鮨菜 和喜智(すしさい わきち)/円山公園(札幌)

北海道を代表する江戸前鮨屋。ミシュラン2ツ星。18時スタートと20時スタートの2回転完全入れ替え制です。19:55にお邪魔したのですが、未だ前の客が席に座っていて、目の前で慌ててガチャガチャ片付けられるのでちょっと微妙。何万円もするディナーの割に夢が無い。余裕を持って20:30スタートすればいいのに。
店内はカウンターのみの8席。鮨屋としてはちょうどよいサイズ感です。昔は撮影NGだったそうですが、最近は音の出ないカメラであればOKとのこと。食材は北海道産のみに限定せず、旬のものを日本各地から仕入れています。
まずにホワイトアスパラガスのすりながし。今あなたが期待したとおりの味わいで、トウモロコシを感じさせる甘味が響きグッドです。トッピングのウニちゃんもクリアな味わいで美味。アクセントの黒コショウもちょうど良い。
日本酒は3杯ほど頂いたのですが、1杯あたりの量ならびに値段は不明でドキドキします。観光客だと察してくれたのか、北海道のものを中心にお出ししてくれました。
ホタルイカにヒラメ。ホタルイカは身がプクプクのパンパン。イカの旨味が破裂しそうな存在感があります。奥のヒラメはどういった調味なのかなあ、ヅケでもなく〆でもなく不思議な風味であり、これがまた乙な味。合わせて頂く山葵も実にフレッシュ。
蒸し鮑。サイコロステーキサイズのカットで食べごたえ抜群。若干お茶のような風味を感じたのは気のせいでしょうか、面白い味覚です。身の下にはゴハンと肝が敷き詰められており、リゾットのようにして食します。これがまた旨いのなんの。丼で食べたいぐらいです。
手前はホッケ、奥はバチコ。ホッケは美味しいですが特に驚きはありません。気の利いた居酒屋のそれと大差なし。バチコはカッチカチに凝固しているわけではなく、やや水分が残ったような食感であり実に美味しい。石川のすし処 めくみのように生で食べさせるのも良いですが、このぐらいの水分バランスを保って食べるのもいいですね。
磯辺焼きとして手渡しで供されます。お持ちではなく特大のホタテが丸々ひとつ。これはもう文句なしに美味しいですね。パリッパリッと店内に鳴り響く海苔のサウンドもバイブスを刺激します。
こちらキンキ。たっぷりの脂と芳醇な旨味。同居人はジダケ(ササダケ)で、コリコリサクサクと新鮮な食べごたえ。白眉はスープ。魚介由来の旨味と甘味がたっぷり溶け込んでおり、このスープをプールに満たしてクロールで飲みながら泳ぎたい。
にぎりに入ります。最初にアオリイカ。表面に細かく細かく切り込みを入れているため、舌触りがツルンツルンしておらず、ヒダヒダが舌先に絡みつくようです。

ちなみに当店のシャリには2種類の赤酢を使用しているそうな。サイズは小ぶりであり、ほろりとほどけるフェザータッチでの握りという芸風。
美しい艶と赤みを帯びるサクラマス。優しく昆布で〆られており、良く脂がのりながらもサッパリと頂けました。
毛ガニのにぎり。サイコロサイズのシャリをマッチ箱大の毛ガニの束で包み込みます。味わいは見た目ほど印象強くなく、まあカニだよね、といった程度。タラバガニのウチコ(味噌)もそれほど濃厚なものではありませんでした。美味しさはさておき、六本木すし通のカニのニギリのほうが特大サイズでインパクトはあったかも。
アジ。これは実に凡庸ですね。美味しいが普通。中くらいです。
ホッキ貝には細かく包丁が入っており、まるで別の食べ物のよう。ただ、興味深い工夫ではあるのですが、そもそも私はホッキ貝をそれほど好まないのでテンションは現状維持。
中トロ。これも実に類型的なネタであり感動に乏しい。この程度の中トロは街場の鮨屋でも出せるでしょう。客単価3万円近いミシュラン2ツ星店で食べる必要はありません。
すり鉢で軽く潰したアンキモをシャリにのせ、海苔で大きく巻きます。これは美味しいですねえ。まさにジャパニーズ・フォアグラであり、官能的な脂の甘さがネトネトと口腔内を支配します。クリーミーで日本酒にぴったり。
礼文産のボタンエビはフランクフルトのような特大サイズ。かといって大味というわけではなく上品な旨味と甘味を湛え、弾力的な歯ごたえとブツッブツッという食感が響き合い、本日一番のお皿でした。
先のボタンエビの細かな部分とエビの塩辛を混ぜ合わせる。間違いなく美味しいのですが、ボタンエビを塩辛に混ぜる必要はなく、そのままの特大サイズで食べたほうが良かったかもしれません。
金目鯛はイマイチ。もちろん鮨としては美味しいのですが、目を閉じて口に含めば金目鯛とは気づかないほどあっさりとした風味でした。アンキモとボタンエビで2打席連続ホームランを放ったのちに、この見送り三振はまことに残念。
ウニも中々のボリュームであり見応え抜群なのですが、食べ応えは中くらいです。残念ながらこの程度のウニであれば都内であっても、より費用対効果が高く楽しむことができるでしょう。
お吸い物はシャコ。これは面白い試みですね。済んだスープにザクザクとしたシャコの身が飛び込み、海苔の風味も悪くない。大将のセンスがキラリと光った瞬間でした。
太巻きはマグロ、アオリイカ、ウニなど。こちらも見た目通りの味わいで、もちろん美味しいのですが驚きは無い。麻布十番秦野よしきのコレステロール巻きに似た方向性でありますが、あちらのほうがより振り切った太巻きであるため記憶に残りました。
玉子は甘口のカステラタイプでベーシックに美味しいのですが、そのサイズがハイソフトキャラメル程度でありオーラスを飾るには物足りない。

お会計はひとりあたり25,000円前後。うーん、地方の鮨屋にしては割高ですね。いずれの料理も間違いなく美味しいのですが、そこに目新しさや独創性はなく、作者不詳の印象に残らない鮨に感じました。

テンポが悪いのも気になるところ。ツマミからにぎりに入るまで20分近くのインターバルがあり、かつ、その後は若干失速気味にあったのが残念でなりません。

BGMは無音。くだらない話や愛を語り合うのは躊躇われるレベルの静けさなのですが、かといって大将は寡黙に仕事をされているので、なんともシンとした、緊張感のある食事でした。



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鮨は大好きなのですが、そんなに詳しくないです。居合い抜きのような真剣勝負のお店よりも、気楽でダラダラだべりながら酒を飲むようなお店を好みます。
この本は素晴らしいです。築地で働く方が著者であり、読んでるうちに寿司を食べたくなる魔力があります。鮮魚の旬や時々刻々と漁場が変わる産地についても地図入りでわかりやすい。Kindleとしてタブレットに忍ばせて鮨屋に行くのもいいですね。