Hôtel des Berges(オテル デ ベルジュ)/Illhaeusern(フランス)

ミシュラン3ツ星を50年間維持し続ける奇跡のレストラン「オーベルジュ・ド・リル(L'Auberge de l'Ill)」併設の宿泊施設。ストラスブールから約60km南、人口約600人の小さな村イローゼン。柳の緑に囲まれ、コウノトリが飛び交い、白鳥が泳ぐ小川のほとりにあるスモール・ラグジュアリー・ホテルです。
車を降り、敷地内で写真を撮っていると、スタッフが笑顔で手を振りながら迎えに来てくれました。スタッフには制服というものが無いため、ゲストとの区別がつかないのが何だか可笑しいです。ある時、オッサンが妙に根掘り葉掘り私について色々と尋ねてくるので、主旨は何なんだと訝しんでいると、このホテルのオーナーでした。経営はホテル部門・レストラン部門ともにエーベルラン一族です。
フロントらしいフロントはなく、チェックインという無粋な行為もなく、名前を告げるとそのまま部屋へと案内してくれます。その日の客の名前は全て頭に入っている。簡単なことですが、実践は難しい。この時点でこのホテルはS級と確信。
本館と新館(スパ棟)があり、我々は新館の2Fにご案内頂けました。なんとオシャンティな建造物。
屋外プールとサマーベッドが常設されています。6月上旬ではありましたが連日の30℃超えであり、ちょうどよい水温で泳ぐことができそうです。
妻が言うには「直島のホテルみたいな雰囲気」とのこと。ちなみに彼女は休みが取れた際に私を放って独りで直島へ旅行に行ったという、俗に言う喪女です。
ドアを開けると思わず歓声を上げたくなる開放感。木の温かみが心地よく、別荘地の戸建てのログハウスにいるかのようです。
ベッドは寝返り3回転半が楽勝の特大サイズ。シーツが新札みたいにピンとして清潔で、ひんやりして気持ち良い。奥の壁についた謎の多角形クッションは可動式になっていて、、、
テレビが隠れていました。昨今のラグジュアリーホテルはテレビを隠す傾向にありますね。確かにあの真っ黒なゴジラみたいなパネルはインテリアを台無しにしかねない。
ライティングデスクも完備。wifiはブツブツ切れて速度も遅いので、まあフランスとはこういうものである。冷蔵庫の中にある飲み物は全て無料です。
バスルーム。プールに遊びに行く際の、バスローブセットなどが取りまとめられているバッグがシャレオッティです。
こちらはシャワーブース。使い切れないほどのタオルが非日常性を演出する。
アメニティはエルメスで統一。そういえばストラスブールの1741もエルメスにディフェンスラインを引いていたので、日本に比べると親しみ易い距離感なのかしらん。
トイレはセパレートタイプ。自動でフタが開き、ウォシュレット完備です。フランスでのここまでのハイ・テクノロジーは稀有な存在。
ふとアゴを上げると、天井が体育館のように高いことに気づく。これまでの人生で最も占有容積が大きいホテルである。
テラスも木目調で統一されています。ロッキングチェアが覚悟していたよりも大きく後ろに倒れこむ仕様に肝を冷やす。奥には畑があって、ここで穫れる野菜をレストランで使用しているそうな。
プールに向かう。ステンレスが支配的であり現代的にピカピカと輝きます。6月初旬ながら大変に暑く、水着を持ってこなかったことを少し後悔。
違う角度より建物を望む。それにしてもカッチョエエ建築物だ。私はこのあたりの知識に全く疎いのですが、おそらく高名な建築家が設計したに間違いない。
室内にもプール(というかジャクージ?)があります。のんびりといちゃつくための個室もあり、自由に利用してOK。ワイキキのリッツは1日で300ドルを徴収することを考えれば随分と良心的です。
室内プールの上階にある謎の部屋。こちらにも仕切りのついた小部屋があるのですが、ここまで来ると自室のほうが絶対に快適なので、用途が不明でした。
おさんぽついでにロビーに立ち寄る。それにしても、ここのスタッフは本当に感じが良いですね。おもてなしの心を見事に体現。フレンドリーながら失礼は一切ない。自然な笑顔で付かず離れず接してくれます。
本館ロビーの外から撮影。ゲストの皆は特に何もするでもなく、敷地内を散歩したり、テラスでビールを飲みながら読書したり。スモールラグジュアリーホテルでの過ごし方のお手本です。
芝生の広場をもう少し行くと、レストラン棟である「オーベルジュ・ド・リル(L'Auberge de l'Ill)」に到着。
こちらのゲストはランチ後のお茶を堪能している最中であり、みんな楽しそう。我々はディナーにお邪魔しました。詳細は別記事にて
風光明媚な景色に身を委ね、センスの良い清潔な空間でゴロゴロと、何もしない贅沢。「あなたって、ほんとセンスいいわ。結婚できて、あたしはとっても幸せよ」扇のような睫毛を伏せて彼女は言う。虹の中にいても虹は見えない。たまには夫婦揃って異国の僻地へ冒険の旅へと出てみるも良いものです。「この次はどんな素敵なホテルに連れて行ってもらえるのかしら」そして人の欲には際限がない。


このエントリーをはてなブックマークに追加 食べログ グルメブログランキング

ミシュラン3ツ星を50年以上維持する3軒のレストランを巡る旅」目次

「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。

関連ランキング:フレンチ | アルザス地方