Takumi(タクミ)/六本木

2017年2月オープンの新しいお店。西麻布の交差点にほど近く、霞庭まつばらの裏、s`accapau(サッカパウ)の通りに位置します。
大槻卓伺シェフは1988年生まれの29歳。神戸大学経営学部卒と、飲食業界においてはトップクラスの高学歴を誇ります。フランスでの修業期間は3年3ヶ月であり、マルセイユの三ツ星レストラン、Le Petit Niceにも在籍していたそうな(以上、写真は公式ウェブサイトより)。
パイヤールがボトルで9,000円だったので泡1本勝負にしようかと悩みましたが、「料理にあわせてグラスでお出しできる」とのことだったので、ペアリングでお願いしました。
理科の実験よろしくコルク瓶に食品サンプルが並べられます。
併せてハガキ小サイズの紙にビッシリと記載された料理の説明。『料理の内容やシェフの意図をできるだけ正確に伝えていこう』というコンセプトとのことで、この紙を客の手元に置き、サービスからの説明は特に行わないというスタイルです。

賛否両論ありそうですが、私はすごく好き。料理の説明は、しっかり詳しく聞きたい気持ちはあるのですが、あまりに長ったらしいと温度が変わって味が落ちそうでヒヤヒヤするんですよね。この形式なら完璧な情報量であるし、食べながら自分のペースで読むことができる。会話を邪魔されることもない。
本題に入りましょう。旬のアスパラガスをスープ仕立てで。仔牛のイチボにラルド(豚の脂の生ハム)でコクと旨味を補う。圧巻はリドヴォーのフライ。単刀直入にドォーーンと肉の味が伝わります。
パンはシンプルながらも小麦の味がしっとりと響く上質なものでした。無塩バターをたっぷりつけ、2種の塩で食べ比べる楽しみ。
アナゴの白バルサミコ焼き。ブイヨンで軽く似てから白バルサミコ酢を何度もつけながら焼き上げた逸品。まさに洋風蒲焼である。新ジャガイモのソースは芋の美味しさはさることながら、トリュフの香りが要所を押さえ素晴らしい味わいです。
合わせるワインはコチラ。どっしりとしたコクに深みのある酸が先のアナゴに最適。恐ろしくピッタリなマリアージュである。
ローズマリー風味の焼きリゾット。仔羊・ニンニク・ローズマリーという定番の組み合わせを再構築。1粒1粒が上品なコメにたっぷりのチーズが加わり、ゴハン好きの日本人であれば誰もが好きな味覚です。黒ニンニクの甘酸っぱさも絶妙で、ありそうでない、見事な料理です。
合わせるワインはまさかのゲヴェルツ。枯れた花畑のような香りが特徴的で、ワイン単体で飲むと渋めの1杯なのですが、先の料理に合わせると見事に息を吹き返します。これは素晴らしい組み合わせだ。
サゴシ(若いサワラ)のレフォールチーズ焼き。どちらかと言えばシンプルな味覚のサワラにチーズでコクを添加しレフォール(西洋ワサビ)の香りと辛味で引き締める。ウニのバターソースが出色の出来栄え。こってりこってりした味わいと思いきや、ちっともクドくない。この味覚を瓶詰めにして売り出したいほどです。
料理に真っ向勝負なワインセレクション。うーん、当店のソムリエとは実に気が合います。 レヴォのような攻めのペアリングも嫌いじゃないのですが、やはり情緒不安定感が否めない。当店のような王道中の王道といった合わせ方は実に好ましい。
メインはランド産の窒息鳩。窒息させることにより身が鬱血し、ジューシーな身質になるとのこと。能書きはさておき、このハトが輝かしい出栄えで叫びたくなるほどの美味しさです。客単価5万円を超える店のメインとして出しても全く見劣りしない完成度。フォアグラのソース、ポルト酒と内臓のソースと味変できるのも好ましい。
ワインもやはりズバリな1杯。まさに火の玉ストレートといった合わせ方で、とにかくストレートで押して押して押しまくる。藤川球児のようなペアリングです。ちなみに藤川球児と広末涼子は同じ中学校の同級生です。これ豆な。
デザートは8品のデザート一気出し。コンセプトは『ケーキ屋さんで大人買い』。甘党の私にとってはあげぽよな瞬間です。それにしても見事な皿だ。エルカフェで食べれば3,000円は超えるのではなかろうか。

しかしながら、あまりに少量多品すぎてそれぞれの味わいが記憶に残り辛かったのも事実。個人的にはいわゆるフランス的な、バーンバーンと特大デザートが2皿出されるスタイルのほうが好き。
コーヒーにもしっかりとした哲学と拘りが感じられ、最後の最後まで納得感に溢れた時間を過ごすことができました。
お会計は税サ込みで1.5万円弱。料理とワインでちょうど半々といったところです。総支払い金額では大満足なのですが、料理に比してワインが豪華すぎるかもしれません。というか、このコース料理で6,500円というのは安すぎです。もしも「水でいいです」攻撃など喰らった日には、儲けなどまるで無いのではなかろうか。

連れも私も、「このレストランは素晴らしい」と完璧に意見が一致したランチでした。次回は是非とも夜にお邪魔したいと思います。オススメ!


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