フィオッキ(Fiocchi)/祖師ヶ谷大蔵

小田急線は祖師ヶ谷大蔵駅から徒歩5分の商店街の中にある「フィオッキ(Fiocchi)」。食べログでは3.88(2021年5月)で百名店に選出と、世田谷が誇るイタリアンの名店と言えるでしょう。

お店に入ってすぐは物販スペース「ラ・ポルタ・ディ・フィオッキ」。そこからもう1枚、扉を隔てた奥に「フィオッキ(Fiocchi)」という面白い間取りです。
堀川亮シェフは祖師ヶ谷大蔵で生まれ育ち、25歳で渡伊。イタリア北中部の名店で腕を磨き、帰国後、2000年に当店を開業。コロナ以前は席数の多いバリバリのリストランテだったそうですが、コロナを奇貨として改装し物販スペースを設置しテイクアウトを強化。加えてカウンター席を設けライブ感溢れる誂えへと仕様変更。天晴れな決断力です。ちなみに我々は禁酒法の時代に訪れたのでアルコールの提供は完全NG。コンプライアンス意識も非常に高い。
まずは新玉ねぎのドロドロしたやつにウニをたっぷりトッピング。ドロドロには海苔やワラビが組み込まれており、山海の珍味が一発で楽しめます。ポーションも中々のものであり、この時点で今夜の勝利を確信しました。
続いて牡蠣。でっぷりと太った牡蠣に鴨(だっけ?)の出汁のジュレを注ぎ、刻んだトリュフやらモリーユ茸やらトリュフやらをトッピング。なんとも直情的な味覚であり特急で美味しい。お供に白ワインが無いのが悔やまれる。
サーモンを目の前で燻製。香り高く食欲をそそる味わいです。ジューシーなホワイトアスパラガスやホロホロ鳥の卵のスクランブルエッグ風ソースなど皆が大好きな味覚であり、ナスタチウムのピリっとした刺激も心地よい。
パンは自家製の全粒粉パン。テイクアウトの強化と共にパン用のオーブンを設置するなど、この手の食事についてはお手の物。このあたりの住民はホームパーティーの料理に困るということは無いでしょう。
目の前でスッポンが串に刺されて焼かれます。香ばしく獰猛な味覚で実にマッチョ。スッポンは日本のジビエと思いきや、日本料理として食べるよりも欧米系な調理で食べた方が旨いのではなかろうか。
ファサーと、サランラップのように薄くスライスされた生ハム。24か月も熟成されたパルマ産のヘヴィー級の濃いはみごとに脂の甘味と一緒に溶けます。底には豆のリゾット的な歴史ある郷土料理(?)が敷かれており、前前前世からこんなにも旨いものを食っていたとはイタリア人は実にけしからん。
パスタはアニョロッティ・ダル・プリン。いわゆるワンタン的な詰め物料理であり、秋田の山菜などが詰められ面白い試みなのですが、食いしん坊の私としてはもう少しパスタパスタした食べでのあるパスタ料理のほうが良かったかもしれません。
メインディッシュはランド産の鳩の炭火焼き。オーセンティックな調理であり、マルサラを主体としたベーシックなソースが良く似合います。お供に赤ワインが無いのが悔やまれる。
デザート1皿目はレモンのコンポート(?)にストラッチャテッラのアイス。ストラッチャテッラとはブッラータの内部にあるクリーム状の濃いやつであり、イタリアのジェラテリアなどでは割にメジャーなフレーバーです。レモンが皮ごとイケるクチであり、目が覚めるような酸味と奥行きのある甘味。
続くデザートもセンス抜群。グリーンアスパラガスのプリン的なものにビールのアイス、チェリーたっぷりのチョコレートソース。それぞれエッジのきいた甘味ですが、さらにはグリーンアスパラガスのコンポート(?)やカカオニブなど、私の味覚の処理能力が追い付かないほどの多彩な試みが詰め込まれています。
小菓子も自家製。ほっこりと心温まる味わいであり、どこかへお邪魔する際の手土産にも良さそうです。この、物販とレストランの小規模ハイブリット形式は令和アンダーコロナにおける勝ちパターンかもしれません。知らんけど。
恐らく本日シェフが最も手間暇かけて提供したドリップコーヒー。純喫茶であれば千円近くはしそうな、バリ旨い1杯でした。

酒は飲まず炭酸水のみに留めたので、お会計はひとりあたり1.8万円ほど。祖師ヶ谷大蔵という地においてはかなり勇気の要る価格設定ですが、都心で同じものを食べることを考えれば大変リーズナブル。どの皿も独創的できちんと美味しい。次回、疫病騒ぎが落ち着いた折にでも是非、たっぷりのワインと共に楽しみたいと思います。

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