COPPIE(コピエ)/高辻猪熊(京都)

2021年夏にオープンした「COPPIE(コピエ)」。高辻猪熊という観光客にとってあまり縁のない住宅街に位置するのですが地元客で連日の大盛況であり、ミシュランではビブグルマンを獲得しています。
店内は大きなL字型カウンターが中心で、入り口近くに詰めれば10人近く座れそうな大きなテーブルがひとつ。店名はイタリア語で「カップル」という意味であり、スタッフは何と2組のカップルだけでまわしているとのこと。シェフひとりサービス3人という布陣であり、シェフひとりだけ地獄のような忙しさで少し気の毒です。
ドリンクメニューは大まかにしか記されていないので、ソムリエールと相談しながら決めましょう。日本酒も取り揃えられているのですがとりあえず置いているという印象であり、説明の熱量からワイン推しの店に感じました。

また、料理はアラカルトでの注文が基本路線であり、人数の多寡によってポーションを変えるため、それぞれの料理についての金額の記載はありません。そう、当店は完全に割烹料理店のシステムを導入しており、「二条有恒(にじょうありつね)」の無国籍版と捉えましょう。
「おつきだし」として聖護院かぶらのすりながし。滋味あふれる味わいに仄かにスパイス(?)が香ります。もち麦(?)のクンニャリとした食感も心地よい。
サラダはクレソンを軽く炙った上、ミョウガとお味噌(?)と和えて混ぜたもの。ほどよく酸味が感じられ面白い味覚です。
レバーパテ。こちらはスタンダードな味わいであり、その他の無国籍調の創作料理に比べると典型的な味わいです。
焼トリッパ。いわゆるトリッパ料理の再構築であり、やはり軽く炙って玉ねぎと共に合わせた前衛的なひと品です。調味料にひしおを用いているのか、どこか発酵のニュアンスを感じました。
スープとしてゴボウのすり流しを注文したつもりが、カニクリームコロッケみたいな物体がやって来ました。ベースの液体こそゴボウのすり流しですが、たっぷりとチーズを用いており、またゴボウのシャクシャクとした食感も感じられ、飲むと言うよりも食べると呼ぶに相応しいスープです。コロッケみたいなんはショートパスタとカニの肉を携えたクリームが詰まっており、誰もが愛する味覚です。
メインはエゾジカをチョイス。まさに焼いただけの素朴な料理ですが、これが、旨い。牛肉では表現できないエレガントな赤身の旨味に舌鼓。添えられた奈良漬けを用いたソースもオシャレです。
以上を食べ、軽く飲んでお会計は1万円ほど。手頃なワインを片手に決して押しつけがましくない創作的な料理を楽しんでこの価格はリーズナブルでしょう。アラカルト注文で自由度が高く、近所にあったら通い詰めてしまうだろうなという親しみやすさがあります。

店構えや発酵食品を多用する点、シェフのタトゥーなどから「LURRA°(ルーラ)」を想起する方もいるかもしれませんが向かっている方向はまるで異なり、当店はあくまでも日常に溶け込むことを優先しているように感じました。

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