タカヤマ(TAKAYAMA)/四条河原町(京都)

四条河原町のグルメビル「GOOD NATURE STATION」の「プレミアム・ガストロノミーフロア」に入居する「タカヤマ(TAKAYAMA)」。コロナ直前に開業したばかりの新しいお店ですが、早速ミシュラン1ツ星を獲得。
店内は真っ白。キッチンをぐるりと取り囲む12席のカウンターは舞台のようであり、虎ノ門「unis(ユニ)」の誂えに似ています(ユニのほうが後発だけど)。こういったどチャラい内装のレストランは虚仮威しであることが殆どなので瞬で警戒したのですが、おや、料理人たちは緻密に黙々と仕事に取り組んでおり、ちょづいた所は1ミリもありません。

高山忠司シェフは広島県出身。イタリア料理店や魚市場で経験を積み、イタリアで6年間腕を磨いたのち帰国・開業。理科大卒のメーカー勤務の設計者のように仕事に実直な姿勢が印象的です。
食前酒としてシャンパーニュが供され、コチラはコース料金に含まれています。続いてフルのアルコールペアリングをお願いするのですが15,400円という値付けであり、お料理2.2万円の内容に比べると割高に感じました。2人で3万円超であれば自分でボトルを選んだほうが良かったかなというお気持ちです。もちろん気前良くドンドン注ぎ足ししてくれるので、量を飲める方には良いかもしれません。
ひと品目は「洋梨ジュース」とのことで、ホワイトチョコレートにジュースが閉じ込められているのですが、その表面にQRコードが転写されており、それを読み込むとインスタ経由でこの日のメニューが表示されるという仕組みです。ちなみに私の連れはその過激な言動からインスタを垢BANされており確認できずじまいだったのが可笑しかった。トランプもきっとダメなんだろな。
宝石箱から現れたのは宮崎産のキャビア。「高千穂旅館 神仙」でも宮崎産のものが出て来ましたが、同じ生産者なのかしら。
「高山餅」は中にフォアグラと柿が詰まっており、オカズ系のお餅です。サイズも中々のものであり食べ応えがある。
ピッツァにはトリュフが散らされており良い香り。先のお餅に続いてかなり腹に溜まります。
続いて前菜5点盛り。なんとこれまでの料理はアミューズという位置づけとのことで、今夜はロングラン公演となりそうです。お皿がいっぱい並んで古宇利島「6 (six、シス)」みたいに楽しい。
パニーノにはクエのフライが挟まっており、超高級フィレオフィッシュ状態。高品質なタルタルソースと共に、エレガントにしてジャンクな味わいです。
カルパッチョなのですが10種近くの旬の魚が取りそろえられており、そのへんの日本料理店のお造りなど相手にならないほどのレベルの高さです。
プロシュートは生ハムと共に。薄切りで空気を感じるタッチであり、生ハムの塩気とメロンの甘味が溶け合います。
甘海老。こちらも並の鮨屋では到底太刀打ちできないほどのクオリティであり婀娜っぽい味わい。トマトの形をしたチップはトマト風味で笑みがこぼれるアクセント。
牡蠣のフリットはシンプルな調理なのですが、牡蠣がドッシリと重く凝縮感があり、見た目以上に重厚な味わいです。
菊芋のエスプーマ(ふわふわスープ)。菊芋の大地を感じる美味しさはもちろんのこと、パルミジャーノのアイスクリームが良いですね。グアンチャーレ(頬の生ハム)の塩気と旨味も手伝って、センスの良いひと品でした。
ミネストローネ。一般的なミネストローネとは似ても似つかないプレゼンテーションであり、なんとこの1皿に23種もの野菜が詰まっているそうです。味わいも健康的で、もはや別の食べ物として捉えた方が良さそうです。
パンは米粉と全粒粉のブレンド。やや酸味のきいた味わいであり、水分量が多いのかジューシーな印象を受けました。
アクアパッツァはアマダイ。やはり一般的なアクアパッツァとは似ても似つかないプレゼンテーションであり、お出汁もきいて日本料理に近い方向性を感じました。
ペッシェ・アッラ・ブラーチェはハマダイ。いわゆる焼魚ですが、絵に描いたようなひと皿であり、それでいてきちんと美味しい。日本料理の焼き物は地味地味な盛り付けであることが殆どですが、こういったアプローチのお店があっても面白いかもしれません。
メインは滋賀の名店サカエヤより。鹿児島県産の経産牛のサーロインであり、噛みしめるほどに旨味が滲み出る味わい深い逸品。脂たっぷりのグラドルのような肉も良いですが、円熟味の増した渋い味覚の牛肉も乙な味。
パスタはタリオリーニでシンプルに。目前で白トリュフをシュシュシュと削ってくれるのですが、税サ込22,000円のコース料理のひと品とは思えない気前の良さです。
リゾットはセコガニで。これはもう、リゾットというよりも実質カニであり、スプーンよりも箸と日本酒が似合います。
デザートに入ります。まずは1皿目、なのですが結局5種類もの小皿が登場。すげえなカウンター12席の店(しかもこの日は満席ではない)で1回転なのにこの仕事量。普通に尊敬する。
続いて和三盆のミルクアイスに柿をのせ、頭からたっぷりとアーモンドミルクの泡泡を吹きつけます。和三盆の品の良い甘さが心地よく、見た目以上に軽やかな食べ口です。
お茶菓子も全力でやってきました。繰り返しにはなりますが、客席数からは考えられないほどのラインナップであり、またイタリアンのデザートとしては考えられないほどの美しさ・美味しさです。
ちなみに今夜は私のお誕生日のお祝いでした。お花のセンスが抜群ですな。
台湾のお茶で〆。ごちそうさまでした。

前述の通りお食事だけだと2.2万円と実にお値打ち。従業員の数も多く、「水でいいです」みたいな人に来られると全然儲からない気がします。ワインペアリングは食事に比べて割高と記しましたが、これはお料理の価格設定が特殊なだけであり、食事とワインを合わせてひとりあたり4万円弱という支払金額でようやく妥当といったところでしょう。

シェフの経歴や店の成り立ちから神保町「アルテレーゴ(ALTER EGO)」を想起させますが、料理の内容は似て非なるもの。一見派手派手で今風ではありますが、どの皿もきちんと美味しい。量も多い。お腹を空かせて行きましょう。

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