臭みが無くフレッシュで清澄な味わい。
ここからは山菜の天ぷら4連発。まずはハリギリの芽に、、、
タラの芽、
行者ニンニク、
ウドの新芽。いずれも興味深い味わいなのですが、どうも揚げの油がもったりしているというか、スカっと爽快に食べることができませんでした。
すっぽん炭火焼き。これは美味しいですねえ。まさにジャパニーズ・ジビエとも言うべき猛々しい味わいであり、ジュルジュルと骨までしゃぶりつくします。
イノシシなのですが、これは私の口には合いませんでした。肉というよりも脂を楽しむ料理であり、神田「丸山吉平」のリブロースを思い出す。唯一、花わさびの爽快感に救われた気がします。
尾長鴨は旨い。銃猟でなく網捕りの鴨肉であり、ヘンな臭味がなく赤い鉄の味わいがピュアに濃い。鴨を精錬したような味覚です。
メインはツキノワグマ。こちらもやはり脂を楽しむ料理であり、貴重な食材であることは承知しているのですが、事前情報が無く純粋に楽しめたかと問われると違うかもしれません。
ちなみにツキノワグマはロースとバラの部位をスッポンのスープを用いて鍋にしたのですが、そのスープを用いて食べるスイトンが滅法旨い。
〆のお食事は山菜ゴハン。悪くは無いのですが、高級ラインの和食店でウニやらイクラやらアナゴやらが連発されることに慣れていると、少し物足りなく感じてしまいます。
甘味はバニラアイス(だっけ?)に抹茶のクリーム(だっけ)。これは素直に美味しいですね。万人受けする直線的な味わい。
お抹茶で〆てごちそうさまでした。

酒を2~3杯飲んでお会計はひとりあたり2万円弱。うーん、ちょっと高いなあ。とは言えこのお店が暴利をむさぼっているかというとそうではなく、山菜や川魚、ジビエといったニッチな食材を主軸に置いているため規模の経済が働かず、結果としてその辺の和食店よりも割高に感じてしまうのでしょう。値段は店でなく市場が決めているのだ。
他方、企画としては面白くニッチでカテゴライズできない興味深いテーマでもあり、東京においては唯一無二の存在と言えるでしょう。今回はたまたま私の口には合わない料理が多かったですがそれは単に好みの問題であり、そもそものお店の主張は理解できるし賛成もします。中途半端な和食やイタリアンをやるよりは全然いい。店主やスタッフも感じが良い。特定の機会にはズバリ刺さるお店とも言えます。グルメなお友達とちょっと冒険したい夜にどうぞ。

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それほど焼鳥に詳しいつもりは無いのですが、私のコメントが掲載されています。食べログ3.5以上の選び抜かれた名店を選抜し、お店の料理人の考えを含めて上手に整理された一冊。