日本料理 徳/麻布十番

麻布十番から飯倉方面へ徒歩5~6分、飯倉片町交差点の裏手の六本木ファイブビル1階。ミシュランのビブグルマン掲載店です。ちなみに同ビルにはランチ焼肉の名店みやび高い費用対効果を誇るジャスミンタイなどが入居しており、良いレストランが集まるグルメビルと言って良いでしょう。六本木すずなデ・ソト・バール・ノザキ田谷も同じビルにあります。
泡で乾杯。「イイ男がいないわ」彼女はどうしようもないため息をついた。さて今夜のゲストはアラサーバリキャリ女子。出会いは彼女からのナンパであり、私のことがちょっとだけ好きな女の子です。ちょっとだけね。
先付は生湯葉の生ウニ添え。生湯葉がクリームのようにトロトロととろけ、ウニの濃厚な風味が味わいに輪郭を与えます。

「あたしもこの前わかれちゃいました~。あたし、付き合っても長く続かないんです」と、アラサーバリキャリ女子の後輩は言った。くっきりとした二重にキュートな笑窪。滲み出る育ちの良さ。控えめに言って菅野美穂。品の良いワンピースから伸びる長い手足が目に眩しい。北半球の男ならば選り取り見取りと言ったところでしょう。

彼女は私と一回り近く歳が離れており普通に考えて接点は無いはずなのですが、とびきりの器量よしとはなんだかんだ繋がってしまうのが私の凄いところである。タケマシュランとは例外そのものなのだ。
ビールは700円ぐらいだっけなあ。この雰囲気の和食店としては悪く無い値段です。

「まず、デートにまで辿り着くことが少ないわ」彼女は乾いた声で言う。「女からデートに誘うことなんてまず無いんだから、そこは狩猟本能を発揮して、男子に頑張って欲しいんだけど」
お椀は炙り鯛と桜えび。これは旨味が強く美味しいですねえ。半生ながら表面は香ばしく焼かれた鯛に、桜えびのコクが印象的にクッキリと捉えられる。本日一番のお皿でした。

でも、デートに誘っても返信のテンポが悪い女の子だって多いよ。僕だって、『直近で都合の良い候補日いくつか送って』って聞いても、『わかりました~また連絡します』って言って、そのまま音沙汰がなくなるなんてことザラだから。
お造りはヒラメの昆布締めにマグロ。ヒラメがグっと〆られており中々の味の濃さです。マグロはそれほど印象に残らず。

「その聞き方、ぜんぜんダメ。なんでこっちの予定をあんたに全部公開しなきゃいけないのよ、って気になる。もっと具体的に、『親子丼が好きだって言ってたよね?○○って焼鳥屋の〆の親子丼がすごく話題らしいから、一緒に行かない?来週の水木金とか予定どうかな?』みたいに聞いてくれたほうが応じ易い」具体的に、と、彼女は改めて意思を込めて言った。
「世界中の魚介料理のために生まれた酒」と大見得を切っていますが、結構なストロング度合いであり、それほど刺身にには合わないような気がしました。ラベルの通り甲殻類ならいけるかも。ちょっと残念。

でも、男から候補日時を3つも4つも提示して、『全部予定あり』って言われて、特に女性側から代替案も示されなければ、脈ナシと理解するけどね。察しの良い男であればあるほど。「だって本当に予定あるんだもんしょうがないじゃん。そういう時は、もっともっと繰り返しそっちから候補日いっぱい出してよ」なんだお前偉そうに。読モかよ。
ちなみに『なんでこっちの予定をあんたに全部公開しなきゃいけないのよ』についてですが、中には気前良く全公開してくれる女の子もいます。私は妙な出し惜しみや駆け引きをされたり、試すようなことをされると面倒に感じるタイプなので、このような接し方をしてくれる女の子は心から愛おしく感じてしまう。
箸休めに沖縄のもずく。これはまあ、もずくですね。それよりもジューシーなトマトに心が惹かれました。

「あたしはそれなりにLINEが続く関係になったのなら、一度は会ってみようかなって思いますけどね」言ったな。よーし今度おじさんとデートしよう。「初デートは木曜か金曜の夜がいいなあ。それでウマが合うのなら、土日に朝から晩までの長いデートでもオッケーです。ただ…」グラスを操る彼女の手は、まるで独立した生き物のように動く。
スペシャリテの石垣牛ステーキ。モモの部分であり、山椒の効いた甘辛ダレで食します。なるほど上質な肉なのですが、若干脂が強く、これまでの料理のストーリー性を破壊するパワーを感じました。あまり和食店で食べる必要が無いような気がします。

「漫談形式のデートは辛いですね。男の子の、一生懸命すべらない話をいくつも用意して楽しませてくれようって気持ちはすごくわかるんですが、それだとあたしが観客になっちゃうから。それ、あたしじゃなくて誰に話しても結論は同じでしょ?って思っちゃいます。だからあたしも参加できるデートがいい。ふたりだけの楽しい会話を一緒に創り上げたいです」
お食事は白飯にジャコ、香の物、赤出汁。お鍋を開ければ具材がドゥヴァー!みたいなのが良かったなあ。味は間違いないのですが、インスタ慣れした若者にとって、白米のみとはあまりテンアゲならないコンテンツなのかもしれません。

菅野美穂の発言は示唆に富んでいますね。男はホットドッグプレス的な恋のハンドブックをベースにシミュレーションを重ね、自己演出に長けたオスが勝者になると妄信していますが、女性が求めていたのは参加型のデートであった。カネやステータスをチラつかせ、高級レストランでも食わせておけばどうにかなるとタカをくくっている男など愚の骨頂。
デザートはプリンなのですが、真っ白であるのに不思議とコーヒーの風味がする、おもしろい味覚です。パステルのなめらかプリンをより上質にしたような味わいであり、お椀に次いで印象に残ったお皿でした。

幸いアドリブは私の最も得意とする形式。次回は彼女たちそれぞれと個別にデートし、改めて3人で集まり私のビヘイビアに対する振り返り作業を行うというエモい企画が持ち上がりました。天国となるか地獄となるか。秋口には結果をご報告できるはずなのでお楽しみに。


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麻布十番には日本料理店も結構多いのですが、割高であることが多いです。外すと懐が大ダメージを受けるので、信頼のおける口コミと、味覚が似た友人の感想に頼って訪れましょう。
東京カレンダーの麻布十番特集に載っているお店は片っ端から行くようにしています。麻布十番ラヴァーの方は是非とも一家に一冊。Kindleだとスマホで読めるので便利です。