温味(ぬくみ)/中島公園(札幌)

すすきのから中島公園へと移転した「温味(ぬくみ)」。ミシュラン2ツ星、食べログ百名店入りと札幌が誇る日本料理の名店です(写真は公式ウェブサイトより)。私は2015年のすすきの時代にお邪魔したことがあり、実に6年ぶりの訪問です。
新店舗は趣味人の邸宅のような一軒家であり、1階に個室、2階にカウンターとテーブル席という構成。方々に窓が配されており、自然光とグリーンが目に優しい。

山本真樹シェフは札幌生まれ。地元の名店「古屋(こや)」で修業し、大阪「かが万」で腕を磨き、香港日本総領事公邸料理人として香港へ渡った経験もあります。帰国後は「ザ・ウィンザーホテル洞爺」を経たのち、当店を開業。
うすい豆のふくませ煮。緑の味の濃いお豆さんをサッパリとしたスープと共に頂きます。
トウモロコシの揚げおこわ。おこわを揚げているのではなく、おこわにトウモロコシのかき揚げ(?)を混ぜ込んでいます。素朴ながら記憶に残る味わいです。ちなみにシイタケ嫌いの好物はトウモロコシのかき揚げとウズラの卵です。
お椀はオコゼに加賀きゅうり、じゅんさい。品の良いスープにじゅんさいのチュルっとした食感が程よいアクセント。
お造りはヤリイカにヒラメ、関アジ。ヒラメのジットリとした食感に奥行きのある旨味が心に残る。量がたっぷりなのも嬉しい限り。
八寸は左上の空豆とウニの自然な取り合わせが良いですね。いやらしい派手派手しさはなく、互いに互いを褒め合うような組み合わせです。
エゾアワビの石焼。新鮮なアワビをチンチンに熱した石でチロっと焼きつけます。モリっとした食感に淫らな風味が咲き乱れる。
鮎はシンプルに塩焼きして蓼酢で頂きます。美味しいのですが、まあ、よくある一般的な鮎です。
炊き合わせは賀茂茄子にアスパラ。賀茂茄子は一度揚げているのかザクっとした食感に香ばしいかおりが鼻に抜けていくのが心地よい。
お食事はシャコとジダケの炊き込みご飯。ベースとなるライスに味が行き渡っており、シャコを抜きにしても米料理そのものとして旨い。
水菓子は夕張メロンに黄金柑を白ワインのゼリーと共に。シンプルながら品質の高さを伺わせる風味です。

禁酒法の時代に訪れたので、お食事だけで2.5万円ほど。お酒をそれなりに飲めば3万円といったところでしょうか。むかし訪れた時の方がもっと荒削りでパンチのある料理であり、費用対効果も良かったような気がするのですが、まあ、昔の思い出は美化されるものである。

店構えや価格帯を考えると接待向きかもしれません。札幌出張者は現地の偉い人におねだりしてみましょう。

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