レストラン ローブ(Restaurant L'aube)/赤羽橋

毎年ミステリーツアー的にお誕生日祝いの会場を告げない彼女。だったはずですが、「お祝いするに相応しい格のお店で、まだあなたが行ったことのないお店を探すなんてもう無理。諦めた。近所で、あなたの覚えがめでたいお店にしたわ」と、今年はゴールへの最短距離を目指すお店のチョイスです。これはこれでとても嬉しい。
およそ2年ぶりの訪問。変わらずマンションの2階とは思えないほど素敵な空間。店名は「夜明け・誕生」の意。シャンパーニュの泡をイメージした壁面から木漏れ日が降り注ぎます。明治神宮前「Keisuke Matsushima」で腕をふるった今橋英明シェフ、平瀬祥子シェフパティシエール、石田博シェフソムリエのビッグスリーが再集結して開いたフレンチレストランです。
温かいウェルカムドリンク(?)。生姜と柚子だったかな?爽やかな香りとピリっとするスパイスで内臓を温めます。
「お誕生日おめでとう」と片目を瞑る彼女。「ちなみに、夜のメニューでお願いしてるから期待してて。ワインも事前に相談しておいたから」と私の誕生日祝いに余念がありません。
アミューズはセップ茸とジャガイモのタルトにトリュフのフィナンシェ(?)、ひよこ豆のコロッケに、鹿肉のメンチカツ(?)。鹿肉が素晴らしいですねえ。アミューズながらパワフルな味わいでありさあ食べるぞという気分を盛り上げてくれます。ゲストに合わせて温かいアミューズを出す店は大抵旨いものである。
フォアグラに柿。濃密でリッチな舌ざわりのフォアグラに、柿の素朴な甘味が加わります。
フォアグラを乗せて食べる用のパンが素敵な器に納まって配達されます。こうした美意識ならびに姿勢はコース料理全般の完成度に間接的影響するものです。
合わせるワインはイタリアのピノグリ―ジョ。香りは穏やかであるものの厚みがあり、リッチな味わいのフォアグラを補完します。「どや!合うやろ!?」的クドさは一切なく、料理に寄り添うワインでした。
蟹と山椒。カニ肉がたっぷり入ったラビオリに山椒の葉を散らします。ラビオリ内部に飾られた葉が絵画のように美しい。カニのビスクのソースも濃密で甲殻類原理主義の私としては至福のひと時。
ワシントンのリースリング。濃厚なカニ料理に酸味を補完します。料理の足りない部分を補うマリアージュってすごく好き。
魚料理はアンコウ。アンコウをフダンソウで巻き、アンキモを乗せソースをトロりとかけたのちにトリュフをトッピング。アンコウの弾力を活かした火入れでありムシャムシャと美味しい。他方、アンキモはプラスチックのような味わいでイマイチ。さっき食べたフォアグラの完成度とどうしても比べてしまいます。トリュフの使い方が少しもいやらしくなく必然性を感じさせます。
ワインは南アフリカのシュナンブラン。さりげない味わいですがやはり料理にとても良く合う。センスいいなあ。ワインのラインナップがワールドワイドであり、なんて引き出しの多いソムリエなのでしょうか。
パンは焼きたて。ベースの旨さは当然として、フェンネルの香りも心地よい。パティシエール自らテーブルでパカっと割るプレゼンテーションが楽しい。一般的なレストランではパティシエが黒子になりがちですが、当店はしっかりと顔が見え、その食事のカギを握る重要な人物として機能しています。
メインは鳩。トランジスタグラマーとも言うべき、小柄ながらも魅力的な肉質であり、激しい弾力を抑え込むと肉そのものの美味しさが次々に迫り来る。竹炭とトリュフを練り込んだ真っ黒なペーストも迫力満点。それだけでも美味しいのに、サルミソース(?)も濃厚かつ濃密であり、頭を抱えてしまうほどの美味しさ。シェフの料理は南仏系の軽い味覚が多い印象だったのですが、こんなに重厚な料理もアリなんだ。奥の内臓を詰め込んだコロッケも絶品。こんなに美味しいメインディッシュはそうそうなく、まさに瞠目するほどの美味しさでした。
ワインはボルドー2級モンローズのセカンドワイン。濃厚でパワフルなアタックに上質なタンニン。上品ながら力強い味わいであり、王道中の王道のマリアージュ。今夜は抱かれても良いでしょう。
デザートは森をイメージした一皿。緑や紅葉、枯れ木などまさに今の季節の森です。見た目の凝りっぷりは当然のこと、ひとつひとつがいちいち美味しいのが凄い。偏執的とも言うべきスイーツへのこだわりが垣間見えました。
デザートワインは葡萄を加熱してから発酵させた(?)面白いワイン。貴腐ワインとはまた違った方向性であり、ブドウの味わいが直接甘い、興味深い味わいです。
スタイリッシュで大人っぽいベースの飾りつけにハコパカショコラ。彼女は砂糖をまぶしたような甘い声で「お誕生日おめでとう」と囁く。愛されてるなあ。真面目に生きてきて良かった。
ルワンダの有難いコーヒーを楽しみごちそうさまでした。2年ぶりにお邪魔しましたが、変わらず素晴らしいレストランです。前回は『「ローブのアレを食べに行く!」のような唯一無二のスペシャリテがあれば、麻布界隈のフランス料理の覇権を握る可能性が充分にあるお店です』など生意気なことを書いてしまいましたが、今回の鳩料理は圧倒的な美味しさであり、フランス料理ってやっぱこうだよなあと思わず唸ってしまう食後感です。
話は前後しますが内装につき、フルオープンのキッチンを通じてシェフとパティシエールの姿を拝むことができるのもライブ感があっていいですね。加えて夜はクロスが紫色となりシックな雰囲気になるそうです。次回は夜に来てみようっと。


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  • ペリーニ アダージオ ←まさに隠れ家、デートにもバッチリ。
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  • 旬菜本多 ←リーズナブルな和食。感動は無いけれど満足。ランチが超お得。
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  • ビストロチック ←ランチのパスタが美味しい。店員同士が仲良さそうで微笑ましい。
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