なる屋/烏丸(京都)

錦市場から堺町通を北に少し入ったところにある割烹「なる屋」。食べログ4.01(2020年5月)でブロンズメダル獲得、ミシュラン1ツ星と手堅い評価を誇ります。それにしても、京都の飲食店ってどうしてこう外観がカッコイイのでしょう。
店内はカウンター席のみ8席であり、ゆとりのある席間隔です。上嶋良太シェフは老舗「瓢亭」「和久傳」を経て、ニューヨークの精進料理店「kajitsu」で料理長として腕を振るい、帰国後の2014年に当店をオープン。お料理担当はおひとりながら、ビデオの早回しのように手際よく調理をこなします。
着席してサっと出される新茶。これが、旨い。ザキザキと心地よいタンニンが食欲を刺激し清涼感を演出します。さあ、今夜も食べるぞう。
アルコールはビールが800円、日本酒が1合1,000円~と良心的な価格設定。京都の日本酒は2種ほどであり、その他、有名どころを全国から集めているという印象です。
左がじゅんざい、右が毛ガニにオクラをたたいたもの。毛ガニの身の美味しさは当然として、カニの卵がたっぷりと入っているのが良かったです。
シュガートマトにたっぷりの山菜。酒粕(?)を練り込んだ生麩などなど。胡麻のペースト的なソースの風味が強く、これまた主張の強い山菜の味わいと相俟って美味しかった。
お刺身はカレイ。コチコチとした歯ごたえにじっとりとした旨味が特徴的。イエベのお花はキュウリであり、そのまんま全部頂けます。
生のアナゴの表面をサっと炙って頂きます。ほえー、穴子といえば鮨屋の煮穴子蒸し穴子一辺倒ですが、こんな食べ方もあるのですね。量としても大したものですが、質としても文句なく素晴らしい1皿でした。
お椀のお魚は何だっけな。スライスされたホワイトアスパラとオクラと共に食べ応えのある1杯です。
鮎の唐揚げ。揚げ油の中でさえピチピチと跳ねる元気な個体であり、残酷な美味しさがここにあります。花山椒たっぷりのお酢でサラっと頂きました。
焼魚はビワマス。琵琶湖にのみ生息する固有亜種だそうで、赤々とした色合いからは考えられないほどの清澄な味わい。かなりのポーションでしたがアッサリと頂けました。
トウモロコシのすり流し。ザラりと舌触りの残る液状化現象は、地獄のように冷たく恋のように甘い。そうそう、こういう料理はこのタイミングで食べたいですよね。冒頭にトウモロコシやらカボチャやら爆発的に甘いスープを持ってくる欧米系のレストランは何を考えているのやら。
炭火でじっくりと焼いた牛肉。脂の量はそこそこで赤身の旨さがしっかりと伝わる個体です。裏側にある新レンコンもクリアで美味。それにしてもこのお店、割と気前よく花山椒使ってて色々すごいと思います。
お食事はマナガツオの炊き込みご飯。2人用のお鍋に大サイズの切り身を3つも投入しており、最初から最後までかなり魚を食べたなという印象です。
甘味に百合根と空豆のきんとん。これは面白い。甘く煮た生姜や柑橘の皮なども魅力的なお口直しです。
最後のデザートはきな粉と卵の2種のプリンに宮崎産のマンゴー。マンゴーの美味しさはもとより、プリンの濃密さが良いですね。量もたっぷりで、100%お腹いっぱいになりました。
抹茶で〆てごちそうさまでした。

ひと通りを食べ軽く飲んでお会計はひとりあたり2万円強。おー、これはナイスな費用対効果です。料理は全てテンポ良く出て来るし、何より量も質も高い。東京のアホな和食店であれば余裕で倍以上は請求して来そうな食後感がありました。もう決めた。和食は京都でしか食べない。

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黒木純さんの著作。「そんなのつくれねーよ」と突っ込みたくなる奇をてらったレシピ本とは異なり、家庭で食べる、誰でも知っている「おかず」に集中特化した読み応えのある本です。トウモロコシご飯の造り方も惜しみなく公開中。彼がここにまで至るストーリーが描かれたエッセイも魅力的。