IL CASINO(イル カジーノ)/通町筋(熊本)

熊本市役所の裏手にある雑居ビル1階にある「IL CASINO(イル カジーノ)」。熊本きっての人気イタリアンであり、ミシュランでは1ツ星を獲得。食べログでは百名店に選出されており、現在は博多へ姉妹店も出店しています。
カウンター8席のみの小さな店内。ややもするとスナックやラーメン屋のような誂えであり、よくこんなに狭い厨房でややこしい料理を作れるなあと感服します。
酒のラインナップはイマイチ。最初の一杯はビールかクレマンだけであり、ボトルの泡も同じもの一択。ワインリストは無く、かといってお願いしたワインペアリングがピッタリ来るかと言われるとそうでもなく、私の口には合いませんでした。ただし値付けは悪くなかったので、後は好みの問題なのかもしれません。
前菜でびっくり。なんと水牛乳を用いて当店で手作りでモッツァレラチーズを造っているそうです。もちろん熊本で造っているのでモッツァレッラ・ディ・ブーファラ・カンパーナとは言えないかもしれませんが、下手な輸入物よりも余程クオリティが高く、度肝を抜く美味しさでした。パルマの生ハムも心憎い塩気と旨味を演出します。
ヤマメの稚魚をフリットにし、薄く薄くスライスしたセロファン状のグァンチャーレ(豚ほほ肉の生ハム)をスギムライジングさせます。健康的な苦みと揚げたての衣の温度で溶け行くグァンチャーレの脂。シンプルですが核心を突いた味覚であり、添えられた梨の甘味もオシャレです。
長崎のイシガキダイに八代のハマグリ。美味しいのですが、ちょっと攻め過ぎた火入れかもしれません。個人的にはもうちょっとしっとりした魚体のほうが好きかも。ハマグリならびにポワロ葱のスープはリテンションする美味しさです。
サルシッチャは地元で育てたサドルバック種の豚肉を。カウンター8席の店のひと品としてよくもまあこんな手の込んだものを。肉そのものの美味しさに迸る脂の旨味。それらのエキスをたっぷりのパルミジャーノ・レッジャーノが受け止め、さらには白いんげん豆の優しい風味で包み込みます。
パスタも自家製のタリオリーニ。もちろん手打ちで絶妙の歯切れの良さを感じさせ、トッピングのマツタケやカラスミも当然に美味しいのですが、そもそも麺そのものが抜群に美味しい。おかわりしたかったな。できるのかな。
メインはアイルランド産へアフォード種の牛肉をドーンとシンプルに。質実剛健な味わいであり、肉そのもの。まるでライオンにでもなったような気分です。
デザートはタイミングを合わせてその場で造られたゴルゴンゾーラのジェラート。くどいようですが、たった8席1回転のためにここまで自家製でアラミニュイットに拘る姿勢は変態的。加えて2マンセルだけでの営業なのにテンポ良く皿を出すリズム感も素晴らしい。
コーヒーで〆てごちそうさまでした。

お食事だけだと1万円で、ペアリングもつけて(飲む量によって価格は変動)トータルではひとり1.7万円に落ち着きました。おおー、これは大変リーズナブルですねえ。支払金額はさておき、熊本という地方都市(失礼)のこの規模の店で、ここまで凝りに凝った料理をテンポ良く出し切るスタイルが素晴らしい。東京で言うと白金台「ロマンティコ(Romantico)のような力強さを感じるイタリアン。次回は博多のお店に行ってみようっと。

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