ザ・ひらまつ ホテルズ&リゾーツ 宜野座(フレンチ版)/沖縄

開業以来毎年訪れ、2020年においては私的ベストホテルに君臨する「ザ・ひらまつ ホテルズ&リゾーツ 宜野座」。今回は初の連泊で贅沢三昧。
初日の夕食はフレンチ。食事前にしっかりと泳ぎジャクージーで精神統一してきたので美食に対するモチベーションは最高潮。
ワインはペアリングでソムリエに全てお任せ。ヘンにひねったりせず、料理に寄り添う完璧なチョイスでした。ところで今さらですが当館は沖縄のリゾートホテルとしてはワインの品ぞろえが素晴らしく、またそんなに高くないのがワンダフルです。
沖縄の食材を多用したアミューズ。新玉ねぎをドロドロしたやつに生ウニをたっぷりのせ、土佐酢のジュレでキリリと〆たものが絶品。このクオリティのアミューズを出来立ての状態でゲストに提供できるのは小箱の最大の利点でしょう。
当館が位置する宜野座村の特産物である車エビ。サラっとボイルしナージュ(出汁のソース)やトマトのプチプチをトッピングし、冷製のホワイトアスパラガスと共に頂きます。こんなに暑い地域できちんとフランス料理しているのが嬉しくなる。ちなみに本当に近くに車エビ養殖場があって食堂も併設しており、いつも行こう行こうと企んでいるのですが、結局ひらまつから一歩も出ずに終わってしまう。
パンももちろん自家製。ヴィエノワズリは朝食に譲るとして、夕食はシンプルに穀物の風味を押したもの。それでもエシレと地元のお塩を少しのせるだけで立派に美味しい。
ロワイヤル(洋風茶碗蒸し)にはスッポン。沖縄でもスッポンって獲れるんやな。やんばるの冬瓜のスープと共に押しの強い味覚であり、清澄なフォアグラの味覚が陰に隠れてしまうほどです。オマケ(?)のスッポンの春巻きもマッチョで深みのある味わい。
お魚料理は赤仁ミーバイ。沖縄が誇る超高級魚であり、沖縄のラグジュアリーなレストランがこぞって使いたがるのですが、意外に淡白で食べ応えが無いのが玉に瑕。その課題を当館ではベーコンで巻いてしまうという蛮勇で挑みます。おそらくミーバイをベーコンでぐるぐる巻きにしてみせたのは、当館が世界で恐らく初めてではなかろうか。

加えてソースはヴァンジョーヌと怖いもの知らず。ワインの厚みに思いきりの良い酸味、アクセントとなるスパイスと、記憶に残る料理です。
メインはもとぶ牛のフィレ肉。この肉がフィレ中のフィレとも言えるクリアな味わいであり、満腹一歩手前でありながらもスイスイと箸が進む軽やかさです。ソースもペリグーでコッテリしているはずなのに、軽い。シイタケたっぷりの詰め物もグッド。
〆はイラブー。沖縄屈指の神聖な食材ではあるものの味については賛否両論な素材ですが、当館においてはきちんとしたひらまつ味に仕上がっており普通に美味しかった。また、やはりフランス料理屋でイラブーを出したのは、こちらが世界で恐らく初めてではなかろうか。
デザートに入ります。今帰仁のスイカでシャラっとお口直し。フルーツトマト朱々も用いられており、見た目以上に濃度が高いひと皿です。
続いてココナッツのシブースト(焼き菓子)にパッションフルーツとそのソルベ。夏を先取りする力強い味覚であり、バリバリっとした種の食感が心地よい。
小菓子とハーブティーでまったり〆てごちそうさまでした。

沖縄の食材と冒険主義が年を重ねるごとに図太くなっていくのが面白い。賢島のひらまつと同様に、シェフが良い意味で好き勝手にやらせてもらっているのでしょう。

会社の私物化に始まるお家騒動、裁判沙汰、コロナ禍による株価暴落など、古参のひらまつファンとしては心を痛める日々が続きますが、根本的に美食の追求という点において懐がたいへん深い会社と信じています。そのあたりアドバンテッジ パートナーズが上手くやってくれると嬉しいんだけどな。

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