鮨 ばんど/戸越銀座

新宿御苑前の人気店「匠 達広」の姉妹店「鮨 ばんど」が戸越銀座にオープン。戸越銀座もしくは不動前駅からそれぞれ徒歩10分ほどの住宅街に位置し、商業地域というよりは実家みたいな立地です。
店内はカウンターが8席と個室。個室は子連れもOKだそうで、土地柄、家族連れで訪れるにピッタリの雰囲気です。伊山徳宗シェフは総本山である「匠 達広」でみっちりと修業し、「新宿 ばんど」でその腕を振るったのちに当店をオープン。
飲み物メニューは無いのですが、最終支払金額から逆算するにビールも日本酒も千円かそこらでしょう。日本酒が充実しており、大将におまかせして飲むよろし。
まずはシジミのスープで肝臓を強化します。これは酒を飲めよというフリですな。
ツマミにヒラメ。清澄かつ豊かな味わいであり、やはり日本の魚食文化は凄いなと痛感します。
のれそれ。アナゴの稚魚であり、言わずと知れた珍味です。私は一年を通してそれなりに和食店を訪れるのですが、滅多に出会うことの無い素材です。
小ヤリイカ。いかめしは私の大好物なのですが、時々どぎついエグ味を感じることもしばしば。小ヤリイカであればその雑味などは無く、イカ本来の清らかな味覚を楽しむことができます。
早速にぎりに入ります。トップバッターは春子鯛。かなり分厚いキッツケであり、春子鯛としては珍しくムシャムシャと食べ応えがあります。黄身酢おぼろに柚子の香りと江戸前の仕事にも抜かりありません。
ガリも美味しいですね。甘めと辛めの2パターンが用意されており、いずれも素晴らしい鮨の友です。シャリにつき、米の炊き加減は硬めで私好み。赤酢主体のパンチのある調味もお見事。こういうシャリが、私は好きだ。
サクラマス。巨人軍のように鮮やかなオレンジですが、その味わいは実に綺麗であり、主役を張れる美味しさです。
トリガイは驚くほど柔らかく歯切れが良い。貝特有の嫌な匂いは1ミリもなく、トリガイだってYDKなんだなと身をもって思い知らされました。
アジ。脂たっぷりメタボ体質であり、ブラインドで食べればサンマやイワシに感じてしまいそうなほど。ニンニクっぽい香りのする何かを忍ばせ、圧の強い脂を上手に薙ぎ払ってくれています。
ホタテの磯辺焼き。ざっくりと分厚いホタテをチリチリに焼いて旨味を凝縮。パリっと香りの良い海苔と共にナイスタイムでした。
こちらはイワシの磯辺巻き。アジと同様に脂たっぷりであり、その壮大な味覚に酔いしれます。
ちょいちょいツマミも挟んでくれます。燻製したホタルイカにタラの芽の天ぷら、焼いた筍。いずれも春爛漫の味覚であり、まさに花より団子です。
コハダは強めの酢が印象的で、シャリも負けずに酢が強い。何とも刺激的なにぎりであり、緩急織り交ぜた楽しい食体験です。
マグロのヅケは王道の美味しさ。鮨とはマグロであると語り掛けてくるようです。
サヨリも美味しいですねえ。ニョロニョロと面白い姿形であり、身は厚く肉のような食べ応え。
大トロは見た目ほどクドクドしておらず、脂と身の部分のバランス感覚に優れているように感じました。
アマダイをウロコ焼きにし、アクセントにカラスミのパウダーを振りかけます。カリっジュワっとしたアタックが心地よく、酒泥棒な逸品です。
桜エビの茶碗蒸し。今が旬の素材であり、元気一杯で無邪気な味覚です。
ウニ。見ての通り濃厚な味わいであり、磯の香りの強い海苔と共にデリシャスです。
スミイカ。滑らかな口当たりにクリアな味わい。クライマックスに向けて程よいお口直しです。
海老は甘味よりも旨味や塩気を強く感じます。北方の生の甘い甘い海老も良いですが、こういった好戦的な味わいもいとをかし。
お椀は魚のアラから炊いたスープがベースとなっており、本日のコースの集大成といったところでしょう。
アナゴは小ぶりながらもジュワっと存在感のある味覚。凝集的で密度の濃いにぎりでした。
細巻きのカンピョウにギョクでフィニッシュ。ごちそうさまでした。

以上を食べ、そこそこ飲んでお会計はひとりあたり2万円でお釣りが来ました。同じ銀座でも中央区銀座であれば倍請求されても文句は言えない質および量であり、予約の取れない東京鮨バブルにウンザリしている方に確実にハマることでしょう。久しぶりにガチでオススメしたい鮨屋です。

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鮨は大好きなのですが、そんなに詳しくないです。居合い抜きのような真剣勝負のお店よりも、気楽でダラダラだべりながら酒を飲むようなお店を好みます。
この本は素晴らしいです。築地で働く方が著者であり、読んでるうちに寿司を食べたくなる魔力があります。鮮魚の旬や時々刻々と漁場が変わる産地についても地図入りでわかりやすい。Kindleとしてタブレットに忍ばせて鮨屋に行くのもいいですね。