料理屋 素(りょうりや そ)/円山公園(札幌)

円山公園駅から歩いて数分に位置する「料理屋 素(りょうりや そ)」。ミシュラン2ツ星。お向かいには「すし善」、近くには「日本料理とらや「姫沙羅(ひめしゃら)」など、和の名店が集結しています。
店内は4~5席のカウンター席と個室のみであり、美食を堪能するにはちょうど良いサイズ感です。貸し切りであれば子連れもOK。ピリっとした空間ではありますが、気の良い大将と奥様のみでやられているので居心地は抜群です。

姉崎貴史シェフは北海道出身。京都と香川で腕を磨き、2005年に当店をオープン。予約時に道外から訪れる旨を伝えておくと、地元の食材を中心に仕入れて組み立ててくれます。
まずはイシガレイ。生姜酢でサッパリと調味されており暑い夏にぴったり。コリコリとした食感のたっぷりのポーションも嬉しい。
お凌ぎに小さなウニ丼。しばらく稚内に滞在しあの辺のウニを連日山ほど食べてきましたが、やはりウニとは今回のように、冷静に適量を摂取するのがベストなのかもしれないと考え込んでしまいました。例えばキャビアやトリュフのように。
毛ガニ。脚の部分はお刺身で、抱き身の部分は少し火を通して、カニ味噌と合わせながら頂きます。毛ガニを生で食べる機会は少ないですが、なかなかどうして絶品じゃないですか。「川㐂(かわき)」のハリウッド映画のようなカニも良いですが、「足るを知る者は富む」と心に直接語り掛けてくるような仕様も乙なものです。
お椀はアブラガレイ。これはもう、出汁が抜群に美味しいですねえ。凛とした風味を湛えるお出汁とコッテリとした身のお魚が良く合う。
八寸も旨いところが凝縮されており、とりわけミンククジラの力強さとホワイトショコラ(トウモロコシの品種名)の甘味が記憶に残りました。
お造りはマグロにアナゴにイシガキガイ。マグロの美味しさについてはご覧の通り極上そのものですが、アナゴの存在感も見逃せません。アナゴって生で食べるの初めてかも。そういえばこの前は淡路島で生のハモを食べたなあ。ここのところニョロニョロ系が充実しているライフスタイルです。
ナスに伏見とうがらし。素朴な料理ですが、堅実で抱きしめられたようにホッとする味わいのひと皿です。
チンチンに焼いた石(?)の上にアワビとタコを並べ、セルフで焼き上げます。ほとんど生で食べるもよし、しっかり熱を入れるもよし。火入れによって甘味や旨味、食感が変化するのが楽しい。
琵琶湖の天然鰻。ぐわー、これはもう、問答無用で美味しいですね。脳にビバーチェに旨味が行き届く。この料理を惜しくないという者は人類に対して害意あるものとみなす。
〆のお食事は素麺。これはもう、素麺そのものが美味しいですね。つるんとした喉越しながら食感もタフ。量がしっかりあるのも嬉しい。紫蘇の香りが充満するおつゆをたっぷりつけて大満足。
食後に水菓子で味蕾を整えたのちに、、、
葛餅でフィニッシュ。黒蜜独特の甘味が大人の味わい。ところで黒蜜って世界的に見ても独特の味覚であり、フランスあたりに持っていけば大ヒットするかもと常々考えているのですが、どなたか仕掛人の方はいかがでしょうか。抹茶が流行るんだから黒蜜もいけると思う。
ジャパニーズ・エスプレッソで〆てごちそうさまでした。以上を食べ、お食事だけだと2.5万円弱。同じ質・量のものを銀座で食べることを考えれば実にリーズナブルです。店名の通り基本的に「素」であり、奇をてらうことなく素直に率直に美味しい日本料理の数々。気の置けない仲間と貸し切りでお邪魔するのも良いかもしれません。札幌で日本料理ならここですな。

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