アルヴェアーレ(alveare)/麻布十番

六本木、広尾、麻布十番のど真ん中。それぞれの駅から徒歩十数分を要する住宅街の地下。上階には「かんだ」や「エクアトゥール」など、泣く子も黙る超名店がひしめきあうグルメビル。
広々とした店内なのですが席数は限られており、テーブル間隔にゆとりがあります(写真は公式ウェブサイトより)。この他、カウンター席や個室もあります。客層も良く、美味しいものを食べに行くデートに最適。
日が暮れたとしても30度を超える東京。自宅から15分ほどかけて歩いてきたためすかり汗だくです。キンキンに冷えた繊細なビールが五臓六腑に染み渡る。

「男友達が『付き合う前の最終チェックに』って、そいつの彼女候補と、オレと、オレの彼女の4人でオシャレな中華料理屋に行ったんですよ。ビールで乾杯したんですけど、その彼女候補、いっさい口をつけようとしなくって。どうしたんですか?って訊ねたら『あたし、ワインしか飲まないの。場の空気を悪くしたら申し訳ないから、仕方なく皆に合わせたけど』って平然と言うんです」
最初の一口はバジルのアイス。温度はもちろんのこと、バジルの清涼感が心地よく、真夏の夜には最高のアミューズでした。

「餃子が出たんです。オレの彼女が『わ!餃子!だいすき~!』って言ったら、その彼女候補が突然パンパンパンパンって拍手し始めて言うんです。『ハイ、まんてーん。満点満点。大事よね、そういうリアクション』って言うんです」
前菜はスルメイカ。焼いたり湯引きしたりと食感に彩りを与えています。土台には肝を混ぜ込んだミンチ肉、カメオ出演するカラスミなど実に味の濃い一皿。これは日本酒が欲しくなる。
最初のパスタにはイカスミが練り込まれています。塩気が強く酒が進むのですが、キノコの滋味やタマネギの甘さが調和しており、コンピュータで作ったように私の好みのど真ん中の味わいでした。
ワインは5,000円代~。ワインリストには数万円のお宝ワインも記載されているのですが、男4人の気楽な飲み会なので最安値に近いワインを注文。暑い夏にはこれぐらいでちょうど良い。
フェデリーニはフレッシュトマトのソースで。フェデリーニとは「糸」が語源の直径1.0mm前後パスタであり、今回のように冷製のパスタにぴったり。フレッシュなトマトに凝縮感のあるソースがまさに冷製と情熱のあいだといった味覚でした。
パスタが3皿も続くため炭水化物過多であるため、フォカッチャはほんの一切れしか頂きませんでした。加えて皿に残ったソースを拭う役割を担ったため、フォカッチャそのものの味わいは評価できず。
パスタ3皿目はパッケリ。マカロニにビッグライトを程よく照射したような、イタリア南部はカンパーニャ州のパスタです。こちらもキノコたちのムっとする香りに味の濃いソースがコッテリと含まれており、酒飲みには堪らない1皿でした。
「その彼女候補がオークドア(グランドハイアット内の超高級ステーキハウス)にしょっちゅう行ってるとか言うんです。で、オレの彼女が『オークドア?そのお店知らないです』って言ったら、また拍手し始めて『ハイ、まんてーん。満点満点。ほんとは知ってるくせに。知らなくてお金かかんない良い女ですアピール、大事よね』って言うんです」
メインは魚か肉かを、また肉の場合はビーフかラムを選択できたので、私はビーフを選択。シンタマ(モモ肉のうちの高級部位)であり+1,500円の追加料金を要するのですが、これまでの料理に比して凡庸な味わいでした。
つけあわせのクレソンサラダは苦味がきいて美味しい。口直しにピッタリです。
連れが注文したラムは脂からの甘い香りがホワホワと立ち上っており、仕上げに藁で燻した風味も食欲をそそります。半分食べてお皿を交換こしましたが、明らかにこちらのほうが私の好み。それでもこれまでの料理に比べると陰が薄く見えるのも事実です。
「オレの男友達は終始顔が曇りっぱなしで。目配せしてもただただ頷くばかりで。なんだったんでしょうね、あのプレイ」うーん、さすがにその態度はちょっと普通じゃないなあ。

もしかすると、そもそもその彼女候補は完全に遊びのつもりだったのに、いきなり親友とその彼女とかを紹介してきたから、潮時だと思ってそういう態度を取ったのかもしれません。そういう意味ではデスピサロのように完全悪とは言い難い。汝は手に無きものを望み、手にあるものを軽蔑す。
デザートはメロン。全体を取りまとめる味覚は抹茶であり、アイスや果肉、ソースなど様々な温度帯が楽しめて面白かった。もちろんメロンそのものの質もグッドですばらー。
食後にコーヒーをお願いしたのですが、非常に濃厚でありエスプレッソにも近い味わい。当店のシェフは基本的に味濃い目なんだろうなあ。

4人でグラスを1杯づつ飲み、ボトルを3本飲み、コースを食べ、総額は5.9万円と予想したのですが、実際には5.6万円でした。これはリーズナブルですねえ。7.2万円と予想した者もいたぐらいなので、当店のお値打ち感は半端ない。料理だけだと6,500円と驚きの値付けです。

スタッフにも偉ぶったところがどこにも無く、とても居心地の良いお店です。遅い時間帯にはアラカルト注文もOKで、ワインバーとしても利用できそう。これだけ条件が揃えば好きになるには充分だ。またお邪魔したいと思います。


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東京カレンダーの麻布十番特集に載っているお店は片っ端から行くようにしています。麻布十番ラヴァーの方は是非とも一家に一冊。Kindleだとスマホで読めるので便利です。

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