鮨よしかわ/麻布十番

2019年に恵比寿にオープンし、「ドラゴンボール巻き」でインスタを席巻した「鮨 よしかわ」。クラウドファンディングで資金を集め、「株式会社そら」というレストラングループも一枚噛んでいるという案件。その2号店が麻布十番に進出です。以前はサービス料10%を取るラーメン屋「海老麺総本家 JIMOTOYA(じもとや)」が入居していた場所です。
当店の大将は、恵比寿店の吉川貴将シェフのお父様。トーマス・トゥヘル監督も驚きの起用法です。酒は麻布十番にしてはかなり安く、生ビールは700円、日本酒は1合1,400円にグラスワインも千円以下です。そういえばお食事も1万円1本勝負なので、麻布十番の鮨屋としては破格の価格設定と言えるでしょう。
まずはお造り。左のトロはびっくりするほどの美味しさ。1万円の鮨屋としては考えられないクオリティです。厚めに切られたカツオや赤貝も上々であり酒が進みました。
アマダイ揚げ焼き。スプーンでサクサク混ぜ混ぜし、いくらか食べ進めてから備え付けの出汁を口に含みます。もちろん美味しいのですが、台本でもあるのか色んな従業員がやたらマリアージュマリアージュ言うてくるのが草。「マリアージュ」などワインの現場でもリアルにそう発言するソムリエは少ないので、色々とアレに思いました。
にぎりに入ります。まずはカマス。いわゆるカマスの味がします。
続いてコハダ。こちらも街のお寿司屋さんの味わい。
ボタンエビは中々の美味しさ。サイズも大きく、冒頭のマグロにせよ、要所要所を押さえてくる。
ヒラメの昆布締めに、、、
本マス。このあたりは街のお寿司屋さんに戻って来ました。
大トロ。悪くないのですが、頭に乗っかった謎の物体は別にいらんかった。
スペシャリテの「うなぎドッグ」なのですが、これは全然美味しくないですね。鰻の質もしくは調理が良くないのか、「照寿司」の劣化コピー版といった味わいであり、グズグズの身にボンヤリとした調味に心が締め付けられました。

また、当店は一斉スタートなのですが、大幅に遅刻した輩とのタイミング調整のために順番を前後して先に鰻を出してきたあたり、なんだかなあというお気持ちです。
時間調整、続く。サービス(?)で出されたゴボウにガリで失われた時間(とき)を紡ぎます。
看板の「ドラゴンボール巻き」。いわゆる宴会芸であり見ての通りの味わいなのですが、このプレゼンテーションのために遅刻者との時間調整が生じ、食事のリズムが崩されたことを考えると議論の余地があるでしょう。私が欲しいのはダイヤモンドではなくダイヤモンドの輝きなのだ。
〆の小丼。なるほどここまで出して1万円というのは、くどいようですが麻布十番の鮨屋としては破格の価格設定と言えるでしょう。私が上京したばかりの貧乏な女子大生で十番の鮨屋で値段を知らされずにこんなことされたら今夜は抱かれても良いかもしれません
一方で、私にとって店づくりとは、自分の店をどういうお客さんで満席にしたくて、誰に自分の料理を楽しんでもらいたいのかを考え抜くことこそが肝要と信じているので、その答えが「インスタ映え」なのであれば、なるほどこれはこれはそうでしたかというお気持ちです。もちろんクラウドファンディングという圧倒的に無傷な状態から始まったため、このような諧謔を弄する芸風になったのかもしれませんが。

奥には10人貸し切りの個室もあるみたいなので、そっちでパトコールするのが最も効果的な活用法に思えました。女子大生と共にどうぞ。

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鮨は大好きなのですが、そんなに詳しくないです。居合い抜きのような真剣勝負のお店よりも、気楽でダラダラだべりながら酒を飲むようなお店を好みます。
この本は素晴らしいです。築地で働く方が著者であり、読んでるうちに寿司を食べたくなる魔力があります。鮮魚の旬や時々刻々と漁場が変わる産地についても地図入りでわかりやすい。Kindleとしてタブレットに忍ばせて鮨屋に行くのもいいですね。