むら上/西辛島(熊本)

熊本の新市街から10分ほど歩いた場所に位置する「むら上」。天草市にある名店「奴寿司(やっこずし)」の息子たちが2020年に開業した鮨屋です。ビルの2階にあり若干わかり辛い場所にありますが、「パリス・ヒロトン」の上階と覚えておきましょう。
窓は無く昼でも真っ暗な店内。ややもすると西麻布「81」のような座席配置でありスタイリッシュ。この日のゲストは皆、老若男女問わずの地元の常連客といった雰囲気でした。

ランチは正午一斉スタートで、序盤はツマミ、13時頃からにぎりのみのゲストが合流というありそうでない、合理的なシステムです。
お酒のメニューは無いのですが、総支払金額から逆算するに、ビールも日本酒も1杯千円といったところでしょう。ゲストの殆どは村上ブラザーズにお任せで日本酒を楽しんでいました。
「その日のお出汁」で開幕。この日の一番バッターはクエであり、ギュギュっと旨味が凝縮された素晴らしいスープです。お造りにも少し熱を入れ凝縮感を演出し、さっそく一本取られました。
出会って4秒で巻物?とびっくりしたのですが、内容物は海老芋と更に度肝を抜かれました。お出汁で炊いてソースを塗って、興味深い逸品です。
タチウオのフリット。一口で咥えこめるかどうかギリギリのサイズ感ですが、思い切って放り込むと口の中が幸せで満たされます。どことなくフランス料理的なニュアンスがあるのも面白い。
ヤマイモのペーストにアンキモのペーストと。ご覧の通りの濃厚な味わいで、慌てて日本酒をおかわりです。
クロムツに白菜。このクロムツはちょっと攻め過ぎ焼き過ぎ感があり、苦味まで生じてしまっているので改善の余地があるでしょう。少なくとも私の口には合わなかった。
白子をペースト状にし、シャリと混ぜ合わせて村上流のリゾットです。これはもう、誰もが頬を緩める瞬間であり、ちょうどこのあたりで合流したにぎりだけのゲストに申し訳なく感じました。
にぎりに入ります。甘い甘いアオリイカの内側にムラサキウニを組み込み、エペジーーンとする美味しさです。
ガリは歯ごたえを残した角切りタイプであり私好み。シャリは米粒の歯ごたえを強く残した弾力のある食感であり、やや甘めの白酢がどこまでも優しく食べ疲れしません。
イシガキダイの昆布締め。じっとりとセクシーな口当たりで日本酒が進みます。ちなみに当店のタネはマグロを除いては殆どは天草産のものだそうです。
キンメダイも色が濃く、熟女のような仕上がりです。
サワラは少し燻してあるのかな。スモーキーな風味が食欲をあげぽよです。
カジキマグロは昆布締めと漬けの二枚重ね。もちろん美味しいのですが、私の馬鹿舌では味を食べ分けることができなかったので、それぞれ別枠で食べた方が良かったかもしれません。
シマアジの漬け。くわー、このシマアジは心から美味しいですねえ。しっかりと漬けているのにヘタれるところは一切なく、噛みしめるごとにビンビンに弾力を感じさせてくれます。
大トロの炙りを漬けで。こちらも炙って脂を落とし漬けでさらにマスキングし、大トロであるのに実に軽やかに楽しむことができました。
こちらのアジはネギと柚子胡椒を忍ばせて。マッチョな肉体がオリエンタルでスパイシーな調味と良く合う。
クルマエビは仄かに熱を加えます。それほど甘味が強くない個体だったからか、どっちつかずに感じました。このタネであれば個人的にはすっかり茹でてしまったほうが好みかもしれません。
ネギトロ。海苔多めタネ多めシャリ少な目という天国の配合。バリっと響く磯の香り。ごちそうさまでした。
柿のアイスクリーム(?)なのですが、厨房でウィーンいうてたからもしかするとその場で作ってたんかな。だとすると随分と意識の高い鮨屋である。

以上を食べ、軽く飲んでお会計はひとりあたり1.6万円。もう少し食べれたかな?という余白があるものの、これだけの質ならびに量を飲み食いしてこの支払金額はリーズナブル。

ちなみに村上ブラザーズの兄は日本料理店で腕を磨き、弟は戸畑「照寿司」で経験を積んだそうで、その芸風がまるで異なるのが面白い。にぎりのサイズ感やシャリの味わいなど全てが真逆。次回はお父様の「奴寿司(やっこずし)」にお邪魔したいと思います。

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鮨は大好きなのですが、そんなに詳しくないです。居合い抜きのような真剣勝負のお店よりも、気楽でダラダラだべりながら酒を飲むようなお店を好みます。
この本は素晴らしいです。築地で働く方が著者であり、読んでるうちに寿司を食べたくなる魔力があります。鮮魚の旬や時々刻々と漁場が変わる産地についても地図入りでわかりやすい。Kindleとしてタブレットに忍ばせて鮨屋に行くのもいいですね。