蒼(あお)/西麻布

六本木から西麻布方面へ。六本木通り沿いの螺旋階段のあるビル2階にあるイノベーティブ系レストラン「蒼(あお)」。2020年1月にオープンしたばかりなのですが、既に予約が取れない系のお店であり、食べログでは4.18を記録しています(2020年5月)。
カウンター8席の一斉スタート形式。席の間隔は狭く、普通に隣の客とヒジがぶつかるほどの密。峯村康資シェフはフランス料理出身とのことですが、ぐぐってもあんまり情報が出てきませんでした。麻布台「T3」にいたとの噂もあるのですが確かではありません。
フルペアリング400mlで18,000円、ハーフペアリング260mlで12,000円とヘンに高いです。他方、ビールは800円とそんなでもなく、ボトルワインも選べばそう悪くありません。我々はシャンパーニュをボトルで頂くことにしました。
まずは真鯛のコンソメ。広尾「長谷川稔」での悪夢が蘇りましたが、当店のこの皿のほうが全然美味しい。ただし気合いの入った和食店のお椀と比べるとどうなのという気持ちは残ります。
イサキの皮目はバリっと、身は半生の状態で。ポーションもしっかりあって食べ応えがあり〼。
2種のウニを食べ比べるパスタ。美味しいのですが、これは料理というよりも材料である。個人的にはウニの奥底にあるハマグリ出汁をたっぷり吸ったパスタのほうが心に残りました。
炭火で炙ったアカザエビ。これこそ料理というよりも材料ですが、悔しいが旨い。炭火の香り、火の通り加減、身の甘さ。どれを取っても完璧でした。
こちらはそのビスク。おおー、これこれ、こういうものこそ料理です。濃厚ではあるものの繊細な風味が感じられ、恵比寿「龍天門(リュウテンモン)」の担々麺を惹起させる口当たりです。
シェフは金属由来の雑味が苦手なようで、調理器具や食器からそのような材質のものを排除しているとのこと。その雑味を体験するためにステンレスで淹れたお茶と陶器で淹れたお茶の飲み比べするのですが、正直違いがわからんかった。
ホワイトアスパラガスと黒アワビ。あくまでメインはホワイトアスパラガスとのことですが、ついついアワビの大きさに目が行ってしまいます。なのですが、トータルではアスパラに肝のソースを漬けた瞬間が最も美味しく感じました。アワビのサイズ感は魅力的なのですが、どうにも大味に感じてしまいます。
長期肥育した希少な黒豚とのことですが、私には脂が強すぎてウっとなりました。神田「丸山吉平(まるやまきっぺい)」の豚肉料理を思い出す。他方、ソースはよだれ鶏的なピリ辛コク強め系調味でベリーグッド。
新玉葱のムースは実にタマネギの甘味が特濃。ちょっと濃すぎて食べ疲れるきらいがあります。茶色く染めればアラレちゃんに出てきそうな造形であるのもちょっとアレだったかもしれません。
お魚料理は地金目をバリっと炙ります。付け合わせ(?)のアスパラが地味にめちゃんこ美味しく主役を喰ってしまっているかも。全体を取りまとめるアオサのソースも素敵です。
無花果と甘夏のグラニテ。赤ワインで煮たりしているのか、かなり凝ったグラニテであり、グラニテとして非常にレベルが高かった。
メインはヴュルゴー家のシャラン鴨。誰だイノベーティブ・フュージョン系って言った奴。めっちゃくちゃど真ん中のフランス料理じゃないか。質実剛健な調理であり、このまま「北島亭」に出せるほど真っすぐな料理でした。
〆のお食事が出るのが面白い。フランス産のキノコに出汁を用いたひすいごはん。先の豚肉料理で用いたタレをブワっとかけるのが心憎い演出です。
デザート1皿目はシンプルなヴァニラアイスクリーム。しかしながらバニラの風味にパンチがあり、乳のコクも強く大変美味。樽で買って持って帰りたいぐらいです。
パプリカのムース(?)に種々のベリー。サッパリと濃厚が同居し、大地を感じる味覚です。
お茶菓子も素晴らしい。何の変哲もないシュークリームなのですが、詰められたクリームが非冷蔵の作り立て(?)らしく、全体を通じて一番印象に残った味わいかもしれません。

今回のお会計はひとりあたり4万円。ふつうのペアリングにすればひとりあたり5万円を超えるでしょう。うーん、これはちょっと高いなあ。用いている食材の質やポーションを考えれば決して高くないのですが(料理だけなら寧ろ割安)、ヘンにおちゃらけた雰囲気と居酒屋みたいなコスチュームが災いして、支払金額の割にピリっとしない食事でした。デートで使うにはロマンティックじゃないし、友達同士で行く価格帯じゃないし、接待って雰囲気でもないし、、、用途が見えない方向性でした。

ところで、オープン当初に行かれた方の口コミと最近行かれたゲスト(私含む)の口コミを比較すると、費用対効果に天地の差があるので(特にワイン)、オープン当初の口コミはあくまで参考記録として接しましょう。

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