南禅寺 さえ㐂(さえき)/蹴上(京都)

レストラン予約サイト「OMAKASE」を眺めていると、なんとも美しい写真のお店が(写真はOMAKESEより)。詳細を確認すると何とこれ、「さえ㐂(さえき)」というお鮨屋さんなんですね。元々は大阪の北新地にあった人気店なのですが、京都は南禅寺に移転してきたようです。
南禅寺の境内にある「大力邸」という複合施設(?)の中のレストランという扱い。以前は「京割烹大安苑」という料亭だったそうです。
お店に入ると一旦は2階の待合室へとご案内。この時点で気分はあやまんJAPAN。お庭は植治11代目小川治兵衛作庭の双龍庭園だそうですが、このあたりの知識には滅法疎い私。とにかくかっこいい。
時間になると1組づつ階下へと呼ばれ、一斉スタートで食事が始まります。窓の外には圧巻の日本庭園。外人連れてきたら喜びそう。

大将は店名の通りムッシュ佐伯裕史なのですが、現在は銀座に進出して気炎を吐いている最中。南禅寺は愛弟子の谷口隆志シェフがつけ台を預かっています。イチロー似の好青年であり、彼を始めとして従業員は皆、礼儀正しく感じが良い。システマティックに動くのでテンポも良いです。
暑い1日だったのでまずはビール。飲み物メニューは特になかったので値段は不明ですが、日本酒をお任せでお願いしていたゲストには各酒造のプレステージクラスばかりを出しており、節操のないラインナップに感じました。確かに良い酒ではありますが、そういう飲み方するもんかねえ。
まずはアワビ。コリコリとした食感がナイスなのですがやや生臭さが残る。やっぱりアワビはじっくり蒸したほうが私は好き。
毛ガニの茶碗蒸し。カニの身はもちろん味噌などもたっぷり入っており素直に美味しい一品です。
お造りはキジハタとメイチダイ。いずれも美味しいのですが味覚のベクトルが似ているので、もっとこう全然違う芸風の魚で食べ比べても良かったかもしれません。
フカヒレを揚げたものにナス。出汁のきいた餡をたっぷりとかけ、削りたての鰹節を振りかけます。フカヒレって鮨屋でこういう食べ方もアリなんだと気づきの多い一皿ですが、やはり旅行者が京都で気仙沼のフカヒレを揚げて食べる必要はあったのかと考え込んでしまいました。
トキシラズ。言わずと知れた高級魚ですが、これがイマイチ美味しくない。繊細を通り越して旨味を欠いたタッチであり、アースカラーコーデのような味覚でした。
たこめし。シャリを底に敷き、明石のタコやら長芋(?)、オクラに豆などを混ぜ込みます。万人受けする味わいです。
ジュンサイとアオサのお椀でお口を整え、にぎりへと入ります。
 最初にヅケ。オーソドックスな味わいです。
形よくスライスされたガリにお漬物。シャリは赤く色づいたタイプであり酸味が結構強い。温度管理はこまめにされており、小ぶりながらも私の好きな方向性です。
コハダ。しっかりと〆られており、前述のシャリによく合う。
キスの昆布締め。繊細で流れるような味わいであり、もうちょっとしっかり調味してもよかったかも。
剣先イカはとても美味しい。フレッシュで弾力的な食感にしっとりとした甘味が感じられます。
ウニの小丼はこちらが心配になるほどの量を盛り込むのですが、打率ほど打っている印象が無いというか、量は多いのですが凝縮感に欠けた味わいです。
ホッキ貝はとても美味しい。独特の臭みは排除されており、細かく入れられた包丁が官能的な舌触りを演出しています。
大トロのハガシ。ヅケと同様に王道の味わいのにぎりです。
アジの味が素晴らしい。ザクっとした食感に仄かに感じるナッティな風味。
車海老は生きているものをザザっと捌いてその場でほんのちょっとだけ茹で、半生の状態での提供です。少し加えた熱により甘味が増し、キョーイチのにぎりです。
アナゴはホロホロに崩れてしまいそうを通り越して崩れており、ジュワジュワと出汁(?)の味覚が支配的なにぎりです。
トロタクはこれでもかというほど包丁で練られており、滑らかなタッチに海苔の香りが乗っていき、キョーニの美味しさです。
水菓子のマスクメロンで〆。ごちそうさまでした。

お会計はひとりあたり3万円強。これはケチってビールしか飲まなかった結果であり、気前よく日本酒を飲んでいたらほっともっとでしょう。
全体を通して美味しいにぎりではありますが、前半のツマミは高級食材で論点をズラしている印象が残ります。他方、南禅寺という舞台設定と空間づくりは圧巻であり、この環境で食べる鮨というのは唯一無二のもの。銀座で食べることを考えれば悪くない支払金額なので、京都旅行の話のタネに一度は良いかもしれません。

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鮨は大好きなのですが、そんなに詳しくないです。居合い抜きのような真剣勝負のお店よりも、気楽でダラダラだべりながら酒を飲むようなお店を好みます。
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