unis(ユニ)/虎ノ門

「SUGALABO」出身の薬師神陸シェフが虎ノ門に開業した話題のフレンチ「unis(ユニ)」。昔は「ピルエット」があったところだっけなあ、この場所は。看板などは特になく、真鍮(5円玉の素材ね)のバーがついた黒いドアが当店の入り口です。
入ってすぐはウェイティングルーム。一斉スタートの店なので全ゲストが揃うまでここで待つのですが、もちろん遅刻する輩もおり、結果として全員が待たされます。何このダメな打ち合わせ感。遅刻者なんて放っておいてさっさと始めてしまえばいいのに。遅刻者もそのほうが気が楽でしょう。
弧を描いた鉄板焼きカウンター席が8席。空間演出はライゾマティクスが手掛けており、プロジェクターから投影される映像やチカチカする照明、謎めいたBGMなどが特徴的。なのですが、当店は「お客様の大切なハレの日を演出」「お祝いをコンセプトとしている」を標榜していたはずであり、この、あまりゲストと密に会話がし辛い雰囲気とは矛盾しているような気がしました。全席貸し切りで「ウェーイ!まっちゃんおめでとー!」みたいなノリなら丁度良いかもしれません。
酒の値付けは恐ろしく高く、酒屋の4~5倍は当たり前の世界です。これは何かの陰謀かと勘繰るほど本当に高い。加えてノルマが厳しいのかソムリエからの押し売りが峻烈で、まだボトルを開けて1杯しか飲んでいないのに他の飲み物を追加で進めてくる有様。意味がわからない。非常に強い商業主義的な何かを感じました。何か私さっきから文句ばっか言ってますねスミマセン。
まずはフラン。ミモレット主体のコクのあるベースに空豆の青い味わいをトッピング。粒々のツブ貝が食感に変化を与えて良かったです。
タルトにはウニとポワロ葱。どことなく和食のような味わいが印象的。ラルド(背脂の生ハム)やショウガの風味が面白いアクセント。
特大のホタテを天ぷらに。わおー、このホタテは桁違いに美味しいですねえ。ザックリとしたフルスイングの食感にトロリと甘い貝の味。本日一番のお皿です。
タマネギのヴルーテ(すり流し)にキャビア。見ての通りの味わいですが、キャビアを用いる必然性は感じられませんでした。普通に玉ねぎだけで美味しいのに勿体ない。
ブリオッシュは見た目はコッテリとしているのですが、思いのほか軽い仕上がりで食事を邪魔しない味覚です。
代表作の「ブーケサラダ」。たっぷりのハーブや山菜、食用花を花束に見立てた上で特大のホッキ貝をトッピング。やはり貝が旨い。凝縮感のある海の幸に爽やかな苦みが寄り添います。
お魚料理はアマダイ。でっぷりの身の厚い極上品。紅茶で蒸したりパプリカのソースを流し込んだりとややこしい味付けですが、この素材であればそのまま塩焼きで食べたかった。
メインは山形の和牛。真っ赤っ赤でクリアな部位であり、肉の味わいがストレートに伝わります。サラっとしたタケノコや花山椒もピッタリな付け合わせであり、見事なメインディッシュでした。
お腹に余裕があればということで、焼きトマトのリゾットも。サラっとした口当たりでチキンライスのような味わいです。
デザート1皿目はマスカルポーネに文旦。素材に忠実な味わいであり、ゴージャスな口直しといった装いです。
メインのデザートは「とちおとめ」が主軸。ローズヒップの香りと共に、思いのほかアッサリとしたフィニッシュでした。
小菓子とハーブティーで〆てごちそうさまでした。
以上を食べ、安いシャンパーニュ(それでも3万円だけど)をふたりで1本飲んで、お会計は10万円を超えました。ぐおー、これはちょっと高杉晋作。来月のバイトのシフト増やさなあかんわ。

ひと言で述べれば「高くて美味しい81(エイティワン)」。まずはコンセプトありきであり、家賃と減価償却費と人件費の味が濃い。非常に濃い。1万円が100円ぐらいの感覚の趣味人ならまた印象は違うかもしれませんが、私のように納得がいかないコストにはビタ一文払いたくない吝嗇化にとってはかなり厳しい環境です。
誤解の無いよう申し添えておくと、シェフをはじめとする現場のスタッフに落ち度は全くなく、むしろかなり良くやっている方だと思います。しかしながらこの商業主義的制約のもとでは、例えどのような凄腕が厨房を預かったとしても、結果は恐らく同じところに着地することでしょう。会議室で企画が採用された時点で勝負アリ。あくまでオゴリで連れて行ってもらう店として、自己負担額0円の場合にどうぞ。

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