おにまる/麻布十番


約束時刻の30分前キャンセルと、久方ぶりに派手なドタキャンを喰らう。金曜日の夜というフライデーナイトだったため別のお誘いが2件もあり、先約があるからと断っていたためダメージ大。ポリクロニックな文化の洗礼を受け途方に暮れていると「ねえ、今夜あいてる?」と、偶然にも救いの手が。

「早く会いたいからタクシーで行くね」と、何とも愛らしいメッセージ。待ち合わせ場所で街行く人々を眺めている際、遠くから飛び切りの美女が歩いてくるなと思いきや、彼女そのものでした。「何ジロジロ見てんのよ。パンツ見えてる?」短くスケスケなスカートをひらひらと翻す連れ。
今夜はヤケ酒だ。準備体操抜きで日本酒からスタート。「ひとりで仕事してたら寂しくなってきちゃってさ。で、真っ先に顔が浮かんだのがキミってワケ」肝心なときに肝心な隙間を互いに埋めあう。都合の良い関係である。
お通しはバイ貝の煮付け。炊きたてであり、シンプルな味付けであるため、噛み締めるたびに貝の旨味が滲み出てきます。

LINE1本でドタキャンされてさ。たまんないよ。愚痴を言うのは格好悪いとわかりつつも、今夜は彼女の広い心に甘えることとします。「悪いけど脈ナシね。好意があるなら何としてでも行くか、必死でフォローするものよ。LINE1本で終了だなんて人間扱いされてないわ」頭では理解しつつも、心では認めたくないのが人間の難しいところである。私はコンピュータになりたい。
熊本直送の馬刺し。1,200円と当店にしては高価品の部類ですが、量がたっぷりあるので巷の九州料理屋のそれよりも費用対効果は高い気がします。薬味をたっぷりつけて赤身を楽しむ。
和牛ハツの串焼き。当店で必ず注文すべき逸品。野性味の溢れる力強い味覚であり、ムシャムシャというオノマトペが妙にしっくり来る。
「その子、あんまり友達いないでしょう?普通の感覚の持ち主なら余程のことじゃないと約束なんて破らないし、万一そうなったら誠意を込めて謝罪して埋め合わせしようとするけどね。自己中心的で面倒くさがり、そのくせ寂しがり屋で構ってちゃん。一種の病気みたいなもので、矯正するのは無理だから諦めなさい」頭では理解しつつも、心では認めたくないのが人間の難しいところである。私はコンピュータになりたい。
ギンポ(ギンポウ)の天ぷら。細長くドジョウに似た体型で不細工な魚ですが、天ぷら業界では「銀宝を食べずして天ぷらを語る無かれ」「江戸っ子たるもの、借金してでも春は銀宝を喰え」と語られるほど、天ぷらは超弩級の旨さです。アナゴよりもガッツリと歯ごたえがあり、独特の風味と上質の白身で名状しがたい味。付け合せのトロなすやシイタケもしみじみ旨い。
チキン南蛮。サクサクとした歯ざわりにジンワリと柔らかい鶏の身。たっぷりの野菜も嬉しい。肉の柔らかさとたっぷりのソース、大量の野菜が美点です。
箸休めにお味噌汁。たっぷりのナメコと油揚げ。飲むというより食べるという表現がぴったりの1杯。

「だいたいさあ、その女の子どうなりたいわけ?ゴールはどこにあるの?あんた既婚者でしょう?その女の子にも恋人がいるとか、W不倫とからなら互いの気分転換としてわかんなくもないけど、女の子がフリーで最初っから2番目だなんて、あんたとどういう結末が待っているわけ?」ゴール、か。残念ながら、「今、楽しければ、それでいい」と、物事を深く考えていないのが私という人間なのです。
居酒屋ですがサングリアなど洒落た飲み物だってあります。

「あたしは絶対に1番じゃないと嫌。だから、水商売も向いてないと思う。男たちは、女の子が本命じゃない2番目以下って前提でキャバクラとかに行くわけでしょう?そんな屈辱、耐えられない」それはお金を介した商売なんだから別に構わないじゃないか、とも思いましたが、文字通り胸襟を開いている彼女の話の腰を折る必要もあるまい。
お会計をお願いすると、オマケでスイカを出して頂きました。今年も暑い夏が来た。「そうだ、あたし、来月誕生日だから、よろしくね」何がどうよろしくなんだ。水商売は向いていないと主張しつつも、彼女はキャバ嬢気質に溢れている。


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  • 2018年4月 ←久しぶりにじっくり料理に向き合いました
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  • 2017年10月 ←再び既婚者という身分を隠して独身女性と遊ぶ男たち
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  • 2016年11月 ←2016年タケマシュランお誕生日パーティ
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東京カレンダーの麻布十番特集に載っているお店は片っ端から行くようにしています。麻布十番ラヴァーの方は是非とも一家に一冊。Kindleだとスマホで読めるので便利です。

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