AKI NAGAO(アキ ナガオ)/すすきの(札幌)

すすきの街いちばんのフレンチ「AKI NAGAO(アキ ナガオ)」。ミシュラン1ツ星であり、食べログでは4.23(2021年8月)でブロンズメダルならびに百名店に選出と、北海道を代表するフランス料理店です。
奥の個室に通して頂けました。この部屋にダイレクトにアクセスできる秘密の裏口があって、ちょっとした談合などにも良いでしょう。ダイニングからは遠く離れているのですが、ホールの皆さんのテーブルウォッチングが完璧で、距離が離れていても心は繋がっています。

長尾彰浩シェフは札幌市出身。東京で腕を磨いた後に渡仏。各地の名店で経験を積み、帰国後、当店をオープン。東京じゃなくて、ちゃんと地元で開業するのが嬉しいなあ。
ワインリストはかなり厚く、北海道のものやナチュール系のものが目立ちました。お料理に合わせたペアリングもありましたが、今夜はシュワっといきたい気分だったので泡をボトルで頂きます。
お通しにポテトチップス。我々の入店から調理を始める意識高い系ポテトチップスであり、人生で一番美味しいポテトチップスです。
スペシャリテの牡蠣。厚岸の牡蠣「かきえもん」を起用しており、アクセントにキャビアとココナッツのソース(?)。デカい牡蠣をそのまま出して終わり、といったインパクト勝負の店が跳梁跋扈する中、こちらはきちんと料理しています。必要にして充分なキャビアの量も好ましい。
噴火湾のアナゴ。フォアグラと合わせてちょっとしたロッシーニ風であり、黒大豆のリゾットとも良く合う。ごはんの存在感が強く日本料理的でもあり、日本人であれば文句を言わせない美味しさです。
トマトとスイカのガスパチョ。粗濾しでザラっとした食感を楽しむことができ、「飲む」ではなく「食べる」というアニマートな味わいです。アクセントに貝柱がトッピングされており、旨味が凝縮されており純米大吟醸などキレイなお酒を合わせても楽しかったかもしれません。
生のタイにウニ、カリフラワーのムース。やはり日本料理的な一面をのぞかせるひと皿です。強調点としてエスプレッソを用いており勇猛果敢な試みなのですが、不思議とウニの甘味とよく合う。味は多いのだすが全体として調和した傑作です。
メインは別海和牛。北海道の別海町が名産のブランド牛であり、脂は程よく湛えつつも赤身の旨味もしっかり感じるというバランスの良いお肉です。付け合わせにバリっと焦がしたベビーコーンも香ばしく美味しい。
デザートはメロンのスープにクレームダンジュ、ラベンダーのシャーベット。濃密なメロンの甘味に新鮮で健康的なチーズの酸味が寄り添います。ほわりと香るラベンダーも絶妙な配置であり、多層的な味覚でした。
食後はコーヒーやお茶から好きなものを選ぶことができます。かなりマニアックなラインナップで、シェフの女子力が高い所作でしょう。

飲んで食べてひとりあたり3.4万円。札幌の飲食店としては高価な部類に入りますが、東京の調子に乗ったフランス料理屋に比べると全くもって割安です。一見コンテンポラリーな料理ですが、骨格のしっかりした意識が根底にあり、手堅く美味しくその上で華やかなコース仕立てでした。

皿出しのテンポも良くホールの動きも完璧。サービス料とはこういうことだとサービスがグダグダな店に説教してやりたい気分です。キメのデートや接待などにも良いでしょう。オススメです。

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