モトイ(MOTOI)/烏丸御池(京都)

烏丸御池駅または京都市役所前駅からそれぞれ徒歩5分ほど、俵屋町の閑静な住宅街に位置する「モトイ(MOTOI)」。ミシュラン1ツ星で、食べログではブロンズメダルおよび百名店に選出。京都のフレンチのトップ集団のうちのひとつです。
築100年は下らない呉服屋の邸宅をリノベした空間が圧巻。店内中央に飾られたお花も素敵であり美意識高めのお店です。4人テーブルが基本ですが、奥には「特別室」と称した個室もあります。

前田元シェフは京都市生まれ。もともとは中華の料理人で10年近いキャリアがあるのですが、フランス料理に転向した後、ブルターニュ地方などで腕を磨き、帰国後は大阪「ハジメ(HAJIME)」などで経験を積んだのち、独立。
ワインはフランスワインが多めですが、日本のワインひいては京都のワインなどにも力を入れています。グラスワインも豊富であり、何ならビールや紹興酒まで用意されています。
4種の先付。左から鮒寿司を練り込んだクリーム(?)をシュー生地に、クジラ、甘海老の紹興酒漬け、クラゲ。ヌーベルシノワというか中華風フレンチというか、そのボーダーが曖昧なのが面白い。とりわけクジラとエビが美味しかったです。
汲み上げ湯葉にピータンとキャビアを敷き詰め、コンソメのジュレを流し込む。さしずめ当店風のピータン豆腐なのですが、ピータンは元々あまり好きな食材ではなく、生臭さが強調されて感じられ、私の口には合いませんでした。
豚バラ肉は「広東料理の技法を用いて焼き上げた」とのことで、皮目はカリカリにクリスピー、身はギュギュっと旨味が詰まっており万人受けする美味しさ。ガツっとビールを合わせるのも良いかもしれません。
フォアグラは代白柿とヨーグルトソース、カカオと合わせて食べるという新しい試み。もちろん美味しいのですが味が多過ぎるきらいがあり、その全てを上手く処理することができませんでした。私の味覚などその程度です。
パンはフランスパンとチャパタの2種なのですが、いずれも素朴ならが方向性の異なる味わいであり、ぜひ両方とも試してみることをお勧めします。海藻を練り込んだバター(?)の磯の香りも楽しい。
麻婆豆腐。豆腐をフレッシュチーズ風に仕上げ、ラー油のソースと肉味噌をトッピング。思わず笑みがこぼれるコンセプトですが、若干スベってる感もあるので、大がかりなひと皿というよりはアミューズのうちのひとつという位置づけのほうが良いかもしれません。
ブルターニュ産のオマール海老。エビのソースに栗のヴルーテ(ドロドロしたやつ)に、菊芋と菊菜を合わせて頂きます。これはもう、問答無用に美味しいですね。

ああ、やっぱりオマールはうめえなあと感激していると、「オマール・プレッシャーね」と連れは言う。何それ?と問うと、「オマールは、オマールが美味しいのは当然として、『これはオマールだ、ミスは許されない』と料理人側が気合を入れて取り組むから、結果として良い皿ができるものなのよ」ちなみにこの話に特にオチはない。
サワラのポワレ。でっぷりと太ったサワラを厚切りにカットし、尊いポーションです。ソースはブールブラン(バター系のソース)なのですが、アクセントに腐乳をきかせたり白菜を添えたりと中国料理のニュアンスがあり、シェフのキャリアが活きたひと皿です。
メインは京都のブランド鴨「七谷鴨」。いわゆる合鴨でありフランスの鴨料理とはやや方向性が異なるのですが、鴨でありながらどこまでもキレイな味わいに食べる手が止まりません。ソースは正攻法で肉汁を主軸としておりエレガントな美味しさです。
デザートに入ります。まずはアイスクリームなのですが、こちらは紹興酒がベースとなっており、意外にいけるじゃないかと気づきのある味覚です。
続いて焼きバナナ。ソースは白味噌であり、コッテリと濃厚でバナナの強い甘味によく合う。
メインのデザートはモンブラン。一般的なそれよりも糸が細くホワホワとエアリーな舌触りが堪りません。ちなみに今夜は私のお誕生日のお祝いでした。
ミニャルディーズが豪華。この規模のお店(席数30ぐらい?)でこれだけ多種多様の小菓子を用意しようという心意気に感服。きっとシェフはフランス料理文化を心から愛しているに違いない。

以上を食べ、ワインをふたりで1本分けてグラスワインを1杯飲んでひとりあたり2.6万円。もちろんワインの値段で上下にブレるでしょうが、これだけの料理を楽しんでこの支払金額はリーズナブル。中華のエスプリをきかせた企画モノのフレンチであり中上級者向け。ある程度フランス料理を食べ込んだグルメ仲間と訪れると良いでしょう。

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