鮨処 有馬/すすきの(札幌)

札幌の人気の鮨屋では5本の指に入るでしょう。すすきのは雑居ビル4階に入居する「鮨処 有馬」。ミシュラン1ツ星で食べログは3.99でブロンズメダル獲得。
割に広い店内なのですが、カウンター7席のみと客数を絞っています。今どき珍しく電話のみでの予約受付ですが、私調べによると、予約手段がハイテクになればなるほど脳内がデジタル植民地化された六本木系ゲストが増えるので、客層を維持するという意味では良い試みです。
禁酒法の際にお邪魔したのでノンアルコールビール1択。全てコロナのせいであり当店に責はありませんが、ノンアルコールビールに660円を費やすのはやはり悔しい。また、つけ場に出る料理人は大将ひとりなのですが、なぜか電話に出るのも大将で、そのたびに3~5分はテンポがズレるという謎運用はなんとかならんもんか。
まずは大和蒸(やまとむし)。ゴロゴロとした海鮮にヤマイモが覆いかぶさるように蒸されており、山海の珍味が勢ぞろい。今夜の出来高を予感させる逸品です。
エゾバフンウニをヒラメで巻いて、出汁のジュレで滞りなく攻めてきます。文句なしに旨い。
続いてエゾアワビを蒸して肝のソースをとろり。淫靡な味覚に悶絶した後はシャリが追加で投下され、美味しいタレを余すところなく頂きます。
にぎりに入ります。まずは松前で獲れたヤリイカ。甘ったるいイカというわけではなく、しっかりとした土台を感じるイカした味覚です。
白糠町で獲れたマダコ。聞いていると全てのタネが北海道産のものであり、道外のゲストとしては堪らない構成です。
戸井のトロ。大間の対岸にある漁港であり、つまり大間のマグロです。私はマグロについてそれほど詳しくないのですが、それでもこのにぎりのシンプルな美味しさには舌を巻きました。
オホーツク海のホタテ。こちらもシンプルに、これはホタテであると脊髄反射で認知できる美味しさです。
ニシン。個人的にこの夜いちばんのヒット作。ニシンって雑な料理に使われる雑な魚だと思っていたのですが、こんなにも官能的な余裕のあるタネなのですね。本当に美味しかったのでおかわりしました。
森町のボタンエビ。しかもダブル。軽く湯引きしたユビキタス社会であり、半レア状態で甘味が増しています。美味しいなあ。
羅臼のキンキ。大好きなタネなのか、先のボタンエビの味の強さに引っ張られ、相対的に淡白に感じました。キミとは違う形で出会いたかったよ。
小樽のシャコ。これはまあ、シャコですね。前夜に山ほどシャコを食べて来たので、タイミングが悪かったのかもしれません。
先のホタテと同じところで獲れたホッキ貝。独特のクセがクセを通り越してクセになる味わい。
ヒメマス。一転して淡水魚ですが、なかなかどうして濃い味を発揮してくれます。
毛ガニのほぐし身と、別のカニの内子の塩漬けを混ぜ込んでにぎります。くわー、旨い。日本酒が無いことを呪ってしまいそうな美味しさです。
お椀は意外にシンプル。これまでの特徴的な芸風に比べると穏やかな味わいです。
〆の太巻きはアナゴにタマゴにキュウリなど。美味しいのですが、やはりこれまでの芸風に比べるとインパクトに欠けました。

いくつかおかわりした結果、お会計はひとりあたり2万円。コスパが良いという前評判を考えると、酒抜きにしては思ったよりも高くついたなという印象です。それでも都心のちょづいた鮨屋の3~4割引といったところで、また、地元の魚介類に拘っていることを考えれば、道外のゲストにとってはナイスなお店でしょう。札幌を訪れた際には是非どうぞ。

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鮨は大好きなのですが、そんなに詳しくないです。居合い抜きのような真剣勝負のお店よりも、気楽でダラダラだべりながら酒を飲むようなお店を好みます。
この本は素晴らしいです。築地で働く方が著者であり、読んでるうちに寿司を食べたくなる魔力があります。鮮魚の旬や時々刻々と漁場が変わる産地についても地図入りでわかりやすい。Kindleとしてタブレットに忍ばせて鮨屋に行くのもいいですね。