祇園にしかわ/祇園

祇園にある本格懐石料理「にしかわ」。ミシュラン2ツ星。八坂神社南鳥居前に広がる下河原町に位置し、まさに京都といった雰囲気。格子戸を開けて細い石畳を抜けるアプローチにテンアゲです。
個室のテーブル席をご案内頂けました。竹や檜などの木材をふんだんに使った数寄屋造りであり、2013年には「未在」などの名店を手掛けた建築家がリニューアルを行ったそうです。坪庭が良い。とても良い。
食前酒として柚子酒で開幕。酒というよりも柚子であり、柚子の爽やかな風味が食欲をそそります。西川正芳シェフは「祇園さゝ木」で腕を磨き、「わらびの里」の料理長などを経て独立開業。
飲み物メニューが怖い。色々と書かれてはいるのですが、価格は一切記されていません。ビールや日本酒ならまだしも、値段が書かれていないワインリストってどうなんでしょう。仕方がないので我々はビールのみを注文。ラストの支払金額から逆算するに、1本千円ぐらいだと思います。
紋甲イカとホタルイカの組み合わせ。紋甲イカが信じられないほど旨い。ネッチリとした歯触りに透き通るような甘味。足りない旨味はホタルイカが補填してくれ、イカ料理として頂点とも言うべき味覚でした。柚子と出汁のジュレも爽やかでマーベラス。
お椀はノドグロに蓮根餅。お出汁は八坂神社の「美人の水」を用いているそうであり、なるほどそう言われると繊細な味わいに感じてきます。個人的には蓮根餅がヒット。蓮根特有の力強い風味がもっちりむっちり美味しいです。
お造りはイサキ。弾力のある健康的な個体であり、まさにフレッシュな美味しさです。
こちらはカツオの藁焼き。香ばしいかおりが魅力的なのは当然として、塩昆布で塩気と旨味を添加しオリーブオイルで全体を取りまとめるセンスが心に残りました。
太刀魚。くるりんちょとまとめられていますが、そのへんの魚定食を超えるほどのかなりのポーションです。焼き目のバリっとした香りにホロホロと優しく崩れる食感。
八寸は鯖寿司が常識外れに美味しい。肉厚なサバをレア目に仕上げており、じゅぶじゅぶとたっぷりと脂を保持しながら、絶妙な塩加減でシャリを食わせてきます。これは傑作。同じ祇園では「いづう」の鯖寿司が有名ですが、専門店の質を軽々と超えてくる真の実力を感じました。
天竜川の稚鮎。皿からぴょんと跳ねてきそうな躍動感があり、頭や骨が感じられないほど柔らかい。これは日本酒が欲しくなる。
焚き合わせは生麩とナス、しめじ。お出汁をたっぷりと吸い上げたナスがジューシーで美味しい。生麩は一度揚げているのか、外皮のガリっとした食感と内部のもっちりとした味わいのグラデーションが良かったです。
〆のお食事はショウガごはん。滋賀県伊吹山の三合目で栽培される棚田米を、使うごとに店で精米しているそうで、その完璧な炊き加減と相まって瑞々しく美味しい。風味づけに軽くショウガを用いているだけなのですが、それでもこんなに美味しいのか。
デザートは黒糖のシャーベットに杏仁豆腐、キウイ、イチゴ。イチゴのサイズがやばたんまる。しかもキッチリ上品に美味しいのが凄いなあ。杏仁豆腐はハンペンのようにもっちりしっとりした食感で面白い。
お抹茶を頂いてごちそうさまでした。

お会計はひとりあたり1万円強という奇跡の費用対効果。どうやらお料理は8千円だそうで、それに酒と税サを加えてこの価格。東京の調子に乗った店であれば3倍は請求してきそうなクオリティです。こうなってくると、今の東京は何かが狂っていると言わざるを得ない。もう和食は京都だけにしようっと。

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