すし初/湯島

すし初の若旦那が「J.S.A.SAKE DIPLOMAコンクール」で優勝しました。日本ソムリエ協会は会長が田崎真也になってから日本文化への貢献に注力し始め、日本ワインや日本酒の発展に大きく寄与しています。その象徴として開催された日本酒のコンクールの初代王者となったのは意義深い。
優勝したその週末にお花を持ってお邪魔しました。ネットが発達しSNSでコメントを残すだけの関係が色濃くなる中、オールドスクールなお祝いを徹底するのが私流。軒先の看板には今夜も予約で満席との案内。
店内には古くからの常連やワインスクールの生徒たち(彼はアカデミー・デュ・ヴァンの講師だ)で溢れており目のまわる忙しさ。おまけにコンクールが終わって気が抜けたのか、若旦那は足の肉離れを起こしており、動きが普段よりも幾分スロウ。今となっては笑い話です。
ちなみに私も地味に食べログで1位になりました。良かった良かった。
さて、シイタケをシンプルに焼いたもの(2ピースあったけど食べちゃった)。まさに素材といった味わいに上質な海苔の風味が駆け抜けます。
里芋とカリフラワーのすり流し。すり流しとは私の好物のひとつであり、ピカールに言ってキューブ状の冷凍食品としてデビューさせたいほどです。やや土っぽさを感じる野趣あふれるカリフラワーの風味に舌鼓。
歯ざわりが見事なレンコン。カリフラワーに続いてやはり土っぽさを感じさせる男性的な味覚であり、ザクザクザクザクと魅力的な咀嚼音が響きます。量もたっぷり。
本日のお刺身の白組はヒラメ、エンガワ、ホタテ、太刀魚、甘海老。ヒラメならびにエンガワがいいですねえ。冬の到来を告げる身の締まりに脂の量。日本酒が進みます。
紅組はカツオ、ブリ、中トロ、シメサバ。ほう、カツオ。旬の頂点は過ぎたことは周知の事実ですが、なるほどあえて出すだけあって迫力のある個体であり、厚切り由来の歯ざわりも相まって美味。シメサバも絶品。軽く締めているため酸の主張は穏やかで、代わりに冬の脂が幅をきかせています。
腹の出た鮎。中には大量の卵が詰まっており、ある意味では残酷な天使のテーゼなのですが、その卵をスープに解きほぐして頂く玉子スープの旨さといったらない。頭も尻尾も全てを食べ尽くし、日本酒でグイと飲み干します。
サワラは西京漬けで。ムッチリとした身の厚さに悶絶。コースが進むにつれて調味がクレッシェンドしていき、当然に酒量も増える。
にぎりに入ります。どでかい海老が入ったので包丁でふたつにナイスカット。それでもひと口におさまりきらないほどのサイズであり、海老好きには堪らない逸品。
サンマ。今年は不漁というニュースが流れていますが、あるところにはあるものです。不漁で高価だか何だか知りませんが、個人的にサンマはもっと評価されるべき素材と考えており、はっきり言って鰻よりも全然美味しい食材でしょう。
すじ抜き。当店のスペシャリテ(と、私は勝手に位置付けている)であり、必ず食べるべき1カンです。マグロの脂の乗った部分から丁寧にスジを取り除き、上質なネギトロをたっぷりとにぎりで食べるような名品。
イクラ。やや小粒で凝縮感に溢れる味わい。調味も強く海苔の風味も心地よい。鮨と見せかけて酒が進むツマミです。
ウニもかなりの量。近年、外観が整ったものを軍艦でなく握りでウニを出すお店が増えましたが、個人的にはやはり海苔の風味が欲しい。こういった伝統的な軍艦巻きにも理由はあるのだ。
ホクホクと炊きあがったアナゴ。私はあまりお燗酒は好まないのですが、このにぎりに関してはそれでも良かったかもしれません。何しろ若旦那はコンクールにおけるお燗のつけ方につき、会場をどよめかせた手技の持ち主だそうなので。
追加でトロタク。マグロの旨味にタクアンの食感がコリコリと響きます。
刺身でブリも良かったことを思い出し、追加でブリを2枚づけで握ってもらいました。軽く塗られた醤油をはじき返すほどの脂の量であり、モリモリといった食感と相俟って最高のフィナーレでした。
ちなみにこの日のラインナップはコチラ。これだけの種類の酒をロジカルにサイエンティフィックに出し続ける芸風はさすがのチャンピオン。見事としか言いようがありません。若旦那の応援団が多くグルーヴ感に満ちたディナーでした。


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鮨は大好きなのですが、そんなに詳しくないです。居合い抜きのような真剣勝負のお店よりも、気楽でダラダラだべりながら酒を飲むようなお店を好みます。
この本は素晴らしいです。築地で働く方が著者であり、読んでるうちに寿司を食べたくなる魔力があります。鮮魚の旬や時々刻々と漁場が変わる産地についても地図入りでわかりやすい。Kindleとしてタブレットに忍ばせて鮨屋に行くのもいいですね。

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