JULIA(ジュリア)/外苑前

イノベーティブ・モダン・アメリカンと分類されることの多い最先端のレストラン「JULIA(ジュリア)」。naoシェフは、元々はレストラングループのPRなどの裏方に従事していたのですが、一念発起して料理人の道へ。独学で腕を磨き2012年つくばに「本橋ワイン食堂」をオープン。2017年に恵比寿へ進出し、2019年に外苑前へ移転オープン。
店内はカウンター8~10席ほど。黒主体のシックなインテリアコードがクールです。ゲストが全員揃ってからの一斉スタートなので遅刻厳禁。ワインが前提のお店なので、香水などは極刑に処す。
結論から言うと、当店のペアリングは素晴らしいですね。お料理ひと皿づつ全てにワインを合わせていくスタイルであり、その全てが日本産。私はワインについては完全にフランス原理主義者であり、日本のワインも飲まなくはないけれど質に比べて割高だよね、という偏見を持っていたのですが、これまでの自分は死んだ方が良いと思うくらい衝撃的かつパーフェクトなストーリー仕立てでした。
アミューズ・ブーシュは鴨肉のホットサンド。どこがbouche(ひとくち)やねんと突っ込みたくなる食べ応えのあるサイズ感であり、肉の味の強さ調味の強さパンの香ばしさからググっとテンションがブチ上がります。
カニとフレッシュチーズ。カニの旨味とチーズの乳のコクが溶け合います。アクセントにキャビアが添えられているのですが、こちらは茨城県産。そう、当店は本橋健一郎ソムリエの出身地、茨城の食材を殆どの料理に用いているのです。
貝のお椀。ハマグリを中心とした貝の身に、ムール貝やら何やら沢山の貝のお出汁を頂きます。塩などは用いていないのに塩味の骨格を感じます。ネギの風味香るのオイル(?)も心地よい。
こちらは真っ赤な鹿肉なのですが、ソースにカカオを大量投下しており、まさに肉チョコレートな味わい。ノンアルコールのドリンクペアリングの方々はカカオを用いた液体と合わせており楽しそうでした。
小麦も茨城県産のものを全粒粉状態で仕入れており、自家製パンとして焼き上げます。後に出てくるミニハンバーガーのバンズも当店で焼き上げており、この規模のお店でパンが自家製とは頭が下がります。
こちらはタラだっけかな?ややもすると淡白な味覚のお魚ですが、チーズをたっぷり投下して旨味とコクを増しています。
茨城県産の牛肉。炭火でコロコロと時間をかけて仕上げており、表面の焦げ目の香りが食欲をそそります。調味は塩だけというシンプル・チョイスですが、付け合わせのお野菜含めてすげえ旨い。
スペシャリテの「FARMER'S ARTWORKS」。やはり茨城県産のお野菜であり、その時の旬のもののみを出すため、二度と同じ皿には出会えないかもしれません。中央は白菜で、日本では鍋やらキムチやらが主戦場ですが、なるほどこのようにチーズと共に食べるのも乙な味です。
もうひとつのスペシャリテ「SLIDER」。アメリカ文化圏でいうところのミニハンバーガーですが、3日間かけて仕上げたバーベキューソースが実にジューシーで、どことなくオリエンタルな風味も感じ、後をひく美味しさ。もう一個おかわりと手を挙げたいほどでした。
デザート1皿目はアイスとクランブルなのですが、チーズの風味を強くしておりチーズケーキさながらの美味しさ。そういえばこの日はめちゃんこチーズいっぱいつこてるな。
柿のグラタン。柿の甘味とチーズのコク、バーナーでバババと炙った焦げの香りなど、まさに絶品として賞賛すべき美味しさでした。ペアリングのデザートワインとの組み合わせもドンピシャであり、ソムリエにとっては大いばりなマリアージュでしょう。
お茶菓子も可愛い。ちなみに今夜は私のお誕生日のお祝いでした。〆のハーブティーのセンスも良く、もたれるところなどひとつもない形でフィニッシュです。
いやあ、美味しかった。シェフは方々のインタビューで独学であることを謙遜してらっしゃいますが、レシピや成分表に載っていない味わいを表現するセンスに長けており、「カモシヤ クスモト」に似た凄味を感じました。

セクシーなソムリエの朗々とした語り口も心地よく、「イノベーティブ・モダン・アメリカン」という何だか良くわからない分類よりも、ジャンルレスの旨いものとそれにピッタリのワイン、という理解のほうがしっくりくるかもしれません。大人のデートにどうぞ。

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