lumière l'esprit k(リュミエールレスプリカ)/難波(大阪)


「ジャン・ムーラン」やミシュラン三ツ星の「ラ・コート・ドール」での修業を経て独立した唐渡シェフ。当店は、なんばダイニングメゾンに入居するセカンドラインですが、本丸の「リュミエール」は9年連続ミシュランの星を獲得する実力です。

「バター、クリーム、小麦粉、また塩・胡椒以外の調味料もほとんど使わない」と、素材の風味を究極的に突き詰めるお店。
さて今回は、こどもの日・母の日・父の日の3イベントを一括処理するという、私のセンスとインテリジェンスが光る大胆な戦略です。家族での食事会プランで予約したので個室料金は無料でした。
子供たちはリンゴジュース、オカンは炭酸水などなど、飲みたいものをめいめい注文します。私はイネディット。エル・ブジのフェラン・アドリアらが「セレブを迎えるワインはあるが、ビールがない」をコンセプトにして、地元のビール会社と共同開発した傑作です。香り高く複雑な味わいで泡も繊細。
春キャベツのヴルーテ。美味しいのですが、ややパンチに欠ける味わい。ややもすると結婚式披露宴のスープのようです。右下はフォアグラのコロッケなのですが、1立方センチメートルほどのサイズであるため味覚の印象に乏しい。
スペシャリテの「レスプリカ遊園地」。約50種類以上のお野菜と魚介類が色とりどりに並びます。大変美しくはあるのですが、ツシミのアレと同様に、料理というよりも素材であり、ひとつひとつ目を瞑って食べればやはりその野菜の味しかしません。個人的にはホタテやエビなどの魚介の旨味が印象に残りました。
ワインはペアリングを注文。いずれの合わせ方も教科書通りといった趣で、安心して味わうことができます。
パンは総勢4〜5種類と多い。毎回異なるものが届き、そのいずれもが確かに美味しく嬉しくなります。バターやオリーブオイルの変わりに自家製のトマトソースが添えられるのもの面白い。上質なピザ屋のそれと同等であり、パンにつけて食べるだけで立派な料理が成立します。
こちらはお子様向けプレート。これだけ多種多様な料理がきちんと盛り付けられて2,000円というのは奇跡。もちろん大人がたっぷり飲み食いしてくれることが前提の価格設定でしょう。子どもたちだけで入店しコレだけを注文されると支配人の顔が引き攣ること間違いなし。
魚介料理はオマール海老でど真ん中ストライク。ケチなレストランのなんちゃってオマールと異なり、特大サイズで食べごたえ抜群。繊細な調理で素材をさらにハネさせるといった趣向ではありませんが、とにかくわかりやすく旨い料理であった。
ワインはしっかりとした酒躯体のコチラ。ペアリングはそれぞれ結構な量を注いでくれ、これだけ飲んで3杯4,000円前後というのは実にリーズナブルです。
メインディッシュはハンガリー産合鴨胸肉のロティ。こちらもややこしい小細工などはせず、直球勝負な調理。結婚式披露宴の料理を最強にした味覚であり、親族での会食にピッタリです。我ながら私の幹事力には目を瞠るものがある。
合わせるワインは逞しいコチラを。妙な価値観を押し付けるでもなく、料理に合うワインをリーズナブルに見つけてくるセンス。ソムリエの本懐である。
デザートはバジリコのソルベにイチゴとトマト。マルゲリータとスイーツにしたような趣きであり、しかも企画倒れになることなくきちんと美味しい。それぞれの素材が役割をきちんと果たしており、今何を食べているのかはっきりとわかるのがいいですね。
子供用のデザートからははトマトやバジリコなど変化球は省かれており、イチゴとバニラのみ。保守的な大人であればこっちのほうが好きかもしれません。
これまた正統派の小菓子を食べてごちそうさまでした。
家族での会食に最適のお店ですね。アクセスが良く、子供の料理が安くしっかりしており、個室料が不要(のプランを今回は利用した)。料理についても何を食べているかはっきりと理解できるものが多く、素材が前面に出た実直な調理でした。

次回は是非、本丸のリュミエールにお邪魔し、フルコースでのディナーとたっぷりのワインを楽しみたいと思います。


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